スターがカイザーに余計なことを話しているみたいね
時を同じくして。カイザーはスターと念でやりとりをしていた。
彼の営業しているパン屋は今日は休業しており、彼もリラックスしていたのだが、スターからの通信で警戒を強めた。彼から連絡が来るなど滅多にない。よほどの緊急事態が起きたかと緊迫する。
『いや、大したことじゃないよ。久しぶりに君と話がしたくなってね。どうかね、調子は?』
『体調に問題もなくパン屋の営業も順調です』
『それはよかった。たまには本部にも顔を出してくれるとわたしも嬉しいよ。ところで、カイザー君。これはもしもの話なのだがね』
スターは一旦言葉を切ってから、彼に訊ねた。
『ハニーちゃんが生き返ったらどうする?』
瞬間、カイザーは時間が停止したかのような錯覚を覚えた。
唾を飲み込み慎重に言葉を探し出す。
『あり得ない話ですが、もしも彼女が生き返ったならば彼女と共に過ごし、ヒーローとしてこの星を守っていきたいと思います。彼女の願いでしたから』
『うん。そうだったね。君の言葉を聞いて安心したよ。それでは、また』
『スター様ッ!』
呼びかけるも応答はない。念を終了させてしまったのだ。
最後の問いに何の意味があったのか。考えてみるも答えが出ない。
いつもの冗談か。深い理由があるのか、判断はできない。
彼は椅子から立ち上がると店の外へと出た。
空を見上げるとオレンジ色の夕焼けと共に薄く天に瞬く星々が見える。
妹は無限に広がる宇宙のどこかで妹は永遠の眠りについている。
それでいいのだと言い聞かせたとき、ロディからチビボテ博士脱獄の報せを受けた。
厄介な相手ではあるが勝てないというほどのことではない。
些細な事件であり様子見が妥当と判断してロディとの念を切る。
だが彼は胸騒ぎがあった。博士の脱獄ではない。
それよりもっと大きく遥かに深刻な危機が迫ってきているような――
ふと、先ほどのスターとの会話が思い出された。
脳裏を掠める最悪の想像。絶対にあり得ない妄想。
「……あり得ぬ。それだけは」
激しく首を振り、スター流最強の男は店の中へと戻った。