人体実験へようこそ!
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マリフィスは【表裏の書】を抱えて、涙を拭きながらひたすら逃げるように走り続けた。
「はあ、はあ、はあ••••」
「ああ、エヴァリスを殺してしまった。愛してたのに•••なんでだ•••」
マリフィスは見知らぬ土地で頭を抱えながら倒れ込んでしまった。
マリフィスが気がつくと、病院のような場所でベッドに寝かされていた。
「博士!気がつかれました!」
助手らしき女性の大きな声で意識がはっきりしてきた。
「ここは?」
「ああ、研究室の仮眠用のベッドです」
「ああ、すまない•••迷惑をかけたね!」
「いえ、それなら博士にお礼を!」
「おお、気がついたかね?」
「はい•••」
そこには科学者のような白衣を着た男が立っていた。
「ありがとうございました」
マリフィスがお礼をいって立ち上がろうとすると、
「まだ無理をしなくていい、もう少し休んでいきなさい!」
「はあ•••」
「ああ、、、」
マリフィスが急に大きな声をあげた。
「どうしたんだい?」
「私の持っていた本は?」
「ああ、これかい?大事そうに抱えていたから、そこにおいてあるよ!」
「ああ、よかった•••」
「悪いとは思ったが少し読ませてもらった!」
「何!」
「ああ、申し訳ない!」
その男は深々と頭を下げた。
「ああ、いやこちらこそ声を荒げて申し訳ありません•••」
「いや、こっちが悪いんだ•••」
「私の名前は、メルキドと言う。君の名前を教えてもらえるかな?」
「ああ、申し遅れました。マリフィスと申します」
「マリフィス君か•••」
メルキドは本のことが気になってしょうがなかった。
「マリフィス君!」
「ああ、マリフィスでいいですよ」
「では、マリフィス!折り入って頼みがあるんだが?」
「ああ、この本のことですか?」
「そうなんだ•••」
「分かりました。お話ししましょう」
「それは、楽しみだ!」
マリフィスは、都合の悪いところはごまかしながら経緯を説明し始めた。
「そうか、大変だったね•••」
「いえ•••」
「ぜひ、その儀式とやらに私も関わらせてはもらえないだろうか?」
「いや、それは困ります•••」
「だが、失礼ながら君にこの秘薬の調合ができるのかな?」
「そ、それは•••」
「ここなら、ちょうど材料も揃っているし、私なら調合も可能だ。なんなら、君にも一緒に作り方を伝授してもいいぞ!」
「ううん•••」
確かに俺だけじゃ、自力で秘薬を作るのは無理があるし、儀式もひとりじゃ心もとないのも事実だ。
協力者としては申し分ない!
「分かりました。よろしくお願いいたします」
マリフィスはメルキドに握手を求めるように手を出した。
メルキドは、その手を握るとニヤリと笑いかけた。
「ちなみに、メルキドさんは魔法を使えるのですか?」
「メルキドでいい!ああ、使えるよ!」
「なるほど!」
「もちろん、君も使えるんだよね?」
「ええ、もちろんです。ただ、まだレベルが足りませんが•••」
「なるほど、二つ目の条件か?」
「そうです」
「ちょっと待ちなさい。必ずしも常にレベル10である必要はないんじゃないかな?」
「と言うと?」
「私は科学者だが、以前より魔法にも興味があっていろいろな研究をしているんだがね•••」
メルキドはたくさんの資料の中から一冊の本をほじくり返してきた。
「フッ!」
埃を吹き飛ばすと、
「ああ、これだこれだ!」
そこには、
【魔法属性の補正可能な植物性アルカロイドの精製実験】
と書かれていた。
「この実験の結果から、一時的になら大幅に属性値を上げることに成功している」
「メルキド、本当なのか?」
「ああ、マリフィス、試してみるかね?」
「ああ、ぜひ!」
メルキドは、助手になにやら指示をすると、早速、そのアルカロイドの薬と秘薬の準備に取りかかった。
マリフィスは、少し心配だったがメルキドを信用することにした。
「それにしても、この書を書いた者はまさに天才としか言いようがないな!」
「はあ•••」
「どうしたんだ?元気がないな!」
「いいや、少し疲れただけだ•••」
「明日は、早速、実験だ!今日はゆっくり休みたまえ!」
「分かったよ•••」
マリフィスはベッドを借りて早めに就寝した。
「これは、凄い書を手に入れた!」
メルキドは目をギラつかせながら、食い入るように
【表裏の書】を読み込んでいた。
「マリフィスを実験台にして、成功したら私の番だ!
楽しみ過ぎて眠れる気がしない!」
メルキドは異常なほどの集中力で実験の準備を整えていった。
「おい、マリフィス!」
「ああ、おはよう!」
「おはよう!さあ、食事が済んだら早速、実験にかかろう!」
「ああ、はい•••ふあ•••••••」
マリフィスは大きなあくびをしながら支度をしていた。
「マリフィス、準備はいいかね?」
「はい!」
「じゃあ、まずこの2種類の薬を飲んでくれたまえ!」
「これは?」
「これが、2種類の属性値を一時的にMAXまで上げるものだ!」
「凄いですね!」
マリフィスは一呼吸おいて一気に飲み込んだ。
「どうかな?」
マリフィスは特に変わったことはないように思った瞬間、
「う、うわーーーーー!」
マリフィスが大声で叫び出した。
「身体が、身体が燃える!暑い!」
マリフィスは着ているものをすべて脱ぎ捨てて、叫んでいる。
「どうだ?少しは落ち着いたかね?」
「うをーーーーー!」
マリフィスは1時間ほど苦しみ続けていた。
「ううん、もう少し改良が必要か•••」
メルキドは冷静に分析しながら観察していた。
「はあ、はあ、はあ、苦しい••••」
「もうそろそろ次の段階へ移ろうと思うのだが?」
「はあ、はあ、無理だ•••死ぬ•••」
「いや、今からどうせ一度死ぬんだろ?」
「はあ、はあ、うるさい!殺すぞ!」
「いやいや、死ぬのは君だよ!」
メルキドはそう言って、無理矢理マリフィスの口に秘薬を流し込んだ。
「うう、うう、うーーーーー!」
マリフィスは苦しそうに呻き声をあげながらうつ伏せに倒れ込んで動かなくなった。
「あれ?死んだか?」
メルキドは嬉しそうにマリフィスを観察し続けていた。
次回 マリフィスの世界へようこそ!
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