〜 リンダ・ロレンソ ① 〜
〜 リンダ・ロレンソ ① 〜
亜米利加合衆国テキサス州……ヒューストン郊外……
ヒューストンは全米第4位の大都市であり米国有数のエネルギー・石油化学工業都市であり、NASAで馴染みの宇宙航空産業でも有名であり……
そして、リンダ・ロレンソの故郷でもある。
テキサス州と言うと西部劇でお馴染みのカウボーイの本場である。
亜米利加合衆国の州になるまではテキサスは独立した国家であったので今も独立精神が高く独自の風習がある。
テキサス州はだだっ広い、州面積は日本の国土の2倍である。
当然だが、何もかもがスケールが大きく、それもテキサスの特徴の1つである。
近代的な都市部を少し離れると今も日本人の想像する昔のアメリカの生活がある州なのである。
20世紀初頭にこの地で石油が発見され石油ブームが訪れ急速に発展する、世に言うテキサスの"噴出時代"である。
油田を掘り当てた者は莫大な富をその手にする事となり何人もの大富豪が誕生する。
新天地と一攫千金を求めてスペインから移住した移民の子孫であるリンダの祖父も、その大富豪の1人であった。
リンダ・ロレンソ21歳、身長178センチのスレンダーな長身で亜麻色の短髪のボーイッシュな女性で某宝◯歌劇団の男役のような王子様タイプの女性である。
性格は明るくて陽気で裏表が無く素直、男っ気があり女性にモテるタイプである。
オマケに米国有数の大富豪の1人娘……
……であるが、こと自分の恋愛事となると超ヘタレである。
ヒューストン郊外にある超が付くような大豪邸……
敷地面積100エーカー、日本風に言うなら約12万坪、わかりやすく言えば東京ドームの8.7倍の広さである。
広大な庭園にはプール、テニスコート、射撃場、ヘリポートが完備されている。
その奥には、建坪面積3600坪の総大理石造の古代ギリシャ・コリントス様式エンタシス柱の立ち並ぶ白亜の大豪邸が鎮座している。
実に、日本の国家議事堂とほぼ同じ広さである。
リンダ・ロレンソは、この大富豪ロレンソ家の1人娘なのである。
よく晴れた日の朝、畳300畳は余裕であるダイニングに、これも50人くらいなら余裕で座れるテーブルでリンダと父のカルロスが2人だけで食事をしている。
イタリアから直接取り寄せられた色大理石のダイニングの壁には牛の角、アメリカ連合国(南軍)の旗の上にサーベルがXクロスにかけら、その横には古い骨董品の拳銃やライフルが何挺も飾られている。
テーブルの横には給仕のおばさんが3人控えている。
ダイニングが立派で広いので逆に凄く寂しそうな雰囲気がする。
因みに、リンダの父カルロスは身長192センチ、体重100キロ、黒髪に天然パーマ、口髭ボウボウの厳つい大男である。
少し草臥れたインディーブルーのジーパンに厳つい鉄のバックルの付いた幅の広い茶色の革ベルト、ワニのマークのワンポイントが入った白いポロシャツ、そして焦茶色の皮のロングブーツを履いている。
首には野太い純金の鎖のネックレス、腕にはゴツい金のロレッ◯スの腕時計をしている。
日本人の目線からすれば、見るからに田舎の成金でオヤジか893の幹部ある。
父のカルロスは朝から厚さ2インチ(5センチ)はあるステーキを食べている。
その前の席でリンダがタコスを食べている。
タコスと言ってもテキサス風にアレンジされたテキサス風朝食タコスと言う物である。
焼いた豚バラ肉と卵、アボカドやライムなどにサルサソースをぶっかけトルティーヤに挟んだ代物である。
日本人がすれは胃がもたれるようなヘビーな朝食であるが、元祖テキサスバーベキューの地では昔からのごく普通の定番朝食である。
「あ〜リンダ〜」
「なんだ〜その〜」
さっきから、父のカルロスはリンダの様子を窺いながら何か言いたそうにしていたのだが……
「なんなのよ、何か言いたい事があるなら言いなよ」
リンダは父の煮え切らない態度に痺れを切らし不機嫌そう言う。
「大学の方はどうなんだ?」
カルロスが問いかけるとリンダは目を細める。
「"どうなの"って、そんなの……」
「お目付役のボリスから全部聞いて知ってるんでしょう」
リンダは白々しいカルロスの問いかけムッとしたように答える。
カルロスは1人娘であるリンダを溺愛しているのである。
ボンネットに牛の角と頭蓋骨をあしらえた馬鹿デカいフォードのピックアップトラックのリアガラスに"I love daughter(娘ラブ)"とフイルムを張るほどである。
当然、助手席のダッシュボードには実弾が装填された大口径のリボルバー拳銃、後部座席にはショットガンが積まれている。
これぞ正真正銘の米国人が想像するアメリカン痛車である。
