サリエルの世界へようこそ!
マリフィスは、ルナシェイドの助言でソブリンとなり国づくりを勧められていたが、お金も何もかもが足りていなかった。
特に困っていたのが電気だった。
「この世界を自由にできるのはいいが、電気だけはどうしても使わざるを得ないのに、リバースレルムへ電気を引く方法はない!」
「一時的な電気なら発電できるが、限界がある。もっと持続的に電気を供給する施設がほしい•••」
「でも、結局金も人材もないからどうしようもない•••」
「何をするにも金が要る•••」
マリフィスは、八方塞がりで頭を抱えていた。
サーフェスレルムで精神科医をしていたマリフィスは、患者のなかにめぼしい人材がいないか常に目を光らせていた。
ある日一人の中年の男性が患者として現れた。
「今日は、どうされました?」
「先生、私最近変なものが見えるんです•••」
「変なものとは、どういったものですか?」
「実は、自分自身なんです•••」
「ほお、自分自身ですか•••」
「それで、なにか困ったことでも起こりましたか?」
「ええ、自分が話しかけてくるんですよ•••」
「なるほど、例えばどんな話をしてくるんでしょうか?」
「ええっと、例えば•••昔の自分はどうとか•••仕事がどうとか言っていました」
「ほほう、それは興味深いですね」
「先生、いったいどうしたらいいんでしょうか?」
「分かりました。いい治療法があります。次回の受診までに用意しておきますので、1週間後にもう一度受診してください」
「それまでは?」
「そうですね。このお薬を服用してみてください。
ゆっくり眠れると思いますよ」
「先生、ありがとうございます」
その男性は有名な電力会社の社長で、
雑誌で顔を見たことがあったのですぐにピント来た。
さらに、その話によると転生者のようだったが、まだその事を受け入れられない様だった。
マリフィスはこのまま、表裏能力を目覚めさせて取り込もうという魂胆だった。
1週間後、例の患者がやって来た。
その男の名をサリエルという、電力会社の社長である彼は、仕事しか生き甲斐ないような男で独身だった。
「サリエルさん、そこに横になってください」
「はい•••何をするんですか?」
「そうですね、催眠療法のようなものです」
「催眠療法ですか•••」
「ええ、あなたを薬によって眠らせ、話しかけてくる自分とよく話し合ってもらいます」
「はあ•••」
「そして、ここからが重要ですよ」
「はい!」
「相手からキーワードを聞き出してください」
「キーワードですか?」
「ええ、それを知ることができればあなたの悩みはすべて解決しますよ」
「分かりました」
「では、サリエルさんこの薬を一気に飲み干してください」
「はい•••」
サリエルは、ゴクリと息を飲んだ。
「さあ、どうぞ!」
「はい!」
サリエルは一気に薬を飲み干してそのまま横になって息をしなくなってしまった。
「よし、ここまでは順調だ•••」
マリフィスは満足そうにニヤリと笑った。
••••••
「ここは?」
「私の働いていた職場では?」
「おい、ここの資料はどうした?」
「はい、ただいま•••」
たくさんの人間が忙しそうに動き回っていた。
「いいか、この案件は医療業界を揺るがすかもしれない、慎重にことを進めてくれ!」
「分かりました!」
「そうだ、私は厚生労働省で医療制度の担当だった•••」
「こんな、法制度の抜け穴を突くような方法で、税金をごまかしている企業がいるとは•••」
「本当ですね、悪いことを考えるやつほど頭がいいから、鼬ごっこですね」
「全くだ!」
「国税庁の方にもこの件で話があると伝えておいてくれ!」
「分かりました」
「今日はここまでにして、また明日頼んだぞ!」
「お疲れさまでした!」
「おい!」
「おい!お前だよ!」
「な、なんだ!」
「おお、話しかけて申し訳ない」
「いったい誰なんだ?」
「私はあんただよ!」
「何いってるんだ?」
「あんたの苦労は身に染みて分かっている。だから、
ひとつだけ聞きたいことがあるんだが?」
「別に構わんが?」
「ありがとう、自分の存在をどう思う?」
「自分の存在か•••あまり考えたことないが、そうだな•••太陽と月かな!」
「ほう、官僚はいわば裏方、月は分かるが、太陽というのは?」
「ああ、この国は俺たち官僚が照らしてやってるってことだよ、まさに太陽のようにな!俺たちがいなきゃ政治家も国民もなにもできないからなこの国は!」
「なるほど、そう言うことか•••」
「ああ、ありがとう•••」
••••••
サリエルは、清々しい顔で目を覚ました。
「サリエルさん、どうでしたか?」
「ああ、スッキリしました。先生のお陰です。
ありがとうございました」
サリエルは深々と頭を下げた。
サリエル
リバースサーフェス
太陽と月(自然)
(Solar / Lunar)
「ソーラー•ルーナ」
魔法属性は、光、闇、土属性
元の職業は、官僚
「ところで、サリエルさん、個人的にお話ししたいことがあるのですが、今度お時間をいただけませんか?」
「もちろん、先生は命の恩人ですから!」
「そんな大袈裟な•••」
「いえ、それぐらいありがたく思っているということです」
「ありがとう。では追って連絡します」
「お待ちしています」
サリエルは丁寧にお辞儀をして去っていった。
次回 ソーラーネルへようこそ!




