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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 リンダ・ロレンソ  ② 〜

 〜 リンダ・ロレンソ  ② 〜




 リンダ・ロレンソは、米国でも屈指の大富豪の1人娘であるにも関わらず質素で慎ましい暮らしを好む女性である。


 幼い頃から、小さくて可愛い物が大好きな子で今でもその趣味趣向は全く変わってはいない。


 地位や権力は勿論のこと、富と名声にも興味は無く物欲も無い。

 リンダは、好きな人と結ばれて子供を作り家族で穏やかにごく普通の暮らしたいのであるのだが……


 

 元から100億ドルを裕に超えるロレンソ家の資産はここ数年で爆発的に増え続けており、去年の某雑誌フォー◯スの長者番付では500億ドルに達すると試算されている。

 現在のレートにして日本円で約7兆5000億円である。

 途方もない金額であるが、米国にはその倍の1000億ドルを超える資産を持つ者が今現在14人もいるのである。


 将来、リンダ・ロレンソはこの莫大な資産を受け継ぐ事になるのであるが、当の本人はそんな物には全く興味が無い。

 しかし、周囲はそうでは無いのである。



 

 ただ、ロレンソ家は貴族のような格式ばった家柄ではない。

 見栄も張らなければ上品ぶってもいないのである。

 これは、スペイン移民である曽祖父の遺言に由来している。


 「アイツらのようには絶対になるな!」

 大の貴族嫌いの曽祖父の遺言であり口癖でもあった言葉である。

 因みに、皮肉な事に曽祖父はスペインで"イダルゴ"と呼ばれる下級貴族の出身である。

 従って、ロレンソ家はお上品な家柄ではなく某少女漫画の有◯倶楽部の◯菱家のような家柄であるのだった……



 現在、この馬鹿デカい大豪邸に暮らすのはリンダと両親の僅か3人だけである。

 バスルームは12ヶ所、トイレは24ヶ所、部屋数70室もあるが使われているのは近くにトイレとバスルームのある3部屋だけ……

 残りは部屋は使われる事も無く物置にすらされていないと言う無駄の塊……

 それが大富豪が生活する大豪邸なのである。

 その上、父や母は別荘で長期間暮らしたり、仕事で長期間に渡って家を空ける事も多いのである。



 リンダ達の使っている3部屋は毎日、使用人が清掃し使っていない部屋も定期的に業者が清掃している。

 当然、広大な庭園は庭師が管理しているし、プールやテニスコートも同様である。

 それに自家用ヘリのパイロットや整備士もいる。



 父のカルロスはこのヘリで取引先に出向いたりし、週末には母が都市部へ買い物に出掛けたりするのである。


 米国の大富豪なら持っていて当たり前であるクルザーとプライベートジェットも所有している。

 当然、それらも維持管理には相当なお金が必要である。


 貧乏性の僕が聞いたら卒倒しそうなぐらい維持費が必要なのが大豪邸なのである。



 その"大豪邸にご招待……"なんて事になっている事など全く知らない僕はテキサスから遠く離れた日本で規則正しい修行僧のような質素な生活を送っているのであった。



 

 僕の知らない所で、そんな事があってから数ヶ月後……僕は大学でいつもと変わらない規則正しい生活を送っていた。


 幸いな事に現時点では、リンダからのお誘いはまだ無い。


 ほぼ毎日のように僕はメリッサと連絡をとっている。

 メリッサは昨日、大学の近くにできたラーメン屋に行ってきたそうである。

 メールに添付されたラーメンの写メから豚骨スープのラーメンのようである。



 "凄く美味しかったんだけど……"

 "値段がね……スタンダードで17€(2700円)"

 "スペシャルだと19€(3200円)もするのよっ!"

 "日本の3倍よっ!3倍っ!!"

 "嫌になっちゃうわよっ!"

 zoomで話した時にパリの物価ラーメンの高さに眉間に皺を入れ顳顬こめかみの血管を浮かせてマジでブチ切れ気味のメリッサが何となく面白く感じられる僕である。


 そんな、日々のたわいない世間話であるのだがメリッサの普段の姿がとても僕の心を癒してくれる。


 何事も無く時間は流れ、季節は3月末になっていた。

 もうすぐ、2週間の春休みに入るのであるが僕は日本には帰らないつもりでいる。

 今回の帰省費用を浮かせて6月から9月まで3ヶ月もある夏休みに廻すのである。

 要するに、メリッサのいるフランスへの旅費と滞在費を捻出するのである。


 土曜日の朝、僕はいつものように溜まったメールをチェックしていると見覚えの無いメールが1通届いている事に気付く。

 "何のメールかな……"

 こちらから発信したアドレス以外のメールは全て別のトレイに入るように設定している。

 なので、このメールは以前に僕が何らかの理由で送受信した事のあるアドレスだと言う事になる。


 念の為に個別ウィルスチェックをかけてみる。

 危険性はないようである、送信元をアドレス帳と照らし合わせると……


 "あ〜あの時の〜"

 "僕の記憶に思い当たるものがある"

 アドレスは以前に僕が課題の一つとして応募したアイデア募集していたものと同じであった。


 メールを開いてみると……



 We are very interested in the ideas you submit.

 We would like to contact you.

 If you agree, please contact us here.


 mail address

 ××××@xxxxx.com/technical/secret/0006




 指定されたメールアドレスを見て僕は驚きを隠せなかった。

 "このメールアドレスって……あの企業じゃないのか?"

 "フェイクなのかも知れないな……"

 僕は最近、問題となっている詐欺目的のフェイクメールではないかと疑う。


 添付されているメールアドレスを調べるが外部からのアクセスに対しドメインをチェックしているらしく秘匿性が高く直接こちらからアクセスしないとダメなようである。


 僕は万外一に備えてパソコン本体のシステムディスクを切り離し、パスワードなどが設定されていない外付けのバックアップ用のシステムが入ったクローンディスクを接続して再起動させる。


 そして、指定されたメールアドレスに返信すると……

 即座にに返信が返ってくる。


 "Thank you for contacting us."

 "Please wait a moment."

 "calling the person in charge."

 どうやら自動返信のようである。

 数分すると再びメールが届く。


 "Thank you for contacting us."

 "The conference room is here."

 "We are waiting"


 room No. xxxxx

 password xxxxxxxxxxx


 ネット会議室番号と入室のためのpasswordが送られてくる。


 僕は躊躇いながらも指定された会議室に入るとパソコン画面に3人のTシャツ姿の男性が映る。


 "Good morning Kanetsugu Izumi……'

 "I'll see you for the first time……"

 "We are the developers of American digital key Company."


 'We are very interested in the ideas you submit."


 メールは間違いなく世界的なセキュリティソフトで知られるあの企業からであった……。


 そして、彼等は僕が応募したアイデアを是非とも採用したいと申し出るのであった。


 全く予想だにしなかった申し出であった。

 


 〜 リンダ・ロレンソ  ② 〜

 

 終わり




 


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