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なろうラジオ大賞3

スクランブル交差点の怪

掲載日:2021/12/02

 スクランブル交差点に異形の存在が現れると聞いたので、友達から見に行ってみようと誘われた。


 あまり気ノリはしないのだが……彼女の誘いを断れなかった。

 たった一人の友達なので。


 早速、出向いたスクランブル交差点。

 他の人と一緒に並んで、信号が切り替わるのを待つ。


「いるよー! ほら、いるいる!」


 彼女がはす向かいの歩道を指さす。

 明らかに普通ではない存在が一人。


 身長は軽く2mを越え、赤いマントを羽織り、顔にはペスト医師の仮面。


「あれ……明らかにアレなやつだよねぇ」


 私の腕に絡みついた彼女が言う。

 暑いから引っ付かないでくれるかな。


 そうこうしているうちに信号が切り替わる。


 一斉に歩き出す人々。

 私たちも足並みを揃えて前へ。


 目指すは異形の存在がいる方角。

 向こうもこちらの方へ歩いてくる。


 あと数メートルの所まで近づいて来た。

 お願いだから何も起きないでと、今更ながらに思う。


 そして、すれ違っ――


「お嬢さん、落とし物ですよ」

「ひゃぃっ⁉」


 後ろから服を引っ張られて変な声を出してしまう。

 振り返ると小柄なおばあさんが立っていた。


「これ……もう落とさないでね」

「え? ちょ、待って」


 おばあさんは無理やり小さなものを私の手に握らせてきた。

 そのまま人ごみの中へと消えて行く。


「ねぇ! 信号変わっちゃうよぉー!」


 私を置いて先に道路を渡り切った彼女が歩道で手を振っている。

 急いで信号が切り替わる前に彼女の元へ。


「ねぇ……急にどうしたの?」

「えっと、なんかおばあさんに変なものを渡されて……」

「変なもの?」

「うん……これ……え?」


 それの正体に目を疑う。

 幼いころに無くした子供用の財布だった。


 中には小さなキャラクターの人形が入っている。

 片時も離さずに持ち歩いていた、お気に入りのもの。


 間違いなく、これは私の財布だ。


「それ、なんなの?」

「昔使ってた財布だよ。

 ずっと前に子供の頃になくしたの。

 でも、どうしてあのおばあさんが……」

「いろんな人が行き交う場所だから、

 不思議なことも起こるのかもね」


 彼女はそう言ってウィンクする。


 あのおばあさんは何者なのか。

 どうして昔無くした財布を渡してきたのか。

 私には分からない。


「そう言えば、さっきの変な格好をした人は?」

「道路の向こうで警察の人に職務質問されてるよー」

「…………」


 奇妙な存在が、奇妙な格好をしているとは限らない。

 彼らは普段ありふれた姿で過ごしているのかもしれない。


 私たちに気づかれないために――

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― 新着の感想 ―
[良い点] いかにもヤバそうなペストマスクの怪人は、普通の人だったんですね。 「いかにも怪しそうな人はミスリードで、本命は意外な目立たない人」という、探偵物に通じるロジックですね。 見かけだけで人を判…
[良い点] なろうラジオ大賞3から拝読させていただきました。 本当の異形の者は普通の形をしている のかも。 深いお話でした。
[良い点] 原宿、渋谷だったら変な格好も変ではないかもしれないですね。 たしかに本当にやばいやつは、普段はいたって真面目な感じだったりします。 ソフトに「油断するなよ」と注意喚起をするような物語ですね…
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