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気付く想い

 引きこもり始めて、食事も取らず怖くて眠ることもできない日々が続いていく。

 眠るのは限界が来て気絶するように。

 食事は水を飲むだけ。


 コンコン。

 わたしの部屋のドアを叩く音が聞こえ、わたしはすぐにベットへと逃げた。


「クレア、大丈夫?」

「レオミナ……」


 わたしは小さな声で相手の名前を呼んだ。

 レオミナで良かったと心の底から安心した。


「中に入れてとは言わないから、少しお話ししましょう」

「……うん……」


 前みたいに元気のいい返事はできない。

 それほどわたしの心は衰弱していた。


「いじめられてたんでしょ」

「違うよ、わたしが悪かったから……」


 そう、わたしが身分を考えずにいたから、それがいけなかった。

 アイリックはこの国の王子で、わたしは貴族の中でも底辺の男爵令嬢。


「アイリック様が心配されてたわよ」

「アイリックが……?」

「ええ、私に手紙を書いて相談してきた。とても心配してたわ」


 アイリック、ほんとに心配してくれてたんだ。

 わたしはアイリックを避けていたのに。

 自分が酷い目に遭いたくないから逃げていたのに。

 アイリックに対して酷いことをしたのに。


「久しぶりにクレアの顔が見たいんだって。一緒に行かない?」

「嫌だっ! また酷いことされる。もう傷つけられるのは嫌なの!」


 わたしは大きな声でレオミナに怒鳴るように言ってしまった。

 自分が傷つきたくないから他の人を傷つけてしまう。


「ごめん……」

「別にいいわよ。今まで散々迷惑かけられてきたんだから、今更そんなこと言われてもどうってことないわよ」

「……ありがと、レオミナ」


 レオミナは優しい、ほんとにとってもとっても優しい。

 わたしが酷いことを言ったのにそれを受け止めてくれる。


「それでアイリック様のとこに行く?」

「……」


 わたしは黙り込んでしまった。


 だって自分が傷つくことが嫌だから。

 それにまたアイリックを傷つけてしまうかもしれない。

 傷つけたアイリックと会うことがとても怖い。


「アイリック様が言ってたよ。自分のせいでクレアを傷つけたのなら謝りたいって」


 なんで……。

 傷つけたのはわたしの方なのに。

 わたしが謝らなくちゃいけないのに。


「わたし、これ以上、アイリックを傷つけたくないよ」

「どうして傷つけたくないの?」

「だってアイリックはわたしの友達だから」

「本当にそれだけ?」


 レオミナが言った意味がよく分からない。


「友達相手なら誰にだってそうなるの?」

「それは分からないけど、アイリックは大切な人だから」

「その大切ってどういう意味?」


 アイリックに対しての大切の意味?


 アイリックは昔から優しくて、少し弱虫な所もあったけど今は頑張って治して、勉強も運動もできて、かっこよくて、人気者で、みんなから好かれてて、わたしも好きで……。


 わたしも好き。

 ううん、わたしはアイリックのことが好きなんだ。


 でも……。


「わたし、アイリックが好き」

「ふふ、そうよね。じゃあその思い伝えなくていいの?」

「アイリックには好きな人がいるみたいだから」

「はぁー。まあアイリック様に思いを伝えるのは自由なんじゃない? いつものクレアなら後先考えず言うと思うよ」


 後先考えずって、なんか意地悪言われているような気がするけど。

 でもそうだよね、わたしならそうするよ。


「だけど伝える前に、カナレさん達に言わなくちゃ、わたしがアイリックを好きだってこと」

「そうね。なら噴水のある広場に来なさい。私がその子達を呼んでおいてあげるから。その間に準備しなさい」

「うん! ありがと、レオミナ。大好きだよ」

「それはアイリック様にいう台詞でしょ」

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