裏領域(リバースレルム)へようこそ!
「まだ、3日しか経ってないのに私たち追い付かれちゃったね•••」
「化け物かよ!」
クラリッサが、そう言ってハーベルの肩をつついた。
「ハーベルの魔力ってすごく綺麗だよねえ!」
「ああ、あんなに滑らかな魔力師匠以外に見たことない」
「しかも一見魔力量が凄く少ないのかと思うほどに薄く硬く制御されている」
「もう、普通の銃で撃たれてもビクともしないわね」
「しかもずっとその状態を保ったまんま普通に過ごしてるね•••」
「まさに天才ってやつね•••」
「おはよう、ネル、クラリッサ!」
「おはよう、もうすっかり魔力コントロールできるようになったね」
「いやまだまだだよ」
「どこがだよ!」
「うん?」
ハーベル本人はまだその凄さに気がついていない様子だった。
「ハーベルは、結局何の属性を上げることにしたの?」
「ああ、光と闇と水属性をメインで上げようかと思ったんだけど、師匠が風も上げた方がいいんじゃないかって•••」
「そっか、4属性は大変だね•••」
「マジか、師匠鬼だな•••」
「そう言えば、ハーベル属性の魔力色って分かる?」
「魔力色?」
「よく私たちの魔力を観察してみて」
ハーベルが、二人を凝視すると、
「ああ、魔力が3色のマーブル模様みたいになってるんですね」
「そう、その色によってある程度は主属性が推測できるのよ」
「そうか」
「ちなみに、光=黄色 炎=赤色 風=緑色 水=青色 土=茶色 闇=紫色 無属性=白色 になっているわ、ハーベルの魔力も白く見えているのよ」
「そうだったのか•••」
「じゃあ、こんな感じであえてあまり上げていない炎と土を魔力に混ぜ合わせれば知らない奴は勘違いするかな?」
ハーベルは、そう言って身体を覆う魔力を赤色と茶色のマーブル模様に瞬時に変化させた。
「はあ、あんたなにそれ?」
「何って?」
「ああ、呆れてなにも言えない•••」
「普通は、主属性以外の属性を自由に表に出したりできないし、そんな素早い魔力操作も無理なのよ•••」
ネルとクラリッサは、驚きを隠せない様子だった。
「でもこうしておけば弱い炎と土属性に見えるだろ?」
「ううん、初心者ぐらいなら騙せるかもね」
「ダメか•••」
「うん、魔力操作が綺麗すぎて熟練者ってばれちゃうよ」
「そうか、気がつかなかった」
「じゃあ、こんな感じならどうかな?」
ハーベルは、魔力の流れを操作し境界をぼかした感じを作り出した。
「ああ、それなら分からないかもって、よくそんなに自由にコントロールできるな!」
「完敗ね•••」
「それで、みんなはどこで魔法の攻撃訓練をしてるんだ?」
「ああ、その件で師匠が呼んでいたんだった」
「さあ行きましょう!」
「ウイす!」
「ハーベル来たわね、今日は表裏能力について触りだけ教えておくわ」
「触りだけ?」
「表裏能力は、時期がくれば必要となる力よ、でもまだ時期尚早ね」
「分かりました」
「リバースサーフェス!」
リーフィアは、そう口にすると目の前の空間を切り裂くような動作をした。
すると、なにもないところに裂け目のようなものが開き、中に別の空間が広がっているように見えた。
「何だ?」
ハーベルは驚いて身構えた。
「ああ、安心してこれは「リフト」と呼んでる「リバースレルム」へ移動するための次元の裂け目よ」
「ええと、なに言ってるか全く分かりませんが•••」
「まあ、今は詳しいことは置いておいてまずはリバースレルムへ移動しましょう」
そう言って3人はリフトの中に消えていった。
ハーベルは、急いであとを追った。
そこには、今まで見たことのない風景が広がっていた。
表の世界と似ているような似ていないような、見知らぬ動物もたくさんいるようだった。
少し薄暗く幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「ここは?」
「リバースレルムといって、基本的には表裏能力者しか入ることのできない領域よ」
