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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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 〜 メリッサ来たる  ⑥ 〜



 〜 メリッサ来たる  ⑥ 〜




 食事を終えた後、再び温泉へと向かう。

 夜の露天風呂は明るい昼とはまた違った雰囲気で趣がある。

 どちらかと言うと僕は夜の露天風呂の方が好きである。


 僕が露天風呂から上がると直ぐにメリッサも出てくる。

 今度は浴衣ではなくTシャツとスエットであった。

 さっきの事もあっての事だろう。

 浴衣はコートのように羽織っているのだが……

 ノーブラらしくTシャツに胸の先っちょが透けて見えている。

 メリッサは全く気にしていないようである。


 「メリッサっ!」

 僕はメリッサに"透けている"事をジェスチャーで伝えようとするのだが……

 「???」

 メリッサは首を傾げるだけで全く伝わらないようである。

 仕方がないのでメリッサの浴衣の襟元を正すフリをして胸の先を上手く隠すのであった。

 ここら辺はお国事情の違いでありメリッサが露出狂なわけではない。


 部屋に戻ると僕はメリッサに近くの神社へお詣りに行かないかと尋ねる。

 当然、メリッサの返事は"OK"である。


 神社へ行くまで少し時間があるので僕は気になっていた事をメリッサに尋ねる事にした。

 それは昨日行った世田谷の下北沢でのメリッサのギターの件の事である。

 

 「メリッサってギターやってるの?」

 僕の言葉にメリッサは"やっぱり"と言う表情をするとわけを話してくれた。


 元からギターが好きだったわけではなく、手元にギターがあっからだそうだ。

 メリッサには4歳年上の兄がいてその兄がギターをやっていたらしいのだが途中で辞めてしまったそうだ。

 その兄が使っていたギターと備品一式をもらったのがきっかけだそうである。


 ど田舎で遊ぶ所も無いので暇つぶしにしているうちに上達してしまったらしい。

 バイオリンが好きなのに、いくら練習しても全く上達しない僕からすればじつに羨ましい限りである。


 「カネツグは何か楽器の演奏するの?」

 と言うメリッサの問いかけには思わず"何もできない"と嘘を言ってしまう僕であった。


 流石に、世田谷の下北沢の楽器店で買った35万円のギターを即決で衝動買いした事は少し後悔しているのかと思っていたのだが……

 「あのギターが35万円とは安いです」

 そう言って後悔するどころか良い買い物が出来て喜んでいるようである。


 因みに、後にメリッサの買ったギターをネットで調べたら円安の影響で欧米で買うよりも3〜4割ぐらいは安いのだと言うことがわかった。

 僕のバイオリンとは違いメリッサは衝動買いでは無く正確に物の価値がわかって買ったのだなと関心する僕であった。


 そうしているうちに除夜の鐘が鳴り始める。

 今年も、もうすぐ終わるのかと思えばいろんな事を思い出してしまう。

 "今年は……いろいろあったなぁ"

 心の中で思わず呟く。


 

 「JOYA NO KANEですね」

 メリッサはそう言うと遠くから鳴り響いてくる鐘の音を聞いている。

 「カネツグ、BONNOHありますか?」

 メリッサは唐突に僕に尋ねてくる。


 「煩悩っ?」

 メリッサの突然の問いかけに僕は少し躊躇うのだが……

 「たくさんあるよ」

 僕が恥ずかしそうに答えるとメリッサは少し笑う。


 「私もたくさんあります」

 そう言うとメリッサは天井を見上げる。

 「私、"煩悩"と"願い"の区別つかないです」

 メリッサの言葉に僕も同意するように頷く。



 それから、2人で近くの神社へと歩いて向かう。

 質素な神社だが古い社殿はとても趣がある。

 地元の人がお詣りする程度の参拝者で人もそんなに多くない。

 参道両端に提灯が多数吊り下げられ独特の雰囲気がある。

 斎藤がいたら喜ぶだろうななどと思いながら手を合わせる。

   