因みに、テキサス州では隠し持たなければ公共の場での銃の携帯は合法である。
要するに、街中で腰に銃をぶら下げていても見えていればOKと言う事である。
そんな娘ラブのカルロスは、リンダが寮で一人暮らしすると知って200坪の別邸と運転手付きの専用車、護衛のボディーガードと身の回りの世話役の使用人を付けようとしたのだが断られ、仕方なく同じ大学に通っていた遠縁のボリスに頼み込んで護衛役も兼ねた目付役になってもらったのである。
南部訛りで力強く逞しい如何にもテキサス男の見本のようなカルロスなのだが1人娘のリンダと妻のカミラには、とことん弱いのである。
当然だが、リンダはその事を快く思ってはいないのである。
「その〜なんだ〜」
「お前に"好きな男ができた"と言うのは……」
「本当か?」
カルロスは気掛かりで仕方なかった事を遠慮しながら問いかける。
「……」
リンダの動きがピタリと止まると不機嫌そうな表情になる。
"リンダの奴、やっぱり……"
"一体、どんな野郎なんだ……"
"ボリスの野郎、なんの連絡もよこしやがんねぇし……"
カルロスはリンダの様子から"好きな男"ができた事が事実である事を悟る。
露骨に不機嫌そうなリンダを気にしながら心の中でボリスの対応の遅さを不満そうに呟くカルロスであったのだが……
"ヴゥーッ、ヴゥーッ"
テーブルの上に置かれていたカルロスの携帯電話が2度振動する。
何かメールが着信したのである。
「おっ!ボリスからかっ!」
画面の着信歴を見てボリスからのメールである事を確認したカルロスは急いでメールを開くと……
「……!……?」
ボリスからのメールを見たカルロスは一瞬固まるがなんとも言えない複雑な表情になりリンダのほうに視線を移す。
「リンダ……お前、やっぱり……」
「そっちの方だったのか……」
「覚悟はしていたが……いざ現実となると……」
「結構……キツいぜ……」
何故か絶望したカルロスは自分に言い聞かせるように納得しリンダに問いかける。
「一体、何の事よっ!」
カルロスの訳の分からない態度と言葉に痺れを切らしたリンダは席を立つとカルロスのほうへと早足で向かう。
カルロスが手にしていた携帯電話を奪うように取ると画面を覗き込む。
「えっ!」
カルロスの携帯電話には僕の姿が映し出されている。
僕の写真を見たカルロスはリンダに男ではなく女ができたと勘違いしたのである。
「男の事をばかり心配していたが……」
「見事に足元を掬われちまったぜ」
カルロスはそう言うと椅子から立ち上がりガハガハと豪快に笑った瞬間……
「ガハッ!」
リンダの蹴りがカルロスの股間に炸裂した。
「おうっ!うっ……うっうっ……」
カルロスは死にそうな呻き声を出して股間を押さえ床に蹲る。
「リ、リンダ……どうして……」
どうしてリンダが激怒しているのか全く分からないカルロスは親友に暗殺された某皇帝のような気分になる。
「よく見て……男よ男っ!」
リンダは携帯電話の画面をカルロスの目の前に突きつける。
「おっ、男……?」
カルロスはリンダに突きつけられた携帯電話の画面をジッと見る。
「すまんが、リンダ……どう見ても……」
「俺には、女にしか見えねぇ」
「それも、お前の大好な……」
「とびっきり"cute"な少女にしか見えねぇぜ」
カルロスは真顔で自信を持って答えると……
「ごふっ!」
今度はリンダの靴の先がカルロスの尻の割れ目に食い込んだ。
「うっうっうっ……」
今度は尻を押さえて飛び回るカルロスであった。
カルロスは暫く尻を押さえて飛び回った後で……
「本当に男か?」
「会ってみてぇから1度、家に来てもらえねぇか?」
カルロスがそう言うとリンダの態度が急によそよそしくなる。
「いっ家にって……」
リンダは父のカルロスが一度言い出したら意地でも聞かないタイプの人間だとわかっているのでどうしようかと悩んでしまうのであったのだが……
「……わかったわよ……」
「休みが終わったら声かけてみるわよ」
困惑しながらも諦めたようにカルロスの提案を受け入れるリンダであった。
カルロスは、そんなリンダの様子を横目で見ながら……
"よくも俺の可愛いリンダを……誑かしやがって"
"あんな、(玉)が付いてるか付いてねぇかも判んねぇような……"
"腑抜けた女のような奴に……"
"俺の可愛いリンダを任せられるかってぇんだ!"
"この俺が直接、父の愛と正義の鉄槌を喰らわせてやらぁ!"
心の中で僕に対する筋違いな父の愛と正義を燃やすカルロスであった。
僕が日本でメリッサと過ごしていた頃の出来事である。
〜 リンダ・ロレンソ ① 〜
終わり




