表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 僕は……  作者: イナカのネズミ
99/187

〜 フランス・ノルマンディーの休日 ⑦ 〜

〜 フランス・ノルマンディーの休日 ⑦ 〜




 僕は、メリッサとル・マンの街を歩いている。


 ホテルを早めに出て、立ち寄りついでにル・マンの街を半日観光する予定なのである。


 フランスのル・マンと言ば"24時間耐久レース"で世界的に有名な都市である。

 それが縁で同じレース場のある日本の鈴鹿市と姉妹都市提携を結んでいる。



 メリッサの機嫌は朝に比べれば幾分か良くなったとは言えいつもりよりは機嫌は悪い。

 その理由は言うまでもない……。


 「あの〜メリッサ……」

 「何か食べたいものある?」

 四つ星ホテルとは言え飛び込み客の素泊まりなので食事付きではないのである。


 「……」

 メリッサは無言で僕の方をジロリと見る。

 「そうね……あの店でいいわ」

 メリッサは通りの反対側の店を指差す。


 「わかった、あの店で朝食を食べよう」

 僕はそう言うと横断歩道を探す。



 フランス人は飲酒運転にスピード違反は平気でするのですが不思議な事に横断歩道の前では信号機が無くても歩行者がいればほぼ必ず止まってくれます。

 ここら辺は何処かの国とは大違いです。


 因みにオランダは非常に厳しくスピード違反すると知らない間に監視カメラで撮られて後で何万円も罰金を取られる事があります。



 横断歩道を渡りメリッサの指差した店に入る。

 店に入りテーブルに座るとメリッサに"リエット"と言う豚肉を煮込んでペースト状にした物を勧められる。


 メリッサ云く、エリットはフランスの国民食でありフランス国内ではル・マンの名物のようである。

 コレをフランスパンにバターのように塗って食べるのだそうだ。


 「ル・マンに来たんだからコレを食べないとね……」

 メリッサはそう言ってフランスパンにリエットを塗り野菜を乗せて口に運ぶ。

 「んーーっ!美味しいーーっ!」

 「やっぱり、豚のリエットはル・マンが1番ね」

 メリッサは美味しそうに食べているのであった。


 僕も食べたのだメリッサの機嫌の事が気掛かりでよく味を覚えてはいない……


 食事を終えるとメリッサの機嫌は良くなっていた。

 いつも通りのメリッサに僕はホッと胸を撫で下ろす。


 「メリッサはリエットが好物なの?」

 僕がメリッサに尋ねる。


 「そうよ、サンドイッチにしたりするの」

 「豚肉のがスタンダードだけど、その地方でいっぱい種類があるのよ」

 「アヒルとかジビエ、魚介なんかもあるわよ」

 「味付けも塩と胡椒がスタンダードだけどハーブやお酒なんかで味付けした物もあるわ」

 メリッサは楽しそうに僕に教えてくる。

 メリッサのエリットへの愛が感じられるのであった。


 「今度は、そのサンドイッチを食べてみたいな」

 僕がそう言うとメリッサはニッコリと笑う。


 「そうね……私も食べたいし……」

 「今日のランチはそれで決定ね」

 メリッサほそう言うと僕も笑って同意するのだが……

 "Ce que je veux manger, c'est..."

 "C'est toi pourtant..."

 (私が食べたいのは……)

 (貴方なんだけど……)

 その後でメリッサが無意識に小さな声で呟いた心の声が僕の耳に入る。


 僕は聞こえなかったフリをして何も言わずに黙って歩くのであった。



 今日はル・マンの旧市街を歩いて周る予定である。


 旧市街はサンジュリアン大聖堂の周囲に広がる古代から中世の街並みがそのまま残っている地区です。

 古い石造りの建物や木組みの可愛い家が軒を並べ河岸には保存状態の良い古代ローマ浴場や城壁が残っています。


 因みに、僕は車には全く興味がないのでル・マン博物館などには眼中に無い。



 城壁前の駐車場に車を停めて旧市街へと向かう。


 フランス人にも人気の観光地なので観光客は思った以上に多い。

 時おり休憩をとりながら半日歩き回る。

 中世ヨーロッパのリアルゲームの世界に感動する僕とは違いメリッサはどちらかと言うと退屈そうであった。

 

 昼前になるとメリッサが知っていると言う店にサンドイッチを買いに行く。

 「早く行かないと閉まちゃうわ」

 メリッサは少し焦っているようである。

 フランスの殆どのお店は1時から休憩時間になり閉店するからである。

 ここら辺はお国柄と言うやつである。


 何とか間に合ってサンドイッチをゲットする。

 近くの公園でのんびりと食べるのであった。


 昼食のサンドイッチを食べ終わった後、お土産のエリットを買い込んで帰路に着く。


 ル・マンからオルヌ県のオーベルジュまで1時間30分ほどである。

 少し早めに出たので渋滞に遭う事なくスムーズに帰り着くのであった。


 ル・マンと言う街は僕が思っていたよりも遥かに良い街であった。

 アクシデントが無かったらこの街には来なかっただろうから今回だけ 

アクシデントに素直に感謝である。



 オーベルジュに着いたのは午後5時前であった。


 オーベルジュのオーナーのおばさんに挨拶をして部屋に戻る。

 

 夕食は7時ぐらいからなので2時間は時間がある。

 メリッサは部屋に入るとベッドに寝転がり大きな伸びをする。


 「お疲れ様、運転ありがとう」

 僕がお礼を言うとメリッサはニッコリと笑う。


 「いろいろとアクシデントもあったけど……」

 「楽しかったわよ」

 「ル・マンで泊まったホテルは最高だったわ……」

 メリッサはそう言うと僕の方を恨めしそうにジロリと見る。


 "うっ!まだ恨に持ってるっ!"

 メリッサが考えている事が手に取るようにわかる僕であった。


 だが、メリッサも疲れているのは確かのようでそのままうたた寝を始めると寝てしまうのであった。


 僕もメリッサの隣に寝転がりそのままうたた寝を始めるといつの間にか眠りに就いているのであった。


 目が覚めると時計の針は6時30分を指している。

 メリッサはまだ寝ている。

 僕はメリッサを起こさないようにゆっくりと起き上がりベッドから出る。


 喉が渇いているので冷蔵庫の中のミネラルウォーターを取ろうと冷蔵庫のドアを開けると……


 "なんだコレ……?"

 冷蔵庫の中に入れた覚えのない瓶が3本入っている。

 僕はその内の一本を手に取る。

 "メリッサ……いつの間に……"

 僕が手にした瓶はロワール産の白ワインの詰まった瓶であった。


 そう、メリッサは僕の知らない間にこっそりとワインを3本も買って知らない間に冷蔵庫に入れていたのである。

 "メリッサ……"

 "ル・マンでリエットを買い込んだのはこのためなんだね……"

 僕は心の中で呆れたように呟くと爆睡しているメリッサの方を見るのであった。


 "なんか……とんでもない人を……"

 "好きになってしまったような気がする……"

 やや大きめの寝息をたてながら爆睡するメリッサを横目に呟く僕であった。




 〜 フランス・ノルマンディーの休日 ⑦ 〜


 終わり

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