最後かもしれない食事と作戦
部屋にあった荷物は癪だけどスターに念で連絡をとって本部に転送してもらったけど、もちろん『魔笛』だけはコートの内ポケットに収納している。これがないと私の戦力は半減してしまうから。
部屋を飛び出し星野たちとも合流した私たちは一階のレストランへと直行した。
部屋を出てすぐにモグラ兵士たちと戦闘になる可能性も頭に入れていたけど、取りこし苦労だったみたい。狭い部屋だと戦いづらいから広い場所に移動したほうが勝手がいいのと、別の目的があった。
レストラン内に入るといつもと同じくビュッフェは用意されていたがシェフや従業員の姿が見えない。
先ほど荷物の転送の際にスターが残っているスタッフも瞬間移動させておくと言っていたけど、彼の言葉が本当であると確かめる必要があった。
どうやら本当に移動させたみたいね。これでいくらホテルを破壊しても大丈夫。
「メープルお姉さま、これからどうなさいますの?」
「まずはお腹を満たすことが先決よ。日本の諺にもあるでしょ、腹が減っては戦はできぬって」
「敵が迫ってきているのに呑気だね」
「誰よりも食べるあなたに言われたくないわよ。それはともかく、急いで食べるわよ!」
レストランのドアは開いている。いつ襲撃が来ても不思議じゃない。
それに備えて食事をするのは不自然かもしれないが、仮に突撃されても落ち着き払って食事をしていれば、少なからず敵に動揺と困惑、驚愕を与えることができる。
決して自分がご飯を食べたいだけではない。
「みんな、遠慮しないでいいのよ。好きなものを好きなだけ食べなさい」
「夢のようです!」
美琴が泣きながら山盛りにしたおにぎりを食べている。
星野もカレーとカレーパンを尽きるまで食べ続けている。
ヨハネスもそれ以外を完食しそうになるほどすごい勢いで食べている。
ムースと私もスイーツを全部食べて飲み物を飲んだ。
普段は控えめな李も今回ばかりは大好きな中華料理を貪っていた。
エネルギー補給も兼ねているけど、あまり考えたくない別の目的もある。
もしかすると、本当にもしかすると最期の晩餐になるかもしれないから、好きなものを存分に食べてほしかった。
皆が食べているなかで私は早口で作戦を伝える。
「モグラ兵士はヨハネスとムースに任せるわ。美琴と李がサソリ怪獣を、私と星野がムカデ怪獣を担当する」
「お姉さま、わたくしは美琴様と離れたくありませんわ!」
涙目で異議を唱えるムースを美琴は優しく抱きしめて微笑んだ。
「大丈夫ですよ。すぐに会えますから」
「美琴様がそういうのでしたら仕方がないですわね。大量の玩具を血祭りにして遊ぶことにしますわ」
胸をはって宣言するムースに私は苦笑いをするしかない。
彼女が着ている戦闘服は純白のドレスだった。色が白なのは相手の返り血で真っ赤に染めるのを楽しみにしているからだろう。
最近はすっかりおとなしくなったが、彼女の残忍で冷酷な本質には背筋に冷たいものが走る。
そのとき、自動ドアが開いて一斉にモグラ兵士たちがなだれこんできた。
私は席を立って皆に檄を飛ばした。
「みんな、いくわよ!」
「はい!」
「いい返事ね」




