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「では、話し合いを始めましょうか」
エリスは、急に改まって真剣な顔つきになった。
「はい!お願いいたします」
ハーベルたちも座り直して少し緊張した面持ちだった。
エリスとアクシアがとなりに並んで座り、ハーベルとレオンが正面の席に着いていた。
リーフィアとネルたちは、少し離れたソファーに座っていた。
「ハーベル!」
「はい、エリスさん•••」
ハーベルは息を飲んだ。
「一番に大切なことは、なんと言ってもお金、つまり資金よ!」
「はい!」
「ルミナラを建国するための資金はどうするつもりなのかしら?」
「そうよ、残念だけど、命を救っておいてもらって勝手だと思うかもしれないけど、私たちを宛にしているのなら、難しいわよ!」
アクシアが口を挟んできた。
「はい、分かってます。そのつもりは毛頭ありませんので、ご心配しないでください」
「それを聞いて安心したわ」
エリスもアクシアも胸を撫で下ろした様子だった。
「こう言っておいてなんだけど、宛はあるの?」
「はい、俺もはっきりした理由は分からないのですが•••PSWのセノンさんという方が出資してくれるそうです」
「ああ、PSW Detective Agencyのセノン社長ね!」
「あの方なら信用できるわね」
エリスとアクシアが相づちを打っている。
「資金面は問題無さそうだけど!ルミナラの具体的な構想はあるのかしら?」
「それは、私も気になるわ!」
「はい、ルミナラは医療都市を中心とした国にしようと考えています!」
「医療か!」
「確かに、リバースレルムで治療しようと思うと、この国で生産しているポーションくらいしかないからね!」
アクシアが付け加えた。
「はい、不思議だと思いませんか?科学がこんなに進んでいるのに医療だけ魔法を使ったポーションなどが主流だなんて!」
「まあ、以前の記憶からしてももっと医療が進んでいてもおかしくないとは思うけど•••」
「確かに•••」
「そこで、都市の中央に病院と医療研究施設を建てて、その周りに関係施設を建てていこうかと思っています」
「なるほど、いい案ね!」
「リバースレルムとしては理想的ね!」
「もちろん、アズーレセラのポーションもそのまま生かせるように配慮するつもりです」
「そこまで考えてるんだ!」
アクシアが感心している様子でうなづいた。
「それと、実は光のソーサリーエレメントの大精霊であるフィエッタの母上が、フェアリークイーンなんですが、そのフェアリー王国とルミナラは繋がっているのです」
「ええ?」
「どう言うこと?」
二人は顔を見合わせた。
「光のソーサリーエレメントは、フェアリー王国の中に位置していて、リバースレルムの一部なのです」
「ってことは、千年迷宮とも繋がっていると言うこと?」
「そうなんです」
「うーーん」
「じゃあ、迷宮からならデュアルでなくてもリバースレルムに来られるってこと?」
「はい!」
「それは、良くないわね!」
エリスが少し不安そうに言った。
「もちろん、簡単には来れません。かなり厳しい条件をクリアしないとたどり着けませんから一般のMDがこちらへ無条件で来ることはあり得ません」
「それなら、安心ね!」
「セノンさんたちのような一部の人だけが来れるように条件を付けようと思っています」
ネルが大きめの声で意見を言った。
「条件を付ける?」
「ああ、今はネルが千年迷宮の管理者なんですよ!」
「ええ、本当?」
「そんな•••」
二人は信じられないような顔をしていた。
「僕たち、千年迷宮を完全踏破したので!」
レオンが自慢気に言うと、
「凄い•••」
「完全踏破なんてできるんだ•••」
少し呆れている様子だった。
「それはそうと、建物なんかはどうするつもりなのかしら?」
エリスが得意気に言うと、
「それなんですが、エリスさんに建物の建築をお願いできないでしょうか?」
「うーん、どうしようかなー!」
エリスが思わせ振りにいうと、
「そこを何とか!」
ハーベルが懇願した。
「ウソよ!命の恩人なんだから私の得意なことぐらい、力になるわ!」
「わあーありがとうございます!」
ハーベルたちはとても喜んでいた。
「もうひとつ提案があるんですが?」
「提案?」
「はい、ルミナラだけではなく他の国との国交に転移ポータルを設置しようかと考えているんです」
「ええ、詳しく聞かせて!」
アクシアが乗り出して食いついてきた。
