我が家へようこそ!
なんだか外が騒がしいようだ。
「そこのお嬢さん方よ!お前らもMD志望だろ!一緒に仲良くしようぜ~」
「いえ、何を言ってるのか分かりません」
「そうですよ、放っておいて下さい」
「そうはいかないな、世の中そんなに甘くないのよ、分かる?」
2人は顔を見合わせて手を握りあっている。
「なんだ何も知らないのか?予備試験会場で言われなかったか?各地から受験者が集まってくるって!」
「そう言えばそんなことを•••」
「今年だけでも1,000人以上は受験希望者が居るらしいぜ、今のうちに減らさないとな!」
「どうして私たちが希望者だと?」
「本当に何も知らないんだな•••予備試験のときに魔力測定の機械に触れただろ!
あの時に魔力探知の魔法が付与されたのさ、よく相手を観察すればおおよその魔力と属性が分かるんだぜ!」
「そうだな、そっちの君は、光と土と風属性でそっちの黒い娘が闇と炎と水属性だな、どっちも3属性持ちかここで潰しといた方が良さそうだな!」
その男はそう言い放つと詠唱を始めた。
「ファイアランス!」
炎の槍が4本現れたかと思うとふたりめがけて襲いかかって来た。
ふたりはその場で一歩も動けずにしゃがみ込んだ。
ズシャ、ズバッ、ドカーン
「はい、いっちょあがりと!」
「おい、おい、随分自分勝手なこと言ってたな!」
「お前何者だ!どっから現れた?」
「さあな」
ハーベルが、水魔法のシールドのようなものでふたりを防御していた。
「それより、なんだその魔力量は?しかも無属性だと?少しは魔力を抑えろよ!そんな垂れ流してたら•••おかしいだろ!なんだお前!」
「さあな、なに言ってるのか解らないけど、女の子に手を出すなんて、お前最低だな!」
「うう、うるさい!」
「お前も死ね!」
その男はとにかく今使える魔法を打ち続けた。
「ファイアランス、ファイアランス
ファイア•••」
「くそ、なんで効かないんだ!こんな初心者にこの俺が負けるはずない!」
男は疲れきってその場でヨダレを垂らしながら気絶してしまった。
「君たち大丈夫か?」
「う、うん•••ありがとう•••」
クラリッサは、まだ警戒している様子でネルを守る体制をとりながら答えた。
「クラリッサ、この人は大丈夫だよ」
そう言ってネルがクラリッサの手を優しく下ろした。
「本当?」
「うん」
「私はネル、助けてくれてありがとうございます、こちらはクラリッサ」
「よ、よろしく」
「俺は、ハーベルって言うんだ、君たちもMD試験の受験希望者なんだろう?」
「なんでそれを?やっぱりあなたも私たちを殺す気でしょ!」
クラリッサが、とっさにネルをかばう姿勢を取り直した。
「だから、大丈夫だってクラリッサ」
ネルがクラリッサの警戒を解いた。
「ああ、驚かせてごめんね、さっきの会話を聞いていたんだ」
「それより、あなたどこから現れたの?」
「ああ、ハーベルでいいよ、そこの家からさ」
「家?なんてどこにも無いじゃない」
「いや、あるよ」
ハーベルは、そう言ってふたりの手を引いて家の扉の前に連れてきた。
「ほらね」
家の扉を開くと、空間に家の中が見えるような風景が浮かび上がった。
「なにこれ?」
「不思議!何もないのに家の中だけがあるみたい•••」
「ああ、そうか出した本人にしか見えない隠蔽魔法って言うのがかけられているんだった」
「隠蔽魔法?」
「不思議な人•••」
ネルは、ハーベルに興味を持っている様子だった。
「まあ、中に入ってよ今お茶でもいれるから」
ハーベルが家の中に招き入れようとすると、
「あいつはどうするの?」
「ああ、忘れてた、家の中に入れて少し寝かせておくよ」
「え、殺さないの?」
「うな、物騒なことするわけないだろ!」
「そう、良かった•••」
クラリッサが肩の力を抜いて安心したようだった。
