第1チェックポイントへようこそ!
次の日の朝、取っ捕まえた男が暴れている音で目が覚めた。
「ううう、うううう」
「ああ、ごめんごめん」
猿ぐつわを取ると、
「おい、なんだこれは!さっさとこのロープを外せ!」
「いや、それはできない相談だな!」
「なぜ、殺さなかった?」
「いや、殺す理由がない」
「いいや、あるだろ、お前たちを殺そうとしたんだぞ!」
「あんた、そんなに殺されたいの?」
クラリッサが視線を向けた。
「あ、いや、殺されたいわけじゃないんだが•••ハハハ•••」
「それより、お前!なんで魔力抑えられてるんだよ!昨日はあんなに垂れ流しだったのに!」
「私たちがコントロールの仕方を教えたのよ」
「いやいや、昨日教えてすぐできるもんじゃないだろ!」
「うるさいわね、私もそう言ったわよ、でもできちゃったんだからしょうがないじゃない!」
「はあ?」
「ところで、お前の名前は?」
「言うわけないだろ!」
「なんでだよ?」
「俺は、ハーベルだ、お前は?」
少し迷ったようすで、
「タクトだ!」
「タクト、今から解放するから攻撃するなよ!」
「ああ、わかった•••」
ハーベルは、拘束をとくとタクトはすぐに身構えた。
「ああ、もう分かったよ!」
タクトが諦めたかのように手を上げた。
「助けてくれたお礼にいいこと教えてやるよ!」
「いいこと?」
「ああ、ゴールまでにチェックポイントが全部で4つある、それを全部クリアしないと絶対にゴールにはたどり着けない」
「なるほど」
ハーベルはじっとタクトを見つめた。
「ああもう、分かったよ、最初のチェックポイントは、ガザル地区にある雑貨屋だ!」
「ありがとう」
「もうこれ以上は教えないぞ!借りは返したからな!追ってくるなよ!」
「ああ、行っていいよ」
「なんで逃がすのよ!また命狙われるわよ」
「いや、タクトはもう襲ってこないよ」
「私もそう思うわ」
「たぶん、あの情報も本当よ」
「じゃあ、先にガザルへよってその後師匠に会いに行こうか!」
「そうね」
「分かった」
「ネルたちの移動手段は?」
「車よ、あそこに置いてあるね」
そこには古めかしい車が置いてあった。
「じゃあ、一緒に乗せてもらおうかな」
「あんたが運転しなさいよ!」
「いや俺まだ16だし、車は無理!」
「何でここまで来たの?」
「ああ、スカイバイク」
そう言ってカッコいいガンメタのスカイバイクを取り出して見せた。
「うう、カッコいい•••」
「じゃあ行こうか」
結局、クラリッサが運転することになって、ハーベルは後部座席で横になっていた。
「ハーベルのこと聞かせてよ」
「特に面白いことはないよ」
ここまでの経緯を順を追って聞かせた。
「ああ、そう言えば実は俺、転生者みたいなんだ•••」
何の気なしにそう言うと、ふたりは黙り込んでしまった。
「うん?どうしたの?」
「そう、じゃあデュアルの事も知っているのね?」
「デュアル?」
「いや、知らないならいいの、今の事は忘れて!」
クラリッサは、話題を変えて話続けた。
俺は、とても気になっていたが触れて欲しくない話題のようだから気のないふりをしていた。
「ここからガザル地区よ、確か雑貨屋って言ってたわよね」
「ああ」
「ここじゃないかしら?」
「なるほど、怪しいね」
そこには、「アヤシイ雑貨店」と書かれた看板がデカデカと掲げられていた。
「見るからに怪しいね•••」
「まあ、行ってみよう」
ハーベルたちは恐る恐るドアを開けると
「すいません、誰かいますか?」
何の返事もない。
「すいませ~~~ん!」
「ああ、聞こえてるよ、何の用だい!うるさいね!」
「すいません、ここがMD試験のチェックポイントって本当ですか?」
「おい、ハーベル!」
「こりゃまた、妙ちくりんなのが来たもんだね!」
店主のお婆さんは、急にスイッチが入ったように人が変わった。
