〜 フランス・ノルマンディーの休日 ③ 〜
〜 フランス・ノルマンディーの休日 ③ 〜
ブイヨンでの一件の後、メリッサはどうも少し元気が無いような気がする。
"少し、言い過ぎたかな……"
元気の無いメリッサの様子に僕は反省する。
「昨日は……ごめん……言いすぎたよ」
僕が謝るとメリッサは不思議そうな表情になる。
「えっ、何の事?」
メリッサは僕がどうして謝っているのかわからないようである。
「昨日、飲酒運転の事で……」
「僕がいい過ぎたから元気が無いような気がして……」
僕が訳を話し始めるとメリッサは"ああっ"と言うと表情になのだが……
暫く何かを考えて悩んでる。
「違うのよ……カネツグ……」
「その……あの……」
メリッサは何かを話そうか話さないかを悩んでいる。
「どうしたのメリッサ……」
「何か変だよ?」
僕は心配そうに言うと……
「きちゃったのよ……」
メリッサは小さな声で困ったように言う。
「?」
「来た?何の事?」
僕には何が何だかわからない。
何とも言えない沈黙の時間が流れる。
「あっ!」
暫くして、ようやく僕にもメリッサの言っている事がわかる。
「そう……なんだ……」
「僕はてっきり昨日の事が原因だと……」
「大丈夫?」
僕はメリッサに体の具合を尋ねる。
「病気じゃないから心配ないんだけど……」
「私の場合は2〜3日は凄く辛いのよ」
メリッサは申し訳なさそうに言う。
「だったら、一週間はここでゆっくりと過ごそうよ」
「ここはフランス、バカンスなんだから」
「フランス流にのんびり気楽に過ごそう」
そして、僕は少し落ち込んでいるメリッサに日本語で諺の事を話す。
「日本では"郷に入っては郷に従え“って諺があるんだよ」
僕はニッコリと笑って言う。
「一週間って、そんなにのんびりしてていいの?」
メリッサは心配そうに僕に尋ねる。
「大丈夫だよ、いざとなればもう一週間、延長するよ」
「それより、食事の方は大丈夫なの?」
「何なら、おばさんに頼んで……」
僕が食事の事をメリッサに尋ねようとすると……
「食べたり飲んだりするのは大丈夫なんだけど……」
メリッサはそう言うと少しもじもじしている。
「あの……その……夜の方が……」
メリッサは小さな声で恥ずかしそうに言う。
「えっ……夜……」
僕は暫くしてからメリッサの言っている事に気付く。
「まっ、まぁそれは仕方がないんじゃない……かな……」
「一週間は禁欲生活って事で……」
僕は少しメリッサから視線を逸らして言う。
「……」
僕とメリッサは無言になり何とも言えない重苦しい空気に包まれる。
「そっそれより、さっき言ってた……」
「……"郷に入っては郷に従え"ってどう言う事なの?」
メリッサは重苦しい空気を薙ぎ払うかのように僕に尋ねてくる。
僕が諺の意味を説明するとメリッサはニッコリと笑うのであった。
僕は、部屋を出るとオーベルジュのオーナーのおばさんの所へ向かう。
おばさんに訳を話して一週間分の食事を用意してもらう事にする。
延泊の事も尋ねてみたのだが既に予約が入っているそうで応じられないそうである。
代わりにおばさんの知り合いの経営しているオーベルジュを紹介してもらう事ができた。
早速、おばさんに連絡してもらい宿を確保する。
僕はおばさんにお礼を言うと部屋へと戻るのであった。
「メリッサ、他の宿を取る事ができたよ」
「それと、食事の事も頼んであるから」
僕はそう言うとメリッサは少し申し訳なさそうである。
「カネツグ、その……大丈夫なの?」
「その……予算とか……」
どうやらメリッサは金銭的な事を心配しているようである。
"メリッサには最低限の事は話しておかないと"
僕は契約事項に反しない程度でIT企業との契約の事を話す。
「それ、本当なの……」
メリッサは相当に驚いたようである。
「凄いね、在学中にビジネスで成功するなんて」
「流石はスタンフォード大学ってとこかしら」
メリッサは心底感心しているようである。
「そんな事はないよ、運が良かっただけだよ」
僕がそう言うとメリッサは少し微笑む。
「運も実力の一つなのよ」
「カネツグにはそれがあるって事よ」
メリッサはそう言うと小さなため息を吐く。
"私も負けてはいられないわね"
メリッサは心の中で何かを決心したように呟くのであった。
この日の出来事が後にメリッサ・ベルナールを大きく飛躍させる事になるのである。
その日から一週間はオーベルジュとその周辺でメリッサと共にのんびりとした時間を過ごす事になるのである。
このフランスのノルマンディー での夏の休日は僕にとって最も思い出深い日々となるのである。
〜 フランス・ノルマンディーの休日 ③ 〜
終わり




