星野と会話してみるわ お互いを知るために
メープルは星野をじっと見つめていた。先ほどから彼はおいしそうにカレーパンを食べている。
普段は無気力で仏頂面な彼がカレーパンやカレーを目の前にすると、目を輝かせイキイキとしている。
決して早食いをしているわけではないのに大量に積まれたカレーパンが次々と消えていく。
「僕はカレーパンやカレーに関してはいくらでも食べることができます。もっとも甘口限定ですが。兄さんは辛い物が好きですが、僕は甘口派です」
「私の心を読んだのかしら」
「はい」
スター流のメンバーの大半が読心術を習得しており、相手の考えていることを読み取ることができる。
どうやら星野も例外ではないらしかった。
メープルは彼の様子が気になり、朝食の席はあえて彼の向かいに座った。
いろいろ話しかけて見るものの食べているとき以外は表情の変化がない。
柔らかい茶色の髪質以外は不動とはあまりにも似ていないように思えるが、不動も常に剣呑な目つきをしているところからこの兄弟は表情の変化が少ないのかもしれないとひとりで納得した。
「あなたは私とスパーリングをしないの?」
「メープルさんが望むのなら戦いますよ。それが天使の使命ですから」
「変わってるわね」
「そうですか」
食べ終わった彼は綺麗に口を拭いてメープルを見る。
彼に対抗して読心をしてみるもメープルには何も読み取ることができなかった。
抑揚のない棒読みのような声。変わらない表情。覇気の無さ。全てが異質だった。
メープルはスター流の古参メンバーなのだが、彼との交流はない。そもそも星野が道場にいるところを見たことがない。入門したタイミングが違うのだろうか。
「僕はスターさんの教えは受けていませんし、入門もしていません。流派が危機に陥ったときだけ手を貸すことにしています」
「ずいぶんと特殊な立ち位置なのね」
「僕は兄さんとは違いますから」
メープル自身もスターが大嫌いという理由から流派とは距離を置き、どうしてもという時だけ協力するようにしている。人のことは言えないなと彼女は思ったが口にはしなかった。




