サソリ怪獣に勝ったの……?
「瞬間移動でいきましょう。そのほうがすぐに戦えるもの」
私は残った皆に提案した。そうでもしないと炎天下を歩く羽目になりそうだもの。
みんなは賛同してくれたもののいざ瞬間移動をしようとすると、全くできない。
普通ならすぐにどこへでも移動できるはずなのにどうなっているのかと思ったけれど、すぐに謎が解けた。上空に薄紫色の結界がドーム状に展開されている。目を凝らしてみないと気づかないほどの薄いものだけど、発見した途端、私は納得した。
はったのは間違いなくスターだ。
彼の展開する結界は内側からは決して破壊できず、外側からは侵入ができる厄介な代物で、あの不動仁王もこの結界を天敵としている。
彼をおとなしく閉じ込めるためにスターはこの技を使用するが、この状況で私たちにも使ってくるとは思わなかった。
「わたしたち、この島に閉じ込められたってことですか⁉」
動揺しているのか美琴の声はすこし裏返っている。
「おそらく結界は敵を全滅させたら解除されるわよ。島から出るためにも早く彼らを倒さないと」
ムカデ怪獣は私たちとは別のところに移動している。おそらく星野がひきつけてくれているのだろう。
それは助かる。瞬間移動ができないとなると空を飛ぶしかない。
結論を出して地面を蹴って空を舞って一気に怪獣まで距離を詰める。
反り曲がった凶悪な毒のある尻尾に鋭いハサミ。表皮は赤い装甲で覆われている。
まずは小手調べとして拳や蹴りのラッシュで皆で攻めてみるけど効果はない。
恐ろしい尻尾を振り回してくるから、それを回避するので精一杯。
「火炎弾!」
李が得意技を出して牽制する。生物は火に弱い。
「危ないッ!」
李の言葉に気づいたときには私は尻尾の一撃を食らっていた。
鞭のようにしなる尾にはたかれた。
咄嗟に腕でガードしたから大ダメージとまではいかないけれど、油断した。
機動力では私たちの方がずっと勝るから逃げることができるけど、このままだと厳しい。
だけど今の一撃は怪我の功名だった。思ったよりも威力がないのだ。
これなら被弾を気にせず攻撃に集中できる。
ムースは傘を開いて機関銃のようにエネルギー弾を放出してサソリの口や目玉の急所に、ヨハネスは必殺技の手刀『聖剣拳』でサソリの自慢のハサミを切断した。
切り口から緑色の血がドバドバと噴き出している。
怒りに燃える巨大サソリは尾を天高く伸ばしたかと思うと、一気に振り下ろしてきた。
その巨大な毒の尾を美琴は手を広げて受けきる。毒が全身に注入された途端、彼女の全身が黄金色に輝いて能力を発動させた。
「……サソリ怪獣さん、本当に、ごめんなさい……」
謝罪と共に空から放たれる紫色の毒矢がサソリ怪獣の全身を貫いた。
怪獣は声にならない叫び声をあげてボロボロと崩れ落ちて塵になる。
「勝ったの……?」
美琴の能力が強力なのは今に始まったことではないけれど、相手が巨体にしては呆気なさすぎる。すると、私たちの方を見上げていた敵側の博士がニヤリと笑った。
何かあると思ったとき、ヨハネスが真剣な表情で言った。
「まだ、終わりじゃない……ッ」




