限界を迎え
「アイリック!」
「クレア、どうしたんだ?」
朝、学園でアイリックを見つけたのでわたしは話しかけに行った。
「今日の早朝にレオミナが行っちゃったから、一ヶ月間ずーっとアイリックと一緒にいようと思ったの」
「ず、ずっと?」
「うん! ずっと」
「そ、そうか。それは嬉しいな」
「わたしも嬉しいよ」
アイリックは少し照れていたけれど、嬉しいということを素直に伝えてくれた。
素直に気持ちを伝えてくれるのはとても好き。
「アイリック様、クレアさん、ご機嫌麗しゅうございます」
「あっ、昨日の……」
「カナレと申します、アイリック様。ちょっとクレアさんに用事があったので、お借りしてもよろしいでしょうか?」
用事ってなんだろう?
なんか重要なことなのかな。
「オレは構わないが」
「ちょっと行ってくるよ。じゃあまた後でね、アイリック」
「ああ、教室で」
わたしはちょっとした間の別れの挨拶をして、カナレさんの行く方へとついていった。
カナレさんの歩くスピードは少し早くて、わたしは小走りで追いつこうとする。
どこに行ってるのかな。
だんだん校舎から離れていってる気がするんだけど。
「ここは?」
「皆さん、やっていいわよ」
カナレさんが誰かにそう言うと、数人の女の子から水をかけられた。
「冷たっ、なに? どういうこと?」
「アイリック様に近づくんじゃないわよ。次近づいたらもっと酷い目にw合わせるんだから」
「え……?」
そう言い残し、カナレさんと他の女の子達は行ってしまった。
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その宣言通り、わたしがアイリックに近づいた日は水をかけられたりご飯にゴミを混ぜられたりと、様々な酷いことをしてきた。
制服を濡らされた日は学園に行けず、学園に行けても教科書に悪口を書かれていたり破り捨てられていたりした。
最初の頃は我慢できていたけれど、日が経つごとに学園にいくことがカナレさん達に会うことが、そしてアイリックと喋ることが怖くなった。
「クレア、なんか最近元気がないね? どうかした?」
「ごめんなさい、アイリック様に心配させてしまって。わたしは用事があるのでこれで」
「クレア、どうして……」
アイリックと話すと酷い目に遭わされる
アイリックを呼び捨てするともっと酷い目に遭わされる。
だからアイリックと距離を置き、極力関わらないようにしていった。
話しかけられれば謝り逃げる。
でも三週間ほど経った日。
アイリックが話しかけてきても、アイリック様と呼んでも、酷い目に遭わされた。
「ああ、もう無理……」
とうとうわたしは限界を迎え、部屋へと閉じこもるようになった。