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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 メリッサ・ベルナール  ⑤ 〜

〜 メリッサ・ベルナール  ⑤ 〜



 「メリッサ……やっぱり……」

 「このスエットは僕には大き過ぎるよ」

 僕はブカブカのスエットのズボンの裾を捲り上げ長い袖も捲り上げるとメリッサの側の冷蔵庫の方に歩いて行く。

 「後、1時間ほどで洗濯が終わるからそれまで貸してね」

 僕はそう言うと冷蔵庫からスポーツドリンク取り出して飲む。


 "何なのよっ!あの可愛さっ!!"

 "思わず抱きしめたくなるじゃないのっ!!!"

 メリッサは心の中で無意識の内に叫んでしまう。


 僕はそんなメリッサの様子を不思議そうに見ている。

 "メリッサ……どうしたんだろう?"

 "サウナでのぼせて調子が悪いのかな?"

 僕はメリッサの体調がよくないのではないかのと心配になる。


 「どうしたのメリッサ……」

 「なんか様子が変だよ……」

 「体調が良くないのかな?」

 僕は心配そうにメリッサを見上げるようにして問いかける。


 「なっ!何でもないわよ」

 メリッサは慌ててそう言うと僕は安心してニッコリと笑う。

 "うっ!かっ!可愛いっ!!"

 "可愛過ぎるぅ!!!"

 上目遣いの心配そうな僕の表情と笑顔にメリッサの母性本能が擽られる。

 "風呂上がりのカネツグは小悪魔だわっ!"

 "以前から、可愛い子だとは思ってはいたけど……"

 "ここまでとは……"

 メリッサは激しく脈打つ心臓を落ち着かせるために大きく深呼吸をする。

 "落ち着くのよ、メリッサ・ベルナール"

 "平静っ!平静を保つのよっ!!"

 メリッサは自分に言い聞かせるように呟くのであった。


 「明日の事だけど……」

 「メリッサはどうするつもりなのかな?」

 僕はメリッサに明日の事を尋ねる。


 「多分、この様子だとこのままホテルに居ることになるわね」

 メリッサは窓の外を見るとため息を吐き諦めたように言う。


 窓の外では今もまだ大量の雪が降っているのかよくわかる。

 僕はテレビの電源を入れると大雪の特別番組が放送されている。


 東京都23区内でも既に積雪量が60センチに達している所もあるとの事である。

 現在、東京都内の交通機関は完全に麻痺し生活必需物資の流通網にも深刻な影響が出始めているそうである。

 街路樹が倒れたり立ち往生する車も多数でているとの事である。



 「飛行機のは方はどうなっているのかな?」

 僕は気になっていたメリッサの帰りの飛行機の事を尋ねる。


 「帰りの飛行機の予約はまだ取れていないわ……」

 「航空機会社の予約サイトも予約を受け付けていないのよ」

 「航空機会社のホームページには大雪でキャンセルなった人には順次、連絡があるみたいなの……」

 「まぁ……どうにもならないわね……」

 メリッサは諦めたように言うのだがその表情は何故か明るかった。


 僕はメリッサの隣に座るとため息を吐く。

 「困ったね……」

 「帰りが遅くなるけど、メリッサは大丈夫なの……」

 「家族の人たち心配してるんじゃないのかな」

 僕が心配そうに言うとメリッサは"大丈夫"という表情になる。


 「カネツグがシャワー浴びている間に家族には連絡してあるから」

 メリッサはそう言うと窓の外をボォ〜っと見ている。

 "これは神様が与えてくれた最後のチャンスよ"

 "私の気持ちをカネツグに伝えて……"

 "そして……それから……"

 メリッサは心の中で邪な事を考えてしまい思わず顔がだらしなくなる緩んでしまうのであった。

 

 そんなメリッサを僕は心配そうに見ていた。

 "どうしたのメリッサ……"

 "何だか……妙にニヤニヤしてるけど……"

 そんなメリッサの様子が変な事を心から心配する僕であった。


 「そろそろ、洗濯が終わる頃かな……」

 僕は洗濯機を見に行こうとすると……


 「あっ!」

 急に部屋が真っ暗になる。

 

 「oh!」

 急に部屋が真っ暗になったのでメリッサも驚いたようで思わず小さな声を上げると隣にいた僕に反射的に抱き付く。


 「ふげえっ!」

 メリッサは予想以上に力が強くて僕は死にそうな声を上げる。


 「Je te demande pardon!」

 メリッサはそう言うと慌てて僕から離れる。

 僕はフランス語はよく分からないが謝っている言葉だと言う事は何となくわかる。


 それに、これは単なる事故で火事場の馬鹿力と言うやつなのだからメリッサに悪気がない事は僕にも分かる。

 「気にする事はないよ」

 僕はそう言うとメリッサの気配のする方を見るのだが真っ暗でよく見えない。


 窓の外も真っ暗である。

 どうやら、この辺り一帯が停電しているようである。


 「停電のようだね……」

 僕がそう言うとメリッサも同意する声が聞こえてくる。

 暫くすると暗闇に少し目が慣れてぼんやりとメリッサの姿が確認できるようになった。


 暗く静まり返った部屋にドアの外からホテルスタッフの声が聞こえてくる。

 "ただいま、全館で停電となっています"

 "お客様には大変なご迷惑とご不便をおかけしますが……"

 "何卒、ご容赦ください"

 すると、ドアをノックする音がしてホテルスタッフの人がランタンと使い捨てカイロ、保温アルミシートを持って来てくれた。


 ドアを開けると廊下は真っ暗だったが非常用の足元ライトは点灯していた。



 ホテルスタッフの説明だと……

 現在、停電で暖房が止まっており外は氷点下なので部屋の中もすぐに寒くなってくるとの事であった。


 このまま停電が続くと調理器具が使えないので明日の朝食の用意も出来ないとの事であった。


 ホテルスタッフの言う通り、すぐに部屋の中は寒くなってくる。

 僕とメリッサは自然と身体を寄せ合って寒さを凌いていた。


 「寒いね、風邪引かないようにしないと……」

 僕はメリッサに寄り添うように身体を密着させる。

 「メリッサ、大丈夫、寒いでしょう」

 僕がそう言うとメリッサは小さく頷くのだが……


 "カネツグ……"

 "何だか、とても暖かい……"

 メリッサは心の中で幸せそうにそう呟くのであった。

 "でも……こんなに寒いと……"

 "流石に、裸になるのは辛いわね……"

 こんな状況下でもメリッサの頭の中はアノ事でいっぱいであるのだった。



 この日、関東地方を襲った前代未聞の大雪は観測史上最大、桁外れの降雪量と積雪を伴い関東地方一帯の交通機関を完全に麻痺させた。

 物流も完全に麻痺、同時に積雪による停電や断水、事故も相次ぎ都市機能は完全に麻痺するのである。


 特に首都圏は氷点下の極寒の中で多くの帰宅困難者を出し凍死する人が出るなど、政府が緊急事態宣言を発令するをほど深刻な影響を及ぼすのであった。


 この大雪による混乱は数日間続く事になるのである。


 


〜 メリッサ・ベルナール  ⑤ 〜


 終わり

 


 

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