〜 リンダ・ロレンソ ④ 〜
〜 リンダ・ロレンソ ④ 〜
"何で……"
僕は心の中で茫然と呟く。
窓の外には晴れ渡り雲一つない大空と広大な大地が果てしなく広がっている。
僕は今、高度40000feet(12000メートル)上空を時速550マイル(900km)でビジネスジェットに乗って飛んでいるのである。
目的はテキサス州ヒューストンである。
スタンフォード大学のあるサンフランシスコから直線距離で約1600マイル(2600km)で飛行時間約3時間のフライトである。
因みに、北海道から沖縄までの距離が約3000kmである。
軽い気持ちで朝の8時に待ち合わせの場所に行くと、いきなりタクシーには乗せらて空港へそして訳のわからないままこの飛行機に乗せられ……
僕は、財布と携帯電話しか持ってない状態でジェット機でテキサスに向かっているのである。
もはや、強制連行や拉致誘拐に近いと言える。
僕の隣の席には主犯格のボリスが申し訳なさそうな顔をして座っている。
「すまない……カネツグ君……」
ボリスは僕に謝罪すると事情を話してくれた。
どうやら、リンダの父親が僕に会いたがっているようである。
リンダがいつまで経っても僕を家に連れて来ないので痺れを切らしてボリスに連れてくるように頼んだそうである。
「事情はわかりましたが……」
「少し強引なのでは……」
僕は少し抗議するように言うとボリスは返す言葉もないように頷く。
「それに、どうして僕がリンダさんのお父さんと……」
「会わないといけないのか、その理由がわかりません」
僕が疑問に思う事をボリスに尋ねる。
「それは……君がリンダの……」
「その……何と言うか……」
ボリスは返答に困っていたようだが……
「それは、君がリンダの恋人になるかも知れないからだ……」
ボリスは言いにくそうに答える。
「えっ!どう言う事ですか?」
全く心当たりの無い僕は慌ててボリスに問い返す。
「まぁ、そのなんだ……」
「リンダの親父が心配症でな……」
「最近、リンダに好きな男ができたと知って……」
「是非とも会いたいと言い出して……」
「で……こうなったわけだ……」
僕にはボリスの言っている事が全くわからない。
「あの〜僕はリンダさんとは……」
「そう言う関係ではないのですが……」
「リンダのお父さんは何か勘違いしておられるのではないのでしょうか?」
僕は本当に心当たりがないのでボリスに何かの間違いではないかと尋ねるのだが……
「ああ……わかってる……」
「わかっているんだが……」
「でもな……とりあえず……」
「会ってやってほしいんだ」
ボリスはそう言うと額に手を当てて彫刻家ロダンの"苦悩する人"のようなポーズで大きなため息を吐く。
「あの〜言い難いのですが……」
「リンダの親父さんて……その……」
「かなり"面倒なお人"なのでは……」
僕はボリスに恐る恐る尋ねる。
「……君は察しがいいようだな……」
「その通りだ……」
ボリスはそう言うと疲れたような笑顔を僕に見せた。
「そうですか……」
「ボリスさんも……その……大変ですね」
「わかりました……会うだけなら……」
苦悩しているボリスの事を気の毒に思う僕は思わずリンダの父親に会う事を了承してしまうのであった。
「すまない、カネツグ君……」
「この埋め合わせは必ずするよ」
ボリスはそう言うと疲れた中にも安堵の表情を浮かべた。
ボリスにもいろいろと事情があっての事だと察しが付いたのでそれ以上はこの話題には触れなかった。
無言で疲れ果てている様子のボリスを見て僕は話題を変えることにした。
「それにしても凄いですね」
「ビジネスジェットを貸し切るなんて……」
僕はボリスに感心したように言うと……
「ハハハ……カネツグ君……」
「この飛行機はレンタルじゃないよ」
「リンダの家のプライベートジェットだよ」
ボリスは少し笑って答える。
「ゲッ!」
僕は驚きのあまり変な声を上げるとボリスは思わず吹き出してしまう。
「ワッハッハッハッ!!!」
ボリスはよほど僕の様子が面白かったらしく笑いが止まらないようであった。
「すっすまないぃ……」
ムッとする僕に笑いを堪えながら僕に謝るがさっきとは違い誠意は全く見られなかった。
「リンダさんの家って……もしかしたら……」
「とんでもないお金持ちなのでは……」
何も知らない僕は本当に驚いている。
「ワッハッハッハッ!!!」
今更ながら本当に驚いている僕の様子を見てボリスはまた笑い出す。
「……」
僕は大笑いするボリスを見て目を細める。
「いや、すまない……」
「君は本当にリンダの事を何も知らないんだな」
ボリスはそう言うとリンダの家の事を話してくれる。
「リンダの実家、ロレンソ家は石油で財を成した億万長者だ」
「資産はざっと500億ドル(7兆5000億円)と言ったことだ」
「リンダはそのロレンソ家の1人娘だ」
ボリスの言葉に僕の頭の中は真っ白になる。
500億ドルと言う資産など漫画の中の話だと思っていたからである。
恥ずかしいかな天性の"貧乏性"の僕にとっては些か刺激が強すぎた。
暫く、完全に意識が飛んでしまっているのであった。
そんな僕の呆けた顔を見てボリスはまた大笑いするのであった。
後々に思った事なのだが……
側にメリッサが居なくて本当に良かったと思う僕であった。
因みに、僕がボリスに連れられてヒューストンまで来る事をリンダは全く知らないのである。
〜 リンダ・ロレンソ ④ 〜
終わり