「さっきから言っている、表裏能力って何ですか?」
「まだ詳しいことは言えないけど、ここ数十年の間に転生者の中に二つの側面を持つ能力を発現するものが現れたの」
「それが表裏能力?」
「今では、その発現条件も分かっているけど、その条件が厳しいからその時期が来たらちゃんと教えてあげる」
「分かりました」
「とりあえず、リバースレルムは完全に別の空間だから基本なにやっても大丈夫よ、あそこにいる魔物も狩っていいからね」
「なんか見たことのない生き物がいると思っていたんですが、魔物だったんですね•••」
「ただし、このエリアからは絶対に出ないこと、もし他のデュアルに見つかったら即死よ、このエリアは私が作った領域だから他のデュアルの出入りはできないようになっているの」
「デュアル?」
「ああ、表裏能力者の事を通称でデュアルって呼んでいるの、ちなみにマルチと呼ばれる多重能力者もいるらしいけど、基本自分のリバースサーフェスはばれないようにしているから今までに見たことのないけどね」
「リバースサーフェス?」
「表裏能力の固有の名称のことよ、まあ追い追いね•••」
話を濁されてしまった。
「ハーベル、ここなら自由に魔法をぶちかましても大丈夫だ!」
「いっちょ相手するか?」
クラリッサが、攻撃の構えをとった。
「クラリッサ、待って!」
「は~い、師匠•••」
「いきなり攻撃魔法じゃなくて、魔力操作も兼ねて武器の扱いから説明するわね」
「はい、師匠!」
「まずはあそこから好きな武器を選んで見て」
そこにはありとあらゆる武器が置かれていた。
「よくこんなに集められましたね•••」
「まあ、色々裏のコネとかあるのよ、そんなことはいいから選べた?」
「そうですね•••」
ナイフは扱いやすいし隠すこともできるけど弱いかな?
銃は強そうだけどあっちの世界ではすぐに捕まるか•••
弓も毒と相性が良さそうだけど持ち歩くのには不便だしな•••
剣や槍も同様に持ち歩けないからな•••
やっぱりここはナイフかな
「このナイフにします」
「正解!」
「正解?」
「ここにある武器はどれも強力だけどナイフは一般に販売されているものよ、サーフェスレルムでこんな武器持ってたらすぐに捕まってしまうから、通常は持っていてもおかしくないものをつかっているわ」
「まあ、中にはそんなのお構いなしで銃とか刀とか使ってくる輩もいるけどね•••」
クラリッサが残念そうな顔をした。
「確かにそんな輩もいるけど、私たちは違うわ、ただしリバースレルムならどんな武器を使用してもいいから、他の武器を試したいときはこちら側で試すことね」
「肝に銘じます」
「早速、そこの森で魔物狩りよ!」
クラリッサがハーベルの手を掴んで引っ張っていった。
「ナイフで戦うのは始めてだから緊張するな•••、あ、こないだのネズミ!」
「ああ、あれはでらびっくりマウスよ!」
「よし、でらびっくりマウスか!」
ハーベルは、ネズミの前に出て構えるとナイフで突き刺した。
ネズミはヒョイと避ける、何度もナイフで切りかかるが全く当たらない。
「くああ、でらびっくりマウス素早すぎる!」
「ハーベルこうよ!」
クラリッサが、ナイフを手にネズミの前に立ちはだかると急にネズミが襲いかかってきた。
そこをナイフでひと突きして仕留めた。するとネズミは消えて代わりにアイテムがドロップした。
「おお、クラリッサすごい!」
「ハハハ、ハーベルたら••••」
「急にどうしたの?ネル」
「さっきのはただのビッグマウスよ」
「え?でらびっくりマウスじゃないの?」
「ハハハ!」
クラリッサが笑い転げている。
「なんでそんな嘘を?」
「ただ言ってみたかっただけ!
ハハハ•••」
「なんだそれ•••フフフ•••」
「ハハハ」
ただただみんなで笑い転げた。
次回 「スキル」の世界へようこそ!
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頑張って続きを書いちゃいます!