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地下帝国に現れた天才科学者……ってあの人しかいないわね

地下帝国の首領ボブ=バクーランドは唸った。顔の長い豚にも似た顔立ちに白黒の模様がありどことなく愛らしい外見をしているが、支配欲の塊のような男であった。


地中深くに本拠地を構え、機を狙って本格的な地上への侵攻を開始しようと考えているのだが、地下に潜っていては地表の様子は全くといっていいほどわからない。


こちらの動向も探られない代わりに敵の情報も掴めないのでは本末転倒であった。

どうしたものかと思案している最中、彼のもとにひとりの科学者が訪れた。

王の間で謁見して見ると男は奇妙な風体をしていた。


頭の大部分は禿あがり両端に外ハネした白髪だけが残っている。青紫色にも見える血色の悪い肌に仏頂面の老人で、二頭身の身体の大部分は機械化されており科学者らしく白衣を纏っていた。


「お前は地上の科学者か」

「わしはハゲピカ=チビボテ博士と申します。陛下の地上侵略にお力添えをしたいと考えておりまする」

「してお主には何ができる?」

「バイオテクノロジーと機械工学において地球でわしに並ぶものはございません。

お疑いでしたらいくらでも腕をお見せいたしますじゃ」

「よき返事だ。気に入った。ハゲピカ=チビボテ博士とやら。お主を我が配下の科学者として雇うことにしよう。存分に腕を振るうがよい」

「ハハーッ。至極光栄でございまする」


ハゲピカ=チビボテ博士は恭しく頭を下げて王の間を後にした。

専用で与えられた科学発明室にて博士は期待に違わぬ腕を振るった。


大勢の部下を使い地上侵略の兵として最初に生み出した兵器を見て、地下帝国の王は仰天した。頑丈な檻に入れられているのは牙の生えた超巨大なゴリラだった。もちろん、王も配下もゴリラなど見たことはない。毛むくじゃらで凄まじい剛腕と身体能力を持つ怪物を前に尻もちをつく彼らに博士は平べったい口に白い歯をむき出しにして笑うと説明した。


「これはゴリラ怪獣ですじゃ。身の丈三十メートルはありますわい。これはまだわしにとって初歩の初歩ですが、まずはコレを地上に解き放ってみてはいかがですかな」

「おお……素晴らしい! よし、さっそく地上へ放ち暴れさせるのじゃ!」

「かしこまりました。ついでといっては何ですが、陛下の主要な配下のサソリンダとムカデンジャラスにも改造手術を施しました。以前の数十倍のパワーアップがされているかと」

「全くお主という奴は大した男じゃ。武勲でも金でも何でもくれてやるぞ」

「ありがたいお言葉でございまする」


こうして地下帝国は地上への侵攻を開始した。

決して多くはない駒を博士の尋常ならざる科学技術で底上げした兵力は侮れない。ハゲピカ=チビボテ博士は地上の街が破壊されている様をモニターテレビを通して見て口の端を思い切り吊り上げた。


人類が逃げまどい恐れる姿を見るのはいつだって心が躍る。だが、何より好きなのは暴れれば暴れるほど本来の標的――スター流の者どもが現れることだ。


度重なる怨み今度こそ晴らしてくれようぞ。

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