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リバースサーフェス ~この魔法の廃れた世界で 転生薬剤師さんが 魔導王(マグスロード)を目指します!~  作者: 吾妻 八雲
シーズン8 【試練の塔編】

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魂の試練へようこそ!

感想やレビューもお待ちしています!

(例:「面白い!」だけなどでも結構です!)


ハーベルは、92階の入り口にやって来た。


「お前!【呪われた杖】は持っているのか?」

入り口のドワーフが少し偉そうに聞いてきた。


「ああ」

ハーベルはそう言って袋から大きなスタッフを取り出した。


「おお、そんなところに!」

ドワーフは驚いているようだった。


「この試練は、【魂の試練】だ!」

「魂か•••」

ハーベルが少し考え込むと、ドワーフはまた少し偉そうに説明し始めた。


ドワーフの話では、

元は、【マーキュリアルスタッフ】と呼ばれる、どんな姿にも変身することのできる伝説の杖だった、ある大魔導師がこの杖に魅了されて、魂を奪われてしまったそうだ。


それから、【呪われた杖】と呼ばれるようになり忌み嫌われてきた。


このダンジョンでは、最深部にいる魂を奪われた大魔導師を救出して、元の【マーキュリアルスタッフ】へと戻すことができればクリアとなる。


「また、難しそうだな•••」

「いや、ハーベルなら大丈夫だろ!」

ブリッツが肩にピョンと飛び乗って言った。


「まずは、襲ってくる亡霊どもを天へ帰してやってくれ!」

ドワーフが祈るように言った。


扉を開けると、中は洋館の廊下のようになっていて、いきなり建物の中へ入ってきた感じだった。


「へえ、こんな風になっているのか」

ハーベルがスタッフをみると、薄明かりが灯っているように、ぼんやりと白く光っていた。


恐る恐る廊下を進んでいくと、すすり泣く女性の声が聞こえる気がした。


「うう、嫌な予感•••」

ハーベルは乗り気がしないが、その部屋の扉をゆっくり開くと、


ギギギギ••••ギギ•••キーーーー!

嫌な音をたてながら扉が開いた。


真っ白のドレスの長い黒髪の女性が、なぜかずぶ濡れで、すすり泣いていた。


いつものハーベルならここで駆け寄って声をかけそうなものだが、さすがに躊躇してしまった。


「大丈夫ですか~?」

ハーベルは少し離れたところから声をかけてみた。


すすり泣く女性は、泣くばかりで答えようとはしなかった。


「••••••••」

「おーい!聞こえてないですか~?」

もう一度だけ声をかけてみた。


「は~い、お邪魔しました~」

と扉を閉めて帰ろうとドアノブに手を掛けると、


「待ちなさい!」

ずぶ濡れの女性の右手が手を掴んだ。


「うう••••」

ハーベルは思わず身震いがして鳥肌がたった。

素早く手を引き抜いて女性の顔を見てまた身震いがした。


「ああ••••」

ハーベルはそのまま固まってしまった。


そこには、顔をキャッチャーミットのように腫らして、水でふやけてブクブクになった女性がいた。


ハーベルは思わず後ろに飛び退いてしまった。


だが、よくみるととても悲しそうな顔にも見えた。


ハーベルは思わず、

「どうしたの?」

と聞いてしまった。


「私、キ•••レ••••イ?」

女性が口をモゴモゴしてそう言うと。


「あ、ああ•••」

ハーベルがその場しのぎの答えを返してしまった。


「じゃあ、結婚して~~~~~!」

その顔のままでハーベルの顔面スレスレまで一瞬で近付いていた。


ハーベルは目をつぶって、そのまま女性を両手で抱きしめた。

なんとも形容しづらい触り心地で、一瞬でも早く放したかったが、そのまま堪えてこう言った。


「俺は、既婚者なので結婚はできましぇん!」

思わず噛んでしまった。


しばらくの沈黙の後薄目を開けると、


「ハハハ!できましぇんって•••」

可愛らしい顔で笑う女性を抱きしめていた。


「はあっ!」

ハーベルはビックリして大袈裟に両手を放した。


「ハハハ•••こんな笑ったの何年ぶりかしらね•••」

女性は寂しそうな顔になって話し始めた。


女性の話はこうだった。


昔、婚約者に裏切られて、入水自殺をしたが誰にも見つけられないまま、すべての人の記憶から居なくなってしまったので、天に行けなくなってしまったとのことだった。


「ごめんね、俺は結婚できないけど、生まれ変わったらいい人が見つかるといいね!」

ハーベルはそう言って、彼女のひたいにキスをしたいところだが止めて、スタッフをかざした。


すると、スタッフが輝きだしスーッと彼女は消えていった。


そのときの顔は、未来に希望を持っているような美しい顔だった。


【呪われた杖】は、こうして輝きを取り戻していった。


最深部の地下室では、一人の白くて長い髭を蓄えた、いかにも魔導師といった風貌の老人が立っていた。


「よくここまで辿りついたな!」

「この杖を復活させるには、どうしたらいいんだ?」

ハーベルがその老人に尋ねると、


「私の魂の汚れを払ってくれ!」

老人は懇願する顔で呟いた。


「具体的に、どうして欲しい?」

ハーベルが尋ねると、


「その杖を私に貸して欲しい!」

「杖を?」

ハーベルは何か違和感を覚えた。


「そうだ、杖を私に返してくれれば、天に行くことができるだろう!」

「•••」


今までの亡霊たちは、希望を叶えて最後に杖を額にかざすと、幸せそうな顔で天に召されていった。だが、この老人は杖そのものを要求している?


「では、この杖を!」

ハーベルが杖を老人の目の前に差し出すと、生きた人間に飛びかかるゾンビのように飛び付いてきた。


「早く、よこせ!」

老人は力ずくで杖を奪おうとするが、ハーベルが強く握った杖はびくともしなかった。


「やっぱり•••」

ハーベルがそう言って杖を取り上げると、老人の額へ一発お見舞いした。


そのまま老人は尻餅をついて倒れた。

「何をするんじゃ•••」

老人は悲しそうな顔をして見ている。


「杖を奪ってどうするつもりですか?」

ハーベルが強い口調で言うと、


「私は、天国へ行きたいだけじゃ!」

「分かった!」

ハーベルが杖を老人の方へ投げた。


投げた骨を拾いに行く飼い犬のように老人は杖へ飛び付いた。そのまま大事そうに抱きしめると、


「ハハハ!バカな奴め!これで、私は完全復活だ!」

いきなり大声で叫ぶと、【呪われた杖】が激しい光に包まれた。


「おお••••」

老人は輝く【マーキュリアルスタッフ】を掲げて、恍惚こうこつの笑みを浮かべている。


「マーキュアル•シフ••••と•••?」

老人が若いときの自分自身に変身しようと詠唱しようとすると、


「はい!そこまで!」

ハーベルが一瞬で杖を取り上げて、杖の先を老人の口に突っ込んでしゃべれなくしていた。


「ぐっは、ペッ、ペッ、ぺ•••」

老人は呆気にとられて口を拭った。


「お前の考えぐらい分かるよ!」

ハーベルがそう言って、

「マーキュリアル•シフト!」

詠唱すると、老人を老犬に変えてしまった。


「ワン、ワン、ワン•••」

何か訴えているようだが、ハーベルは無視してそのまま出口へと向かった。



次回 逆行と共鳴の世界へようこそ!


続きの気になった方は、

ぜひともブックマークをお願いいたします。

最下部の⭐5もつけていただけると幸いです。

頑張って続きを書いちゃいます!

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