イリュージョンの世界へようこそ!
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ハーベルが気がつくと、そこには木々が囁き、小鳥が囀ずる、見たこともない美しい光景が広がっていた。
「天国?」
ハーベルが思わず呟くと、
「エルフの郷だよ!」
「うわ!」
「だから急に出てくるな!」
ハーベルがまたフィエッタにデコピンをした。
「痛いーー!」
フィエッタは不満そうに擦っている。
「ここが、エルフの郷なんだ•••」
そう言ってハーベルがスマホで場所を確認してみると、
「【ルミナラ】からメチャクチャ離れてるけど•••」
「あら、本当!」
フィエッタが覗き込んだ。
「とりあえず、人目のないところにチャンバー•アルチザンで転移所を設置しておくか!」
「オープン!」
ハーベルは木蔭に設置しておいた。
「本当に、綺麗な場所だね!」
「うん」
二人がキョロキョロしながら歩いていると、
「た、助けて!」
エルフらしき男の子がボロボロになって倒れていた。
ハーベルが走りよって、
「レメディア•レストレーション!」
と詠唱すると、みるみる男の子は回復していった。
「あ、あれ?」
男の子がビックリして自分の身体中を触っている。
「ねえ、どうしてボロボロだったの?」
フィエッタが優しく尋ねると、
「ああ、お姉さん、精霊?」
「そうよ、光の大精霊のフィエッタと言うの、こちらはハーベルよ」
そう言って、ハーベルの肩に手を置いた。
「君の名前は?」
「僕は、イシリス!」
「イシリス!何があったんだ?」
「ああーーーー!こんな悠長に話してる場合じゃなかった!」
イシリスが急に声をあげた。
「大変なんだよ!」
「まあ、落ち着いて!」
フィエッタがイシリスの手を優しく握ってあげた。
「う、うん•••」
「大丈夫だから、ゆっくり話してみな!」
ハーベルが少年の目を見て言った。
「うん、いきなり数人の人間がやってきて、訳の分からない言葉で叫びながら襲ってきたんだよ!」
イシリスは泣きじゃくっていた。
「なんてひどいことを!」
「まずは、郷の様子を確認するのが先だ!」
ハーベルはそう言って、イシリスのあとをついて走っていった。
「おじいちゃん!」
イシリスが泣きながら血だらけで倒れている老人のもとへ走りよった。
「お兄ちゃん!僕のおじいちゃんを助けて!」
「分かった!」
ハーベルが老人のもとへ近寄ると、
急にハーベルの手を握って、
「ファクチャル•イリュージョン!」
スッと顔を上げた。
「う、レメディア•ヴェノミスト!」
「遅い!」
ハーベルがその手を振り払うと、
「マリフィス?なぜ•••」
「ハハハ!なんだ幽霊でも見るような顔だな!」
「なぜ、お前がここに?」
ハーベルは動揺が隠しきれなかった。
マリフィス ♂
リバースサーフェス
現実と非現実(現象)
(Factual / Illusion)
「ファクチャル•イリュージョン」
魔法属性は、光、闇、炎、土属性
元の職業は、精神科医
「お前は、レオンに葬られたはず!」
「ハハハ、誰が死んだって?」
マリフィスは、バカにしたように笑いながら言った。
ハーベル ♂
【ルミナラ】の王様
ソーサリーエレメント:光属性
リバースサーフェス
療薬と毒薬(存在)
(Remedia / Venomyst)
「レメディア•ヴェノミスト」
魔法属性は、無属性
元の職業は、薬剤師
「お前は、もう私の術中にはまっている!」
「レメディア•イリュージョン•ブレイカー!」
ハーベルが唱えると、
目の前が急に暗くなり、先ほどの美しい景色とは打って変わって、破壊し尽くされて燃え盛る家々が見えた。
「なんだ、これは!」
ハーベルが叫ぶと、
「くそ、私のリバースサーフェスを破っただと!」
マリフィスは愕然としていた。
「さっきの少年は?」
「何を言っている?これが現実だ!」
マリフィスが楽しそうに言った。
「お前は、本当にクズだな!」
ハーベルがそう言い放つと、
「お兄ちゃん!おじいちゃんを助けてよ!」
「あれ、イシリス!」
ハーベルが気がつくとまたイシリスが目の前にいる。
「ええ、何だよ!」
「レメディア•レストレーション!」
ハーベルはおじいさんを回復した。
「ああ、ありがとうよ!」
ハーベルの腕をつかんで笑っている。
「うわ、マリフィス!」
「くそ、何なんだ!」
ハーベルは何がどうなっているのか分からなくなり、頭を押さえた。
「ハーベル!ハーベル!」
「わあ!」
ハーベルが手を振り払った。
「ハーベル!」
