李から感謝されるなんて、すこし恥ずかしいわね
「お風呂、お先に失礼しますね」
「メープル様、李様。ごゆっくりお話されてください」
夕食が終わって部屋に戻ったが李がメープルと話したいということで、美琴とムースはふたりで浴場へ行くことにした。
監視がいないとムースが暴走しないとも限らないが、美琴がたしなめてくれることを祈るしかない。
ふたりきりとなったところで李はメープルと向き合った。
彼女は穏やかな表情ながら目は真剣そのものだ。
「暗黒星団を壊滅してくれてありがとう」
スター流が機能不全になった際にメープルが前線に出て首領のキングサイを撃破し暗黒星団は崩壊した。
李は薄い瞼を閉じて話を続ける。
「ボクは暗黒星団に家族を皆殺しにされて、仇討ちのためにスター流に入った……
君の力があったから組織を壊滅させることができたんだ。ありがとう」
「大袈裟よ。私はたまたま戦っただけ」
「それでもボクは嬉しかったよ。それと、あのときは何もできなくて、ごめん」
「謝らなくてもいいのよ」
李は瞳を潤ませてまっすぐにメープルを見つめて言った。
「今度は君たちの役に立ちたいよ」
「その気持ちがあれば、あなたはきっとすごい活躍ができるわよ」
「そうだと、いいな」
「あの目黒怨を倒したってきいたわよ。すごいじゃない」
「スターさんの助言のおかげだけどね」
「それでもあなたの実績よ。胸を張りなさい。
ところで、あなたは今回の宿泊だけど、何か裏があるように思わない?」
「うん。ボクも君と同じ意見だよ」
「同意見の人がいるのは嬉しいわね。ホテルから人がいなくなったのはスターが密かに島から脱出させたからと私は予測しているの。上位陣は当たり前にワープホールを開けるから、大勢の客を一瞬でどこかに移動させることもできるでしょうし」
「彼なら可能だろうね。でも、何のために」
「敵が襲撃して万が一戦闘が起きたときに被害を最小限に抑えるためによ」
「あり得る話だね。そうなると客で残っているのはボクたちだけとして、従業員はどうだろう?」
「そこまで大人数ではないわ。宿泊しているのは私たちだけだから。
彼らも戦闘が起きたらすぐにスターがどこかへ瞬間移動させるはずよ」
「ホテルが空になれば戦闘で破壊されても安心ということだね。彼らしいけど」
「ひょっとすると島ごと人が消えているかもしれないわね。この島全部を私たちの戦闘フィールドとして使ってもらおうとでも考えているんでしょうね」
メープルは出された冷たいウーロン茶を飲んで窓からテラスの景色を眺める。
そこには夜の深い闇が広がっていた。
「明日のモーニングの後はプールに行くとして、食べ物を確保しておいたほうがいいかもしれないわね。いつか何日か籠城するかもしれないし、落ち着いて食事もできないことだってありそう」
「それは、さすがに考えすぎじゃないかな」
「いえ。ジャドウなら敵をここまで誘導しても不思議じゃないわ」
メープルはスターの行動の裏には常にジャドウがいると考えていた。
頭の切れる側近の思考の先を読んで行動することが求められるのだ。
何しろジャドウは味方を平然と犠牲にするような男だ。用心にこしたことはない。
話を聞いた李は微笑んで。
「でも働きすぎはよくないから、君も身体を休ませて。緊張ばかりしていると戦闘をする前に倒れるよ」
「あなたのいうとおりね。そうするわ」
その後、美琴とムースが戻ってきたので考えを話して、大浴場で風呂を堪能して早めに寝床へついた。




