魅惑の罠へようこそ!
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「ヴァロッサム様、進軍の前に私にこの件をお任せいただけないでしょうか?」
「どういうことですか?アイオン!」
「はい、私にいい考えがあります」
「その考えとは?」
ヴァロッサムが興味深そうに尋ねた。
「私が人間に化けて、スパイとして潜り込みます。そこで、相手の時を操るものを手なずけてみせしましょう」
「ほほー、武力ではなく、内部から崩壊させる作戦か!」
ますます興味が湧いてきたようだった。
「分かりました。作戦については私から魔王様に伝えておきますので、直ちに行動に移しなさい!」
「かしこまりました!」
アイオンは丁寧に頭を下げると、一瞬で消えてしまった。
「この作戦はいいかもしれません!」
ヴァロッサムはニヤリと笑った。
•••••••
ハーベルが統治する、この光の国【ルミナラ】は、医療都市としてこの精霊界全体を支えていて、無くてはならない存在となっていた。
【ルミナラ】は医療都市であるがゆえに、誰でも自由に出入りできるように、城壁などは設けられていなかった。
だが、ハーベルの魔法によって魔物は入ってこれないようなシールドが設置されていた。
「シェイド•シフト!」
真っ赤なドレスに身を包んだ、白い顔の美しい長い髪の女性が現れた。
アイオンは、【ルミナラ】の境界までやってくると、シールドを時の呪術で難なく通り抜けてしまった。
彼女は、常に魅了の魔法を発動しているため、通りすぎる男性は誰もが彼女の魅力に釘付けになってしまった。
「おい!あんな綺麗な人ここにいたか?」
「知らないよ!でも、結婚してほしいな!」
「いや、俺が先に見つけたんだ!」
そんな具合で誰もが振り返った。
「何かお探しですか?」
そこへ偶然通りかかったオウカが、その女性に話しかけた。
「ええ、ここは素晴らしい施設ですね!」
「そうなんです。王様であるハーベル様が、精霊界全体の医療を一手に担っているのですよ。しかも、ほぼ無償で!」
オウカは自慢そうに言った。
「まあ、素晴らしいお方ですわね。ぜひ、ご挨拶をしておきたいわ!」
アイオンは魅惑の眼差しでオウカを見つめた。
「ええ、もちろんです。ご案内します!」
オウカはなぜか、見ず知らずの女を王様のもとへ案内する約束をしてしまっていた。
•••••••
「オウカ、その女性は?」
「ハーベルさん、こちらの女性が【ルミナラ】に大変興味をお持ちのようで、ぜひ王様に挨拶をしたいとのことでしたので、お連れいたしました」
オウカは何の疑いもなく女性を紹介した。
「オウカの知り合いか?」
ハーベルが怪訝そうに聞くと、
「いいえ、病院の入り口でお会いしたばかりです」
オウカは何のためらいもなくそう言った。
ハーベルは何かがおかしいと思ったが、お客様に失礼があるといけないと思いそこはスルーした。
「こちらは、私の妻のネルです」
「ネルと申します。よろしくお願いいたします」
ネルは丁寧に挨拶した。
「紹介が遅れました。私はアイオンと申します。この施設には感銘を受けました。ぜひ、この素晴らしい施設を建てられた方にご挨拶をと思い参った次第です」
アイオンは丁寧にお辞儀をした。
ハーベルはまだ疑っているようだった。
•••••••
アイツ、私の魅了が効いていない?
•••••••
アイオンは愛想笑いをしながら、質問をした。
「ここは、ほぼ無償で治療を行って頂けるとお聞きしましたが、本当でしょうか?」
「ああ、そうだな!」
ハーベルは少し不機嫌そうに言った。
•••••••
コイツヤバいかもな•••私の魅力に全く気がついていないようだ
•••••••
「ああ、そう言えば、ちょっと小耳に挟んだのですが、この辺りに【時を操る力を持った方】がいるという噂を聞いたのですが、ご存じありませんか?」
アイオンは長い髪をかきあげながら、美しい声で尋ねた。
「ああ、それなら私の••••」
ついオウカが答えてしまいそうになった。
ハーベルが直ぐ様、オウカに合図をして素早く首を横に振った。
「さあ、存じあげませんね?」
ハーベルが直ぐ様フォローを入れた。
「そうですか、大変失礼をいたしました。では、この辺でお暇させていただきます」
「何のお構いもできませんですいません」
ネルがまた丁寧に頭を下げた。
アイオンが軽く会釈をして振り返った瞬間、真っ赤な眼差しがキラリと光った。
•••••••
みーーつけた!
•••••••
アイオンの美しい口元でペロリと舌なめずりした。
彼女が部屋を去った後、ハーベルが不機嫌そうにオウカに言った。
「オウカ!部外者を気軽に施設内へ入れるな!」
「はい、申し訳ありません•••」
オウカもなぜこんなことをしてしまったのか理解できない様子だった。
「なにかの魔法か?」
ハーベルが呟いた。
「それに、時のリバースサーフェスのことを他人に明かしてはいけないと、あれほど言っておいただろ!」
ハーベルは怒った口調で問い詰めた。
「はい•••」
「まあ、オウカも反省しているみたいだから、今回はこの辺にしてあげて!」
ネルが助け船を出してくれた。
「ハーベルさん、申し訳ありません!」
オウカは素早く頭を下げると部屋を走って出ていってしまった。
次回 闇への誘いへようこそ!
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頑張って続きを書いちゃいます!




