The day before Act.1 『始動』
The day before Act.1 『始動』
西暦2741年某日
その昔、人類は地球と呼ばれる、唯一生命が生きていたとされる惑星に住んでいた。
そしてその年地球から、無数の宇宙船が発射された。宇宙船には、地球の人口の半数が乗っていた。そして、残りの半分は、地球と共に滅び行くことを選んだ。
そう、地球の環境は脆くも儚く、およそ900年にも及んだ人類の環境破壊行為に耐えられなくなったのだ。そして発達した科学力を以ってしても、その環境が元に戻ることはなかった。
宇宙船は様々な銀河を彷徨い、ある星系を見つけた。―――それが、新星系『中央星系』、私たちが今住んでいる場所である。
人々の大半は、地球によく似た『緑星』に住むことを決めた。そこには地球にも似た、豊かな自然と恵まれた気候があった。
『中央星系』には、他にも『炎星』『光星』『影星』などがあり、それぞれとても恵まれた資材がある。人類はその資材を元手に、新たな歴史を紡ぎだしていったのだ。
少女は本を閉じ、退屈そうに欠伸をした。
少女の髪は黒く長い。腰まで届きそうだった。瞳は琥珀色。顔は美しく、目鼻立ちが調っている。おそらく10代後半。着ている服は、紺色のワンピース。袖口や裾にレースがついている。
何処かの御令嬢を思わせる、可憐な少女だ。
少女は椅子から降りると、静かに窓に近づいた。カーテンは閉じており、室内を暗くする一因としていた。
「お嬢様、この依頼を受けるのですか?」
年老いた優しげな男は、少女に向かってそう言った。その声は、心なしか震えている。
男は心配しているのだ。この少女が暴走してしまうのではないか、と。
少女はカーテンを勢いよく開けると、男のほうに振り向いた。その顔には、不敵な笑みが浮んでいる。その笑壷に男は戦慄した。
「ええ、勿論よ。頼まれたことをするのが、私の仕事。だから、この依頼も受けるわ」
窓の外には、平和な森が広がっている。その平和さを恨めしく思う男の気持ちなど、この少女には知れているはずである。
「…そうですか」
男は諦めたようにそう言うと、黙って部屋を出た。その手には、部屋にいる少女宛の、赤い蝋で封をされていた封筒が握られている。開封されていて、中身は空だ。
男には、少女がこれからする『仕事』の内容が知らされている。
それはこの少女にしか出来ないであろうこと。精神面でも、技術面でも。
少女がこれからする『仕事』は―――
未来って、なんでしょう?今と変わらないかもしれません。
……なんか哲学的な言葉ですが、深い意味は有りません。
たまに考えませんか?10年後とか。
その10年後にも、今と同じように子供とかがいるわけですよね。
じゃあ、3400年後にだって、少女はいるわけです。
今よりも科学が発展してても、きっと人間の心は変わらないと思います。
これは未来モノお話で、科学じゃ証明できない力が出てくるけれど、彼らの日常はきっと今の私たちと同じだと思うんです。
……では,次のお話で会いましょう.