逆行と共鳴の世界へようこそ!
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「やっと93階か•••」
ハーベルは精神的に参っていた。
「大丈夫か?」
ブリッツが優しく足元に身体を擦り付けながら可愛い顔で言った。
「ああ、相変わらずギャップがスゴいな!」
ハーベルはニヤリとしてブリッツを抱き上げて肩へ乗せた。
「よく来たな!【風のブーツ】履け!」
ドワーフが命令するように言った。
ハーベルが急いで【風のブーツ】を身に付けると、
「あれ、これって!」
何かに気がついた。
そのまま扉を開けて奥へ進むと、そこはまさに逆さの世界だった。
「単に重力が逆になっているだけじゃなく、いろんな方向から力を感じる、まるで逆に無重力のような不思議な感覚だ!」
ハーベルは【風のブーツ】を利用して体勢を整えた。
「みんな、ありがとう!」
ハーベルは風の微精霊たちにお礼を言った。
実はこの【風のブーツ】は、風の微精霊たちをコントロールするためのアイテムのようで、ハーベルはすでに精霊魔法も習得しているため、容易に操作することができた。
ハーベルは、刻々と変化する周囲の重力を逆手にとり、器用に身体をコントロールしながら深淵を目指していった。
「なるほど、パズル系のダンジョンか!」
ハーベルは、順序よく決まった石を押し込んでいくと、次への扉が開いた。
「このダンジョンは、俺に合ってるな!」
そう言ってドンドン先へと進んでいった。
最後の部屋らしきところへ出ると、周りは石壁に覆われていた。
突然、周りが地震のように激しく揺れ出すと、いろんな方向から大きな岩が降り注いで来た。
「みんな、よろしく!」
ハーベルはそう言うと、器用に降り注ぐ岩を避けながら奥へと進んだ。
地震が静まると、最後のパズルが現れた。
そこは、子供部屋くらいのキューブ状の部屋で石壁に覆われている。
部屋の中央に指示が書かれた石板が置かれていた。
「三つの星が輝くとき、月の扉が開かん!」
「どういう意味だ?」
ハーベルは空中で座禅を組んでくるくるとゆっくり漂いながら考えていた。
ある時、部屋の角にある八つの点に違和感を感じた。
部屋の角に近付いてよくみると小さな穴が空いており、星の形をしたもものと、丸いものがあった。
ハーベルは丸いものをすべての塞いでいくと、三ケ所の光が中央に集結して次への扉が開かれた。
そんな部屋が連なったキューブの先にそいつは待ち構えていた。
「なんだあの機械みたいなキューブは?」
空中に金属のサッカーボールほどのキューブが浮いていた。
キューブは突然、変形し始めるとUFOのように急速に回転しながら、ハーベルを襲って来た。
なんとか避けたかのように見えたが、血飛沫が飛び散った。
「ぐっは!」
ハーベルは血を吐き出すと、脇腹を
切り裂かれていた。
「くそ、何で最後だけ戦闘なんだよ!ぐっは••••はあ、はあ、はあ•••」
「レストレーション!」
クルクルゆっくり回りながら回復した。
「あいつを倒せばいいのか?」
「いや、違うだろ!」
ブリッツが出てきて言った。
「どういう意味だ?」
「ここまで、パズル解いてきて最後だけ戦闘で終わるなんておかしいだろ!」
「うーん•••」
クルクル回って考えている。その間もUFOの攻撃を間一髪で交わしている。
「あれを見ろ!」
ブリッツが目で合図した。
ハーベルがUFOが停まった瞬間の変形を見ていた。
「法則がある?」
「ああ、順序よく変形しているみたいだぜ!」
「なるほど!ありがとう、ブリッツ!」
ハーベルはUFOの動きを見極めて、風の微精霊たちの力を利用して、キューブ状に戻った瞬間に、
「グレイシャル!」
キューブの状態で凍らせて捕まえた。
「よっし!」
ハーベルはそのまま奥にある祭壇へキューブを納めた。
その瞬間、真っ白に光が飛び散ったと思ったら、重力が元に戻った。
「ああ、終わったか•••」
「意外と、時間かかったな!」
ブリッツが可愛い顔で言った。
「続けて、94階も行くぞ!」
「そう来なくちゃ!」
ブリッツが肩に飛び乗った。
••••••••
「【エコーストーン】はある?」
可愛いドワーフが声をかけてきた。
「これかな?」
「このダンジョンは、全く目が見えなくなるから、
その【エコーストーン】だけが頼りよ!」
「マジか•••」
「俺も見えなくなるのか?」
ブリッツが尋ねると、
「もちろんよ!」
ドワーフが答えてくれた。
【共鳴の道】
視覚は完全に奪われて、視覚以外の感覚に頼るしかない。
【エコーストーン】は、金属の棒で叩いて音を出すと、暗闇の中に共鳴で帰ってきた音が目の前に映像のように見えるアイテムだった。
「これ、スゴく不思議な感じだ!」
ハーベルが、チーンと音を鳴らすとそこを中心に、周りの状況が波動の映像のように見ることができた。
「これって、ただ進んでいくだけってことはないよな?」
ブリッツがそう言うと、
プッシュ!プッシュ!プッシュ!
ハーベルの頬を何かがかすめていった。
「なんだ!」
チーンと音を鳴らすと、凄い勢いで移動している物体があった。
「とりあえず、バリアで守っておくぐらいしかできないな•••」
チーン!
プッシュ!プッシュ!
「おい!ハーベル、音に反応してるんじゃないか?」
「なるほど•••でも、音がないと進めないぞ!」
「困ったな•••」
ハーベルはしばらくじっとして、周りの気配を探ってみた。
「これは?」
「どうした?ハーベル!」
「ブリッツ、集中すると相手の魔力を感じることができそうだ、さすがに地形は分からないけど、小さくても魔力があれば探知できる気がする•••」
「本当か?」
ブリッツは不思議そうに言った。
ハーベルは【Ethereal Ember SR99】を構えると、ブリッツに音を鳴らしてもらった。そのまま集中していると、
「あれだ!」
【Ethereal Ember SR99】で魔力弾を撃ち出すと、小さないくつもの魔力に命中した。
「殺ったか?」
「ああ、仕留めたよ、ブリッツ!」
「スゲーな!」
ブリッツは感心していた。
この調子でドンドン奥へと進んでいくと、音を鳴らしてもどこにも共鳴しない、広い部屋に出た。
「ここが最後のようだな!」
ハーベルがそう言って集中すると、
「蜘蛛?」
ハーベルが小声で言うと、大きな魔力の塊が天井からスルスルと降りてきて、地面についた感じがした。
「こんな、広いところじゃ共鳴も使えないし、どうするんだ!」
ブリッツが叫んだ。
「今集中しているから、静かに!」
「オッケー!」
ハーベルが集中して探っていると、正面から素早い動きで突進してくる感じがした。
ハーベルは素早く避けると、【Ethereal Ember SR99】で無詠唱の炎魔法を展開した。
敵にめがけて放たれた、ドでかい火球が大きな魔力の塊に命中した。
その瞬間、真っ赤に燃え上がった蜘蛛が現れた。
「よっしゃ!」
【Ethereal Ember SR99】を連射して燃え上がる蜘蛛に追い討ちをかけた。
そのまま動かなくなると、少しずつ視界が戻ってきて、出口にたどり着いていた。
「視界がないのって、こんなに不便なんだ•••ありがたく思わないと•••でも普段から目で見ないでも相手の魔力を探る練習をしておくといいかもな•••」
ハーベルはそんなことを考えていた。
次回 霧の秘密へようこそ!
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