強すぎるサソリンダ!私は何もできない……
崩れた装甲の中から深紅の身体の女サソリ怪人が現れた。細身で長身。瞳孔のない目は冷たく不気味だ。彼女は私たちを見上げると地面を蹴って跳躍し、同じ高さで止まると手を広げた。
「アタシはサソリンダ。地下帝国を支配するボブ=バクーランド様の左腕さ」
「あなた、喋れるのね」
「当たり前さ。アンタたちが倒したのはサナギでこっちが本体ってところさね。挨拶も済んだところだし、アンタらには地獄にいってもらうよ!」
腰から伸びた尾が美琴の首を刺した。
「美琴様!」
顔面蒼白になり呼びかけるムースだが美琴の目は虚ろで顔には生気がない。手足もだらりと下がって糸の切れた人形のようだ。事実、彼女は浮力を失って真っすぐに落下していく。
「美琴様あああああああああッ」
ムースが全力で追いかけどうにか彼女の身体を掴んで着地する。
「玩具の分際で、美琴様に何をしましたの⁉」
強く睨んで声を荒げるムースにサソリンダは指を振って不敵に笑った。
「ハゲピカ=チビボテ博士は偉大だねぇ。これまでの研究データからそのお嬢さん――美琴ちゃんだっけ? の能力を封じる新たな薬を開発して私に与えたんだよ。
もっとも耐性がつくから二回は使えないけれど……無敵の能力を封じてしばらくの間眠ってもらえばそれで充分さ。だって起きたら仲間は全員アタシが倒しちまっているんだからねぇ!」
サソリンダはヨハネスを強襲して彼の腹に強烈な膝蹴りを打ち込んだ。
「さっきのハサミの借りは返してもらうよ!」
尻尾で彼の美しい顔面を滅多打ちにしてから、全身をぐるぐる巻きにして地面めがけて尻尾を放すとコマのように回転してヨハネスは頭から墜落して、大の字に倒れた。
全身から血を噴き出してピクリとも起き上がる気配はない。
「どうだい。アタシのスコーピオンドライバーの味は? ケーッケッケッケッケ!」
「ヨハネス様ッ」
呼びかけるムースに彼女はトップスピードで距離を詰めていく。
どうすればいいの。私、何もできていない。体が反応できない。
ムースの細い首を挟みで挟んで体ごと大木へ叩きつけて吐血させる。
「が……あ……っ」
「可愛らしいお嬢ちゃん。生意気にもアタシを玩具呼ばわりしたねぇ」
「玩具如きがわたくしに口応えするなんて生意気ですわよ……」
顔を青くして苦悶しながらも、口端だけは上げて懸命に抗っている。
サソリンダは容赦なく拳を固めて彼女の腹を殴るとムースは嘔吐。
さらに拳を強く打ち込む。
「胃の中のもの全部吐いちまいな。可愛いお顔が台無しだねぇ。ハーッハッハッハアッ」
胃液や血を吐き出し涙目になりながらも強く敵を睨むムース。
そんな彼女の喉を挟みながら喉輪落とし気味に地面へと叩きつける。
ムースは白目を剥いて気絶したが、気を失った彼女をサッカーボールキックで美琴の横へ蹴とばした。
「これで残るはふたりだねぇ。どっちから甚振ってやろうかねぇ」
私のせいだ。油断さえしなければヨハネスもムースも美琴も無事だったのに。
悔しさで言葉もでない。涙で視界が潤む。
「メープル。ボクの出番がきたようだね」
「李……」
「彼女はボクが倒す」