「そんなに直球で聞いてきたのは、お前さんが始めてだ!気に入った!とりあえず、なんでもいいから聞きな!」
「はい、MD試験の会場へはどうやって行けばいい?」
「その質問に素直に答えるとでも思っているのかい?」
「婆さん、質問を質問で返すなよ!」
「ほお、いい度胸だね!心意気だけは誉めてやるよ!」
店主の婆さんは、何やらゴソゴソと出してきた。
「あんたらに魔法の基礎がどれだけできてるか試させてもらうよ!」
「まずい、ハーベルまだ基礎訓練受けてないよ!」
「先に師匠に会うべきだったわね」
「さあ、今さら遅いよ!もう試験は始まってるんだからね!」
そう言ってテーブルを大きな音を立てて叩いた。
「ああ、大丈夫、でも最後に俺は受けるよ、二人の試験を観察するから」
「ああ、構わないよ、見様見真似でできるような物じゃないからね」
婆さんが、テーブルの上のコインを差し出した。
「このコインを触れずに回転させてみな!」
「触れずに?」
「この状態からですか?」
「ああ、魔法の基礎ができていればそんなに難しいことじゃないはずだ」
「分かりました」
そう言うと、
ネルは、コインを両手で覆い隠すように構えると、手のなかに風魔法で小さな渦を作り出した。
「ウィンドストーム」
魔力の調整をしながら小さな渦をうまく調節してコインを浮き上がらせると、手のなかでクルクルと回り始めた。
クラリッサも同じように、
「ウィラプール」
手の中に渦潮のように水を回転させてコインを回して見せた。
「よし、上出来だ!魔力のコントロールの基礎は十分のようだね、合格だ!」
「そこのあんたはどうするんだい?」
ハーベルはおもむろに椅子に座ると、コインの上に手をかざした。
「どうするつもり?」
ハーベルは、コインの真上に手を少しずつ近づけていき、ギリギリのところで止めたかと思うとゆっくり手の平をつぼめながら上に上げていった。
すると、コインが独りでに立ち上がった。そのまま手をゆっくり上げ続けると、コインはそのまま宙へ浮いた。
「え、コインが浮き上がった?」
「手品みたい!」
すると、コインが少しずつ回転をし始めてドンドン加速していく、駒のように空中で回り続けるコインは凄い音を立ててすっ飛んでいった。
壁にめり込んだコインは、ぐにゃぐにゃに歪んでいた。
「お前さん、何したんだい?」
「ああ、さっきの二人の魔法を見て風か水魔法ならうまくコントロールすれば回転させられるのは分かったけど、同じじゃつまらないから、魔力を糸のように細くイメージしてコインにくっ付けて空中に引き上げた。
そこに魔力で少しずつ遠心力を加えていったら、ああなった」
「ううん、何言ってるかわからん•••
分からんけど魔力のコントロールはできとるみたいだから、まあ合格だ」
「あんた、何してるのよ?」
「だって面白そうだろ?」
「フフフ、ハーベルってステキね」
「まあいい、3人とも合格じゃ、次のチェックポイントのヒントをやろう」
婆さんは、紙に次のポイントへの行き方を書いてくれた。
「婆さん、ありがとう」
「ありがとうございました」
「達者でな!」
婆さんは、ぐにゃぐにゃのコインを壁から取り出すと、
「あのハーベルとかいう青年、いわゆる天才肌って奴だね、正直何言ってるのか理解もできなかったし、詠唱すらしてなかった、末恐ろしいね」
婆さんは、コインを宙に投げると両手の平で受け止めた。
見るとコインは元通りの平らに戻っていた。
「じゃあ、今度は師匠に会いに行きましょう」
「ここからだと2日もあれば着くでしょ」
「よろしくお願いいたします」
手を前に出してお辞儀をした。
「いや、告白かよ?」
クラリッサが、ツッコミを入れたが誰も反応してくれなかった•••
「って、無視かよ•••」
次回 師匠の家へようこそ!
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頑張って続きを書いちゃいます!