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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 フランス・ノルマンディーの休日 ① 〜

〜 フランス・ノルマンディーの休日 ① 〜



 僕はゆっくりと目を開けると辺りを見廻す。


 部屋の壁にかけられた時計の針は午前7時前を指している。


 「朝……か……」

 僕は呟くように言うとゆっくりとベッドから身を起こす。

 "……やっぱり…夢じゃない……"

 僕の隣で寝ているメリッサを見て心の中で呟く。


 「確か8時から朝食だったな」

 僕はメリッサを起こさないようにゆっくりとベッドから出ると服を着る。

 「まだ、間に合うかなぁ」

 僕は部屋を出て母屋の方へ行き玄関のインターホンを押す。


 暫くするとおばさんが出てくる。


 「朝早くから申し訳ないのですが……」

 「朝食をもう1人分、追加していただけないでしょうか?」

 僕が申し訳なさそうに言うとおばさんはニッと笑うと頷く。


 「彼女さんの分ね……」

 おばさんはそう言うと僕の顔をジッと見る。

 「朝起きたら庭に車が止まったままだったから……」

 「彼女さん、昨日は帰らなかったんだね……」

 「あの部屋は元から貸し切りの2人部屋だから……」

 「気にする事はないよ」

 「追加で部屋代を払う必要もないからね」

 おばさんはそう言うと優しそうな表情をするのだが……

 「食事の追加は今日の分だけでいいのかい?」

 おばさんはそう言うと何か意味ありげにニヤリとする。


 「えっ!あのっ!」

 慌てる僕の様子を見ておばさんは何故か楽しそうである。


 "もっ、もしかして昨日の夜の事がバレバレなのでは……"

 僕は考えただけで顔が熱くなってくる。

 「とりあえず……今日の分だけでいいです……」

 僕はそう言うとそそくさと部屋に戻るのであった。



 部屋に戻るとメリッサはまだ寝ていたがすぐに目を覚ます。

 「あっ……カネツグ……おはよう……」

 寝起きのメリッサは髪の毛がボサボサで目も腫れぼったい。


 「起きた、朝食用意してもらうように言ってきたよ」

 僕がそう言うとメリッサはベッドから僕の方に手を伸ばす。

 僕が手を差し伸べるとその手を掴んで起き上がり優しくキスをしてくれる。


 寝起きのメリッサは、以前の時と同じようにボサボサの髪の毛や腫れぼったい目をしているが気にする様子は全く無い。


 寧ろ、僕の目には窓から差し込む朝日を浴びたメリッサの金髪は金色に輝きその裸体は女神の彫刻像のように写るのであった。

 

 「昨日はその……」

 僕が恥ずかしそうに言うとメリッサの顔が赤くなる。


 「まっ!まぁそれはっ!それで……」

 メリッサは少し慌てながらベッドから出るとそそくさと服を着る。


 「朝食、食べたら出る?」

 服を着終えたメリッサは話題を逸らすかのように今日の予定を尋ねてくる。


 「今日は……メリッサの実家の周りを案内してよ」

 「観光は明日からでいいよ」

 「時間はあるんだから……」

 僕がそう言うとメリッサは微笑んで頷くのであった。



 メリッサと一緒に朝食を食べる。


 トゥルグルと言う米とミルクを煮込んでオーブンで焼いたクリーム状の物とパンにハム、それに家庭菜園の野菜のサラダ、シコレと言うコーヒーだった。


 朝食を食べている時の僕とメリッサを見るおばさんの視線がとても気になる僕であった。


 朝食を食べ終わるとメリッサの運転する車に乗っていろいろな場所を廻る。


 昼食はメリッサお勧めの地元の家庭料理を食べた。

 仔牛のシチューにパン、ホクホクのポテトとチーズ、それにサラダである。


 メリッサに車を出してもらっているので食事代は全て僕が支払っている。

 メリッサは僕が支払ってくれる事に少し抵抗があるようだがそのぐらいはしないと僕の気が収まらないのである。



 昼食の後で行った聞いた事もない中世のお城はなかなか良かった。

 幼いメリッサが良く遊んだと言う丘や川にも行った子供の頃のメリッサが遊ぶ姿が目に浮かぶようだった。

 その日は僕だけのための特別な観光であった。


 あっと言う間に日が傾き夕暮れになる。

 夕食もメリッサお勧め店で食べる事にする。

 とても美味しいかったのだが……

 メインディッシュのメニュー表示が強烈過ぎた。

 "窒息鴨のロースト、血のソース添え"と言う物騒な名前である。


 夕食を食べ終えるとメリッサは僕をオーベルジュまで送り今度はそのまま帰って行くのであった。


 流石に年頃の娘さんが2日も帰らないと心配するだろうから……と僕は思っていたのだが……

 本当は車のガソリンが残り少なくなったので少し離れたガソリンスタンドに給油に行っただけである。

 田舎なので少し離れていると言っても往復30分はかかるのである。


 それと着替えを実家に取りに行ったのである。

 流石に3日も同じ服、同じ下着ではいられないからである。


 車に給油を済ませて自宅に帰ったメリッサが翌日の朝に着替えの詰まったカバンを抱えて家を出ようとした時に母のリアーヌから何を聞かれたのか言うまでもない。


 

 僕はと言うと、宿に帰るとおばさんが出迎えてくれる。

 「おや?彼女さんは?」

 おばさんはメリッサの姿がない事に驚いている。


 「今日は実家に帰るそうです」

 僕がそう言うとおばさんは心配そうな表情になる。


 「そうなのかい……」

 おばさんはそう言うと今度は寂しそうな表情になる。

 それには理由があった、バカンス中この状況で彼女が実家に帰るなど普通はあり得ないからである。

 要するにおばさんは僕とメリッサの関係が破綻したと思ったのである。

 「元気をお出し……」

 「世の中の人間の半分は女なんだからね……」

 おばさんはそう言うと僕の頬にそっとキスをするのであった。


 いきなり慰めの言葉をかけられて頬にキスされた僕は暫くの間、呆然とその場に立ち尽くすのであった。


 後日、その話を聞いたメリッサは笑い死にしそうになるのであった。



 これからの2週間、僕とメリッサは同じ時間を過ごす事になる。

 僕にとっては何もかもが初めてであり……

 生まれ育った環境と文化等等……その違いを実感する機会となるのである。


 初日から僕にとって予想外の展開で始まるフランス・ノルマンディーの休日であった。




 〜 フランス・ノルマンディーの休日 ① 〜



   終わり


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