「ハーベル、不思議なことばかりなんだけど?」
「何が?」
「何がって?この家の事もそうだけど、魔法を詠唱せずに使ってたよね」
「あれ、そうだった?緊急事態だったから無意識で•••」
「あと、アイツも言ってたけどその魔力どうにかしなさいよ!」
クラリッサが、不機嫌そうに言った。
「ええっと、どうすればいいのか分からないんだ•••」
「まったく仕方がないわね•••」
クラリッサがあきれた様子で魔力操作についてレクチャーしてくれた。
「こんな感じか?」
「うん、そうそうって、なんでそんなすぐできるのよ!」
「だって、今抑えろって?」
「いやだから、なんでそんなに早く魔力操作を覚えれるのよ?」
「言われた通りにしただけだけど?」
「ああ、もうお手上げ•••」
クラリッサが、両手をあげて降参のポーズをとった。
「フフフ、普通は魔力操作を覚えるのに数ヶ月はかかるのよ、私たちも師匠に教えてもらってここまでできるようになったのよ」
「そうなのか•••」
ハーベルは、頭をかきながら照れ笑いで返した。
「君たちも試験会場へ行くんだよね?一緒に行かないか?」
「一緒になんて行くわけないでしょ!」
「やっぱそうだよね•••」
「いいえ、一緒に行きましょ!」
「ネル、なに言ってるの?こんなデタラメな奴に付き合ってる暇はないでしょ!」
「いいえ、なんかハーベルと一緒に行かないと行けない気がするの」
「ええ、マジかよ•••」
「じゃあ一緒に行くってことでいいかな?」
「ネルが言うならしょうがないな•••」
「やった!ひとりでどうすればいいか分からなかったんだよ」
「でしょうね•••」
クラリッサは、あきれ顔で見ている。
ネルは、少し嬉しそうに笑った。
「あんた、食事とかどうしてるの?」
「このアイテム袋にたくさん入ってるんだよ」
「ええ、どうやって?」
「さあ、仕掛けはわかんない」
「うう、やっぱりコイツ怪しい~~~」
「まあまあ、クラリッサ落ち着いて」
ネルはとても楽しそうだった。
「食材は、冷蔵庫と食料棚にたくさんあるから好きなものを使っていいよ」
「俺は、そのまま食べるくらいしかできないから•••」
「じゃあ、私たちが料理を担当するわね!」
「本当?ありがとう」
「そうと決まれば夕飯のしたくするわよ、クラリッサ」
「は~い•••」
こうしてハーベルは、ネルとクラリッサに同行することになった。
「このご飯めちゃくちゃ旨いんだけど!」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
「ネルが丹精込めて作った料理なんだから、ありがたくいただきなさい!」
「ありがたくいただきます!」
ハーベルは、本当に美味しそうに食らいついた。
それを見ながらネルは何かを感じていた。
「ああ、ベッドが一つしかないかも、ちょっと待って、袋にあるかも•••」
「おお、あった、よいしょっと」
「もう、驚いてもしょうがないけど•••何•••その袋•••」
「まあまあ、良いじゃないベッドも布団もあってこれでゆっくり眠れる」
「あんた、変なことしたら殺すわよ!」
「分かってるよ•••」
「でもハーベル、魔法のことあんまり知らないみたいだけど、そのままじゃ試験は合格できないぞ!」
「そうなのか?」
「そうね、師匠にお願いしてみましょうか?」
「ううん、そうだな、ここまで来たらそれしかないか•••」
「じゃあ明日、まずは戻って師匠に会いに行くか!」
「そうね」
「お休み」
「おやすみなさい」
「分かってるな!」
クラリッサが目を光らせている。
「ハハハ•••」
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頑張って続きを書いちゃいます!