精神の迷宮へようこそ!
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ハーベルたちは、新武器を手に入れて無双しながら、すでに90階層まで来ていた。
「この宿屋で休憩しようぜ!」
ブリッツが疲れた顔でそう言うと、
「ああ、疲れた•••」
ハーベルは泥のようにベッドへ倒れ込んだ。
「お兄さん、食事の準備できたよ!」
ドワーフの女の子が呼びに来た。
「ああ、ありがとう!」
ハーベルが食堂へ降りていくと、
「よお、兄ちゃん!アーティファクトはいくつ持っているんだい!」
「ああ、10種類集めましたよ!」
「おお、優秀だね!90階層ははじめてかい?」
「はい!」
「ほお、かなり優秀だね!こないだなんか、90階層まで来てアーティファクト0種の奴がいたから、驚いたよ!」
「へえ、その人の名前は?」
「確か、レオンとか何とか言ったような!」
「うん、レオン兄ちゃんだよ!」
女の子が皿を洗いながら口を挟んできた。
「それはいつ頃?」
「1ヶ月くらい前かな?でも、そのあと2週間くらいでまた戻ってきて、アーティファクト全部集めたって!」
「そうですか•••」
「アイツも優秀だったんだね!」
「ああ、レオンは優秀さ!」
ハーベルは急いで出かける準備をした。
「ハーベル!もう行くのか?」
ブリッツがすべてを理解したように聞くと、
「ああ!」
ハーベルは決意を胸に立ち上がった。
ハーベル ♂ Lv.90
魔力:1569000
トライアルトークン:3956000
霊獣:カーバンクル(名前:ブリッツ)
魔力:713000
武器:【Ethereal Ember SR99】
魔法属性は、無属性
スキルは、「設定」
魔法属性
光:90 闇:85 炎:83
水:89 風:87 土:79
ジョブ属性
魔:90 剣:79 拳:82
召:86 シ:85 狩:90
武器属性
杖:90 剣:78 ナ:82
書:87 短:80 弓:90
アーティファクト:
【呪われた杖】
【時の砂時計】
【命の泉】
【霧の指輪】
【光のアミュレット】
【真実の花】
【エコーストーン】
【虹色の瞳】
【風のブーツ】
【闇のローブ】
••••••••
ハーベルが91階層の前にいるドワーフに話しかけた。
「試練をお願いします!」
ドワーフが右手を胸に当てて、丁寧にお辞儀をすると、扉が開いた。
91階 精神の迷宮
【光のアミュレット】
ドワーフの説明によると、
「精神の迷宮」は、ハーベルの内なる恐怖や不安と対峙するための試練で、この試練は、ハーベルの精神的な強さを試し、心を制御する力を磨くことを目的としているそうだ。
試練の鍵となるのは、【光のアミュレット】で、このアミュレットはハーベルの内なる光と希望を象徴しているとのことだった。
ちなみに、91階では魔法はすべて禁止となっているため、ブリッツともしばしのお別れだった。
ハーベルが、91階の扉に入ると、そこは今までとは、全く違う雰囲気の空間だった。
「別の空間にあるダンジョンみたいだな!」
ハーベルは【光のアミュレット】を手に、奥へと進んでいった。
中は真っ暗で、手に握る【光のアミュレット】だけが薄暗く輝いていた。
【光のアミュレット】の光は、光っては時折消えかかるといった具合に、ハーベルの精神を反映しているようだった。
ハーベルがある部屋へ入っていくと、大きな鏡が置かれていた。
おもむろに、【光のアミュレット】を鏡に近付けてみると、
急に周りが明るくなり、ゴトンゴトンと聞き覚えのある音が室内に響き渡っていた。
ゴトン、ゴトン、トントントントン、ゴトンゴトンゴトン•••
「この音は、分包機?」
ハーベルは自分の前世の職業である薬剤師の記憶を辿っているようだった。
「君はどう責任を取るつもりだ!」
「はい、申し訳ありません•••」
「謝って済む問題じゃないだろ!」
「申し訳ございません•••」
「何をしてるんだ?」
自分が誰かに怒られているようだった。
「君のミスで会社の信用はガタ落ちだ!責任をとりたまえ!」
「はい、申し訳ございません•••」
ひたすら謝っているようだった。
「いいか、私は何も悪くないんだから責任はすべて君にある!覚悟したまえ!」
「はい•••」
「どうも、大きなミスをして上司に責任を押し付けられているようだな!」
ハーベルは憤っていた。