「このチャンバー•アルチザンという神器を使うのです」
ハーベルは薄白く光るキューブを取り出して見せた。
「なんなのこれは?」
アクシアが手にとって不思議そうに眺めていた。
「それは、神器でその中に好きな大きさで好きな部屋を自由に造り出すことができます」
「へえ、そんなものがあるんだ!」
エリスも不思議そうに眺めながらキューブを受け取った。
「これを使って、双方向を移動できる部屋を作って設置すれば、どんなに遠くでも一瞬で移動できます」
「でも、いくつも作るのは大変じゃないの?」
「いいえ、1個作ればいいんですよ!」
「ええ、1個?」
「はい、コピー!」
ハーベルがエリスからキューブを受け取って詠唱すると、2個に分裂した。
「うわ、凄い!」
「これでいくつでも作れるので、転移したい場所に設置するだけです。しかも小さくして持ち運ぶこともできます」
「何という、チートアイテム•••」
「こんな、便利なもの盗まれたらどうするの?」
「それは、心配ありません!」
「なぜ?」
「俺にしか使えないそうです。しかも、俺が死んだら消滅するそうです•••」
「うわ、そんな条件が•••」
エリスとアクシアはとても残念そうだった。
「医療施設なんかもすべてこれを利用するので、エリスさんには建物の外観をお願いしたいのです」
「なるほど、了解よ!任せて!」
エリスもヤル気満々のようだった。
「ちなみに、レオンの闇の国はどうするつもりなのかしら?」
「そっちも気になる!」
二人は、期待に満ちた顔で詰めよった。
「ああ、まだマリフィスをぶっ殺した後の話ですが•••」
「ぶっ殺すって•••」
「まあ、アイツは正真正銘のクズだから、そう言われてもしょうがないわね」
エリスも怒りを隠しきれなかった。
「それで?」
アクシアが話を戻してくれた。
「ええっと、僕は闇の国 Nocturnia: (ノクターニア)を造って、冒険者ギルドの都市を中心としようと考えています!」
「ギルドか!」
「いいわね!」
二人も興味津々の様子だった。
「リバースレルムには、まだ手付かずの土地もダンジョンもたくさんあると聞きました。それらを探索する冒険者の拠点となる国とさせたいのです」
「そうすれば、魔物の素材や魔晶石なんかの流通も管理できるわね!」
「うん、うん、お金の香りがプンプンするわね!」
二人とも目をギラつかせて何かを妄想しているようだった。
「二人とも、気に入ったわ!」
「私も!」
「じゃあ?」
「ええ、全面的に応援するわ!」
エリスは清々しい顔で言った。
「でも、ひとつだけ気になることがあるんだけど?」
アクシアが少し心配そうな顔で尋ねた。
「何ですか?」
「ハーベルって、魔導王を目指しているのよね?」
「はい!」
「じゃあ、最終的に私たちと敵対するってことでしょ?」
「ああ、その事ですか!」
ハーベルは軽く答えた。
「魔導王と精霊王は、同じものを指しているのですが、最終目標は
このリバースレルムを精霊界に戻すことなのです」
「そうなんだ•••」
「ですから、必ずしも俺が魔導王になる必要はないんですよ!」
「なるほど」
「ここにいる人なら誰でもいいんです。確かに不適切な人間にはなってほしくないので全力で潰しますが•••」
「そういうことなら安心ね!」
アクシアも納得したようだった。
「あとは、電気の問題ね!」
エリスが提案してきた。
「私が、サリエルさんには話を付けておいてあげるから心配しないで!サリエルさんも料金さえしっかり払えばすぐに使えるようにしてくれると思うから!」
「何から何までありがとうございます」
「よろしくお願いいたします」
ハーベルとレオンは、深々と頭を下げた。
「それにしても、若いのによく考えて行動できる、いい男ね!二人とも!うちの娘の旦那にしたいくらいだわ!」
「ああ、だめです!」
ネルとクラリッサが大声で叫んだ!
「冗談よ!」
エリスが笑いながら言った。
「はあ、よかった•••」
二人も胸を撫で下ろしていた。
ジョッシュは少し残念そうな顔をしてうつむいてしまった。
「ハーベル!」
「なに、ジョッシュ!」
「私と友達になってもらえる?」
「ああ、僕もお願いします!」
ジョッシュとダイランがそう言うと、
「ええ、もう友達でしょ?」
ハーベルが当たり前のように言うと、
「やった!」
二人は跳び跳ねて喜んでいた。
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