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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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 僕は……第二章は  〜 我が父 刀匠・和泉守兼正 〜

僕は……第二章

 〜 我が父 刀匠・和泉守兼正 〜



 僕の父はそれなり名の通った刀匠である。


 年齢52歳、身長160㎝でやや小太りの体型、丸坊主頭で刀匠と言うよりは近所のお寺の住職と言った感じである。


 職業柄もあり仕事服としてよく作務衣を着ているので本当に坊さんと間違えられ、道ですれ違うお年寄りが手を合わせることもしょっちゅうである

 父は周りくどい説明をせずにそのまお辞儀をして済ませるので本当に坊さんだと思っているお年寄りの人も多いと思う。

 僕は、"職業詐称"にならないかと本気で心配してしまうほどである。



 因みに、"和泉守兼正"は銘であり父の本名は"和泉武夫"と言う、ありふれた名前である。


 出身地は岐阜県関市で、実家は江戸時代初期から続く包丁などを販売する有名な老舗の打ち刃物屋らしく、その顧客リストには国内外の一流の料理人がその名を連ねていると聞いている。


 ある意味で恵まれた環境で生まれ育ったのである。

 子供の頃から刀が好きで、地元の工業高校を卒業後に直ぐに有名な刀匠に弟子入りするのたが、地元の美濃伝ではなく相州伝の師匠の元へ一族の反対を押し切って弟子入りし、嘘か本当か真偽はよく知らないが父親から勘当されたと言う話である。


 実際に、父の実家とは全く付き合いが無く、写真すらないので僕は父方の身内の事を全く知らない。

 父も母も父方の実家の事を全く口にせず言わないのは本当である可能性が高いと僕は思っている。



 その後、修行を終えて独立する際に師匠から相州伝を名乗る事を許されるも何故か美濃伝で作刀を始め刀匠界から奇人・変人扱いされて村八分にされる。


 日本刀の新作コンクールで特賞を受賞するまでの数年間は父にとって最も苦難の時代だったのだろうと思う。


 その後、数回の特賞の受賞の後に史上最年少で無監査刀匠となり今日に至っている。

 冷静に父の経歴を見ると家での存在感は全く無いが本当はそれなりに凄い人なのである。



 他に類を見ない独特の作風で国内外に愛好家もいる、それなりに名の通った刀匠なのである。

 そんな父ですら家族を養えるギリギリの収入しかないのであるから、いかに刀で食っていくのが難しいかが窺い知れる。


 刀を打つ以外にはこれと言った特技もなく、刀に関する事以外の趣味もなさそうである。

 よく骨董市に出かけてガラクタのような古い鉄製品を大量に買ってくる事がある。


 これは溶かして刀の材料にするためで、買ってくるのは日本古来のタタラ製鉄の鉄で作られたボロボロ鉄瓶や農機具などのガラクタような古い鉄製品ばかりである。

 


 酒も飲まず、タバコも吸わず、賭け事もしない、ましてや女遊びなど母に知れたら命に係わるのでしたくても出来ない。


 時間が空けば日本刀に関する書籍を読んでいるかお気に入りの刀を眺めているかという、正真正銘の筋金入りの日本刀オタクである。


 入門希望者は多いが、何故か弟子は1人もとってはいない。

 本人曰く……

「自力で刀が打てるうちは弟子はとらない」そうである。


 自分の父親なのだが、僕としては母がどうしてこんなと結婚したのか全く理解できない。

 しかも、母の方から結婚を何回も申し込んだと言うのだから更に理解に苦しむのである。


 絵梨花の話だと母は、"一心不乱に刀を打つ父の姿"に一目惚れしたのだとか言っていた。


 何せよ、傍で見ていて恥ずかしいぐらいに仲が良いのはいい事なので僕にとっては、そんな事はもうどうでもいい。



 尚、第二章に於けるそれぞれの文章の長さと順番は我が和泉家での存在感をそのまま表している。

 



 僕は……第二章は

 〜 我が父 刀匠・和泉守兼正 〜


終わり

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