プロローグよ
ロディはパトロールの途中で行きつけのハンバーガーショップに寄って昼食を摂ることにした。
「フレンチフライLサイズとチーズバーガー、ホットドッグ、それとLサイズコーラ」
注文を終えて料理が席に運ばれてくるまでの間を備え付けの新聞を読んですごす。
ロディは本はあまり好きではないのだが、職業柄新聞だけは読むようにしていた。
知っていると知らないでは未来が変わってくることもあるからだ。
何気なくページをめくっていると彼の目にひとつの記事が飛び込んできた。
タイトルを一瞥した途端、保安官の口角が上がる。
「『ハゲピカ=チビボテ博士、脱獄す』……あの爺さんまた逃げ出しやがったのか」
記事の内容はかつてロディが投獄させた科学者が刑務所を脱獄したというものだった。
ハゲピカ=チビボテ博士は天才的な科学者だが世界征服の野望を抱き、幾度となくスター流を窮地に追い詰めた存在である。
一度目はあらゆるものに姿を変化させ物理攻撃が通じない流動人間。
二度目はスター流メンバーのみ重篤な症状を引き起こす菌を放出する赤血球人間。
三度目はUFO型の巨大ロボを駆使した街の大規模破壊。
いずれもロディが解決まで導いたが、彼がいなければスター流は全滅していただろう。
博士側からすればロディは自身の計画を三度も潰した因縁の相手であり、是が非でも復讐したいと考えるのは当然である。そして脱獄したからには四度目の対決に挑むことは容易に予想がつく。
運ばれてきたハンバーガーを頬張りながら、彼は思案した。
すぐに捜査を開始するのは得策ではない。相手が尻尾を出したところを叩き潰すべき。
単純明快かつこれ以上ないほど効果的な方法である。相手の出方を待ち、泳がせるのだ。
奴は必ず世界征服に向けての作戦を開始する。動きを見せたときが勝負だ。
ロディは長年の経験から敵の考えをある程度予測できるようになっていた。
ハンバーガーとホットドッグを平らげ、コーラを飲み干した彼はティッシュで口を拭ってから呟いた。
「今回は他のメンバーに任せておいたほうがいいかもしれねぇな」
直観的に判断した彼は博士が脱獄したという情報を念で全メンバーに知らせて、パトロールを再開するのだった。