 「日本の神様がいるようなら気がします」

 メリッサはそう言うと携帯電話で撮影しようとする。


 「駄目だよ」

 「神聖な場所だから撮影はNGなんだよ」

 僕がメリッサに撮影しては駄目だと言う事を教える。


 「残念です……」

 この光景を映像として残したかったのだろう、メリッサはかなりガッカリしていた。


 吃驚したのはメリッサが神社の参拝の仕方を知っていた事だ。

 二礼二拍手一礼に始まり鳥居の前で一礼する事、手水舎の柄杓で手を洗う事、参道の真ん中を歩かない事など。


 メリッサがどんな願い事をしたのかは知らないが随分と真剣にお願い事をしていたように思えた。


 そして、メリッサが楽しみにしていた"おみくじ"である。

 僕は既に長澤さんと明治神宮のおみくじを引いているのだが……

 アレは去年、なので今年の分のおみくじ……と言う勝手な理屈をつけて引く事にする。


 何とメリッサのおみくじは大吉であった。

 大吉の意味をメリッサに説明するととても喜んでいる。

 僕はと言うと……明治神宮の時と同じ吉であった。


 メリッサは漢字が全く読めないので僕がおみくじの内容を読んで説明する。

 メリッサが特に気にしていたのが恋愛運であった。


 因みに、おみくじに書いてある事は全て読む必要はありません。

 自分の気になる事だけでもいいのだそうです。


 メリッサの恋愛運に書かれていたのは……


 恋愛運……難あれど、この人なら幸福あり。


 ……と書かれていた。


 「D'Accord……」

 「Je le pense aussi……」

 おみくじの内容を聞いたメリッサはフランス語の小さな声で呟くと嬉しそうにニッコリと笑う。

 フランス語のわからない僕にはメリッサが何を呟いたのは分からなかった。


 おみくじを持って帰るか、結び付けるのかで長澤さんと同じようにメリッサとも意見が分かれる。

 会話内容も長澤さんの時と全く同じであった。

 結局、僕は木に結びつけ、メリッサは持って帰るのであった。


 宿に帰ると今夜だけ特別にサービスで蕎麦が提供できるそうなのでメリッサと一緒に蕎麦を食べる。

 「年越し蕎麦ですね」

 メリッサはそう言うと七味唐辛子をドバドバ振りかけてズルズルと啜るよに蕎麦を食べる。


 "なんか……メリッサの方が僕よりも日本人らしいよ"

 心の中で感心したように呟く僕であった。

 当然だが、メリッサが某動画サイトて蕎麦の食べ方を検索して見ていた事は言うまでもない。


 部屋に帰ると時刻は午前1時過ぎだった。

 少し休憩してから就寝に就くのだが同じ部屋の真ん中に2組の布団が微妙な間隔で敷かれている。


 「……」

 僕もメリッサもお布団を見て沈黙してしまう。

 気不味い空気が辺りに立ち込める。


 「あの……その……なんと言うか……」

 僕は国会で詰問された政治がのようになってしまう。


 「これが日本のお布団ですねっ!」

 メリッサはそう言うと布団の上に寝転がる。

 コミケの時と同じメリッサなりの気遣いだと僕は思った。


 「そうだね」

 そう言うと僕も布団の上に寝転がる。


 「はあ〜なんか夢を見てる見たい……」

 メリッサはそう言うと僕の方を見る

 「ありがとう、カネツグ……」

 「生涯最高の思い出の1つになるわ……」

 「カネツグ……もう、遅いし寝ようか」

 メリッサはそう言って布団の中に潜り込んでしまった。


 そんなメリッサの様子を見て僕も部屋の照明を暗くすると布団の中に潜り込んだ。


 常夜灯の薄暗い部屋の中で静かな時間が過ぎていく。

 突然、僕もメリッサも隣を気にし意識している……



 "メリッサ・ベルナール、しっかりしなさいっ!"

 "さぁ、勇気を出してっ!"

 布団の中でメリッサの心が訴えかけるなだが……

 "そんな事できないわよ"

 もう1つのメリッサの心が思いとどまらせようとする。


 一方、隣の布団の中の僕はと言うと……

 "いいのかな、同じ部屋で一夜を過ごすなんて……"

 "周りから何か誤解されるとメリッサに迷惑だし……"

 などなど考えているうちに睡魔が襲ってくる。

 

 元々、規則正しい修行僧のような生活を送ってくる僕にとってはここ数日のスケジュールは結構、厳しいものがある。


 朝6時に起きて家事をこなし、それから1時間以上かけてメリッサを迎えに行き案内役を務めてから自宅に帰り家事こなしてから寝るのである。


 当然、疲労は溜まっているのである。

 気が付いたら熟睡しているのであった。


 それはメリッサも同じ事で……あれこれ悩んでるうちに睡魔が襲ってきて敢えなく熟睡してしまうのである。


 こうして、初めての2人っきりの夜は虚しく過ぎて朝を迎えるのであった。




  〜 メリッサ来たる  ⑥ 〜


 終わり

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