フィエッタが心配そうな顔でハーベルを叩いていた。
「あれ、フィエッタ?」
「ハーベル、急にどうしたの?」
フィエッタは泣きそうな顔をしている。
「マリフィスが!」
「ええ、なにいってるの?マリフィスは死んだんじゃないの?」
「ああ、そのはずだけど、生きてたんだ!」
「ハーベル!」
フィエッタが急にハーベルの頬をひっぱたいた。
「は!」
ハーベルは我に返った。
「俺、今どうなってたんだ?」
「ハーベル!」
フィエッタが抱きついてきて泣いている。
「ハーベル!おかしくなったのかと思ったよ!」
ハーベルの胸を叩いている。
「フィエッタ、ごめん!」
ハーベルがフィエッタを見ると、手が真っ赤に染まっていて、自分の胸から血が吹き出していた。
フィエッタが笑いながら、ハーベルの胸をナイフで何度も突き刺していた。
「ぐふぁ•••」
ハーベルは血を吐いた。
「フィエッタ•••」
ハーベルがフィエッタに手を伸ばすと、
「どうだった?」
マリフィスが顔を近付けて尋ねてきた。
「ぐふぁ•••マ、マリフィス•••」
ハーベルは血まみれになりながら、マリフィスを掴もうとするが、手は届かなかった。
バタッ••••
ハーベルは倒れて動けなくなった。
「こいつも大したことないな!」
マリフィスがそう吐き捨てると、止めを刺そうと剣を抜いた。
「ご苦労さん!」
ハーベルを剣が貫いた。
•••••••
「あれ、俺、もしかして死んだ?」
ハーベルは真っ白な空間にいた。
「ハーベル!」
「誰?」
「ハーベル!ハーベル!」
「どこから?」
ハーベルがふらふらと歩いていると、目の前に大きな龍が横たわっていた。
「ハーベル!」
「俺を呼んでいたのはあなたですか?」
「ああ、我はカーラム!」
「はあ•••」
ハーベルは呆けていた。
「我は、臥竜と冥竜の父だ!」
「え、メイのお父さん?」
「1000年以上前に魔神龍のニキサーに殺された•••」
「魔神龍•••」
「臥竜と冥竜の面倒をみてくれて、感謝しておる!」
「はい、でも死んでしまったようなので、もう会えませんが•••」
「ハーベルよ、お前はまだ死んではおらん!」
「ええ、でも?」
「我が一度だけお前を助けてやろう!我が子のお礼だ!」
「カーラム様!」
ハーベルはそのまま気を失ってしまった。
•••••••
「ハーベル!ハーベル!」
血まみれのハーベルをフィエッタとメイが泣きながら揺り動かしていた。
「ああ!」
「わあ!」
ハーベルが、急に息を大きく吸って起き上がった。
「もう、びっくりした!バカ!」
フィエッタがハーベルに抱きついた。
「もう何が現実か分からないよ•••」
「ハーベル!」
メイも抱きついた。
•••••••
ハーベルは体験したことを二人に説明した。
「そうか、お父様が•••」
メイは涙を浮かべながら空を見上げた。
「メイ、ありがとう!」
「お礼は、お父様に言ってあげて•••」
「ああ、ありがとうございます」
ハーベルは天を仰いで言った。
「それにしても、フィエッタが俺の胸をグサグサ刺してきたときには終わったと思ったよ」
「私、そんなことしてないよ!」
フィエッタが泣きながら怒っている。
「分かってるよ、マリフィスの能力なのは•••何が現実で何が非現実なのか分からずに気が狂いそうだったよ•••」
ハーベルは思い出しただけでもおかしくなりそうだった。
「結局、何が本当なんだ?」
ハーベルが不思議そうに聞いた。
フィエッタの話によると、
井戸に引きずり込まれて、ハーベルとフィエッタとメイだけがこちらに転移してきたらしい。
そこからハーベルの行動がメチャクチャになって、訳が分からない状況だったようだ。
「じゃあ、イシリスやおじいさんも本当はいなかったのか?」
「いいえ、いるわよ!」
「ええ?」
フィエッタが少し先の丘の上で休んでいる二人を指差した。
「早く言ってよ!」
ハーベルが走り出した。
「イシリス!」
「ああ、お兄さん、おじいちゃんを助けてくれてありがとう!」
「イシリス!郷は大丈夫なのか?」
イシリスは暗い顔になって首を横に振った。
「ハーベル!どうしたの?」
「フィエッタ!大変なんだ、エルフの郷が襲われたんだよ!」
「ええ、なんで•••」
「おそらく、マリフィスの仕業だ!」
ハーベルは怒りが込み上げてきた。
ハーベルが全員の肩に腕を回すと、
一瞬で郷の入り口まで飛んだ。
「なんだこれは!」
次回 救急搬送の世界へようこそ!
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頑張って続きを書いちゃいます!