「そもそも薬局でのミスは、当事者はもちろんだが、責任者である管理薬剤師や薬局を経営している開設者にも責任があるのが当然だ。それを、当事者だけに押し付けるなんてひどすぎる!」
「いいか!君ひとりで謝罪してこい!許して貰えるまで帰って来なくていい!」
「••••」
「そんな、むちゃくちゃな!」
ハーベルは、上司のあとを追った。
「よし、これで少しは懲りるだろ!アイツはいつも、上司にやれ人員を増やせだの、時間がないだの!うるさいんだ!いい気味だ!ふん!」
「なんだコイツ!マジでムカつくな!」
ハーベルは猛烈に腹が立ってきた。
「ああ、あの後、精神的に追い詰められた俺は、自宅のパソコンの前で過労死するんだ•••」
急に涙が溢れて来た。
ハーベルの手に持っていた【光のアミュレット】が強く輝き出した。
「そうだ、ここで怒りに任せて事を起こしても、何もいいことはない!」
ハーベルはそう言うと、
落ち込んでいる自分にこう言った。
「頑張らなくてもいいんだよ!」
「ええ!」
「逃げたくなったら、逃げてもいいんだ!」
「そうなのか•••」
「でも自分の責任を果たさないと!」
「責任感が強いことは、悪いことではないが、必要以上に責任を感じることはない!必要なら、専門家に相談することもできるんだ!」
「専門家か•••」
「こう言うときのために、弁護士と契約もしてるはずだろ?」
「確かに!追い詰められて気がつかなかった•••」
「君は?」
「俺は君だよ!」
「僕?」
薬剤師の自分はなんとなくスッキリした顔になって、早速、電話を手にしていた。
ハーベルの【光のアミュレット】の光がどんどん小さくなって、元の真っ暗なダンジョンへと戻ってきた。
「なかなかハードな試練だな•••」
ハーベルにも思うところがあった。
そのままゆっくりと進んでいくと、
今度は、部屋の中央に大きな机が置いてあり、3冊の本が置いてあった。
「なんか嫌な感じ•••」
ハーベルが恐る恐る本を見てみると、
表紙には、【過去】【現在】【未来】と書かれていた。
「開かないといけないんだろうな•••」
そう言って、【光のアミュレット】を【過去】と書かれている本にかざしてみた。
フワーーと、周りが明るくなると、
ハーベルが子供の頃の様子が写し出された。
「お前なんか来るんじゃね!」
「やめて!」
「やめて!じゃねえよ!キモ!」
「キモくないもん!」
「キモ!マジでこっちくんな!」
そう言って蹴り飛ばされた。
「うう•••」
ハーベルは子供の頃、両親に捨てられて施設へ預けられていた。
学校では当たり前のようにいじめにあい、教師からも見放されていた。
「全く、お前のようなクズは勉強しても無駄なんだ!」
教師が教科書を床へ叩きつけた。
「え•••うう•••」
「くそ!俺の心の奥底の闇を呼び起こすつもりか!」
ハーベルは苦しそうに言った。
「あの頃は•••あの頃は••••」
ハーベルは涙が止まらなかった。
「ああ•••何で、こんな目にあわなきゃならないんだ!俺は悪くないのに!みんなは俺が嫌いなんだ!くそ!」
「あの頃は•••誰かに•••誰?」
急に目の前が開けたように明るくなった。
「誰?」
「ハーベル!」
「誰だっけ?」
「ハーベル!」
「お母さん、お父さん•••」
「ああ•••」
「あれは、両親?」
ハーベルは【光のアミュレット】の光と共に元に戻ってきた。
「【現在】か•••」
【光のアミュレット】が強く光だした。
そこには、一点の闇もなかった。
「ふう、良かった•••最後に【未来】」
ハーベルが本にかざすと、【光のアミュレット】が美しく輝き始めた。
「なんだ!」
眩しそうに目を細めて光の中をよく見てみると、光輝く大きな太陽と白く光る月、そして真っ黒な大きな星が4つ見えていた!
「あれは?」
【光のアミュレット】が再び光だして元に戻ってきた。
「あの4つの真っ黒な星はなんだったんだろ?」
ハーベルは涙を拭きながら言った。
「これは、精神的にキツいわ•••」
ハーベルは暗闇を歩き続けた。
「ブリッツが居てくれたらな•••」
「よっ!ハーベル!」
ブリッツがハーベルの肩に走り乗って来ると出口だった。
「はあ•••」
ハーベルは大きなため息をついた。
次回 魂の試練へようこそ!
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頑張って続きを書いちゃいます!




