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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 メリッサ・ベルナール  ③ 〜

〜 メリッサ・ベルナール  ③ 〜



 僕は餅を焼いている。


 メリッサがサウナでのぼせて気を失ってしまうと言うアクシデントがあったのだが、幸いに大した事はなかった。


 絵梨香とメリッサは風呂場に着替えに行っている。


 僕の知らない間に我が家の普通の洗濯機はいつの間にか高価な乾燥機能付きのドラム式洗濯機に変わっている。

 洗濯物を掘り込んで洗剤と柔軟剤を入れてスイッチを押すだけで全てしてくれる有難い洗濯機である。

 オマケに自動清掃機能まで付いているのである。


 なので、絵梨香とメリッサがサウナに入って長風呂している間に洗濯が済んでいるのである。

 主夫の僕としては涙を流し手を合わせて拝みたくなるほどの優れ物である。

 ……ただし、その代償は小さくは無い。

 何と本体価格が税込み34万円と言うとんでもない代物だからである。

 しかも、巨大な洗濯機に合わせて床の防水パンまで交換しているのである。

 工事設置費の含めると50万の近くになるのではないかと思ってしまう。

 僕のこの貧乏性は一生治らないのである。


 金に糸目を付けないお金持ちの絵梨香だからこそ何の躊躇もなく買える代物である。



 暫くすると絵梨香とメリッサがリビングに戻ってくる。

 サウナに入る前に着ていた服のままである。

 

 ふと僕の頭にある不安がよぎる。

 "もしかしたら、絵梨香のやつ……"

 "ずっと同じ服のままなのか?"

 "いくら何でも、それは無い……かな?"

 僕は絵梨香の服を横目でジッと観察する。


 そして……ある事に気付く。

 "絵梨香の、あのズボン……"

 "もしかして夏物なのでは……"

 今、絵梨香の履いているズボンが去年の夏に履いていたズボンと同じ物だということに気付く。

 "まぁ……いいか……"

 "それよりも、ぜんざいの方だ"

 焼けて膨らんできた餅を見て、僕はそれ以上の詮索するのを止めることにするのであった。

 


 3人で"ぜんざい"を食べる。

 

 「凄く甘いですね……」

 メリッサはそう言うとお茶を口にする。

 「oh〜この"お茶"と"ぜんざい"……」

 「とても組み合わせが良いですね」

 メリッサはこの"お茶"と"ぜんざい"の組み合わせが気に入ったようである。



 "ぜんざい"を食べ終わり時計を見ると5時過ぎになっている。

 「もうこんな時間か……」

 「そろそろ、帰らないと」

 「明日はメリッサも帰国するし」

 僕はそう言うとメリッサの方に視線をやる。


 「そうね……」

 「ありがとう、絵梨香さん」

 少し寂しそうに言うと絵梨香にお礼を言う。


 メリッサはリュックを背負うと僕もリュックを背負う。

 

 「また、来てね……」

 絵梨香はそう言うとメリッサはニッコリと笑った。


 玄関を出ると空は曇天で寒風が吹いている。


 「う〜寒っ!」

 僕は思わず背中を丸めて身震いする。

 絵梨香の言っていた観測史上最強の寒気団が到来した事を実感する。


 曇天の下、メリッサと一緒に駅に向かう。

 電車に乗ってメリッサの泊まっているホテルの最寄り駅に到着した頃には6時30分過ぎであった。


 「カネツグ、ありがとう……」

 「夕食は何にする?」 

 「夕食は、私が奢るからね」

 メリッサは僕にそう言うとニッコリと笑うのだが……

 何故かメリッサの笑顔が僕には何処か寂しそうに見えるのであった。


 「それじゃ……お寿司にしようか」

 僕がそう言うとメリッサは小さく頷く、日本に初めて来た時に食べた回転寿司店に入る。


 店は思った以上に混雑していて少し待たされたのだが店の1番奥の2人掛けのテーブル席に案内された。

 いつものようにお美味しいそうに寿司を食べるメリッサを見ていると何だか微笑ましくなる僕であった。


 食事を終えて店を出ると僕もメリッサは唖然とする。

 いつの間にか外は雪が降っており一面の雪景色である。


 「雪……積もってるね……」

 僕が茫然として言うとメリッサも頷く。

 メリッサの泊まっているホテルの前まで来ると僕の携帯電話が振動する。


 僕は携帯電話を取り出し画面を見て凍りつく。

 携帯電話の画面には、僕の乗るはずだった電車の運休が表示されているのであった。


 「電車……動かない見たい……」

 「帰れなくなちゃったよ」

 僕は絶望したかのように言うとメリッサは少し何かを思案した後……


 「私の泊まっているホテルに来ればどうかしら」

 「いくら何でも、こんな寒空の下で一晩過ごすのは無理があるわよ」

 メリッサはそう言うと僕の手を握りホテルの方へと歩き出す。


 「ちょっと、メリッサってば……」

 いきなりのメリッサの行動に僕は少し慌ててしまうのだが、お母さんに引きずられる子供のようにホテルへと連行されてしまうのであった。


 ホテルに着くのメリッサがフロントの女性と何かを話している。

 フロントの女性との会話から既に空室は無いようであるのだが……


 「カネツグ、空室は無いけど……」

 「事情を説明したら、私と同室でも良いそうよ」

 どうやら、積雪で電車が運休して身動きが取れなくなった人の為のホテル側の緊急処置だそうである。


 一般に解放されたホテルのロビーには既に何人もの人が一時避難的に身を寄せているようである。


 こうして、僕はメリッサと同じ部屋で一晩過ごす事になってしまったのであった。


 


〜 メリッサ・ベルナール  ③ 〜


 終わり

 

 

 

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