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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 メリッサ来たる  ④ 〜

 〜 メリッサ来たる  ④ 〜




 

 12月30日午前10時頃、僕は秋葉原にいる。

 僕にとっては何かと因縁地味た場所でもある。

 今日はメリッサが行きたいと思う場所に案内している。


 「OH!AKIHABARA!」

 少し感傷に浸っている僕とは違いメリッサのテンションは最高潮である。

 「it's great!」

 「fantastic!」

 メリッサは周りを見廻して感動している。

 そして、手にしている携帯電話で撮影を始める。

 今や秋葉原と言えば言わずと知れたオタクの聖地である。

 それは、日本だけに留まらず世界中のオタクからも日本のポップ・カルチャーの発信地であり聖地でもある。


 「ODENの缶詰め」

メリッサはそう言うと早足で某電気店の横へ歩いていく。

 「有ったわ!」

 感動したように言うと財布をポケットから出して躊躇う事なくおでん缶を買う。

 その場で蓋を開けてると僕に携帯電話を渡す。

 竹串を使っておでんを食べるメリッサを撮影するのであった。

 メリッサはこの秋葉原名物"おでんの缶詰め"を食べるために朝食を抜いているのである。


 因みに、おでん缶は数種類ありメリッサは全てコンプリートするのであった。

 その後、メイド・カフェでオムライスを食べる。

 僕より遥かに秋葉原に詳しいメリッサであった。

 

 「随分と秋葉原に詳しいね」

 僕がメリッサに問いかける。


 「SNS、YouTube、調べました」

 メリッサはそう言うとニッコリと笑う、その笑顔は今でも僕の目に焼きついている。


 お土産のグッズを購入の後に渋谷へ向かう、渋谷のスクランブル交差点、渋谷スカイ、渋谷109などなど外国人には定番の名所を廻る……

 因み渋谷の某ディ◯ニーストアーは素通りである。


 その後、何故か世田谷の下北沢へ。

 下北沢と言えば日本のサブカルチャーの発信地でもある。

 メリッサの話だと東京の昔ながらの雰囲気をら残しているのだそうである。


 中古レコード店や古着屋、それにギターやドラムなどの楽器店が立ち並ぶ……

 ふとメリッサの足が止まると吸い寄せられるようにフラッと一軒の中古楽器店へ入って行く、僕もその後に付いて入る。


 店内には物凄い数のエレキ・ギターが陳列されている。

 メリッサはその中の一本のギターを凝視している。

 

 「メリッサ、どうかしたの?」

 僕はメリッサに尋ねると……

 メリッサは一本のギターを指差す。

 「あのギターがどうかしたの?」

 僕はメリッサが指差したギターの事を尋ねていると若い女性店員さんがやってる。


 「あの〜何かお探しですか?」

 メリッサが外国人なので店員さんはメリッサではなく僕に話しかけてくる。


 「メリッサ、あのギターが気になるの?」

 僕はメリッサに問いかけていると店員さんは何かを察したのかメリッサが指差したギターを陳列棚から取り出すとこちらへ持ってくる。


 ギターに付いている"used 35万円"の値札が僕の目に入る。

 "げっ!35万円って!"

 "メリッサには値段が分からないのかも知れないっ!"

 ギターの値札を見た僕は慌ててメリッサにギターの価格をユーロに置き替えて説明する。


 「C'est bon marché……」

 メリッサは小さな声で呟くと店員さんに分かるように話しかける。

 「test OK?」

 メリッサがそう言うと店員さんが店長らしき40代ぐらいの男性と何か話をし、直ぐに戻って来る。


 「OKです」

 店員さんがそう言うと何やらコードを繋ぐ。


 するとメリッサは軽く弦を弾くと何かを調整している。

 それが終わると大きく深刻する。

 そして、物凄い勢いでギターを掻き鳴らす。

 素人の僕が聴いても尋常では無い事が分かる。

 店員さんは呆気に取られ店長は慌ててこちらへやって来る。

 ほんの数分の演奏が終わると興奮した店長がメリッサに話しかける。


 「あ〜ゆ〜あ〜ぷろふえっしょなる?」

 無茶苦茶な発音のド下手な英語でメリッサに話しかけるが……当然、メリッサには通じない。

 どうやらメリッサを外国人のプロギターリストと勘違いしているようだ。


 困ったメリッサは誤魔化すように笑うと小声で僕の耳元に話しかけてくる。

 「カネツグ、私このギター買います」

 メリッサは35万円のギターを即決で買ってしまう。

 「えっ!!!」

 僕は驚き呆気に取られるも店長にこのギターを買うと伝える。

 店長は"さんきゅ〜"とメリッサに言うとギターのキャリーバッグをサービスで付けてくれた。


 メリッサはクレジットカードを取り出すと清算を終えギターを手にする嬉しそうに微笑んでいるのであった。

 それに、店長の男性も凄く満足そうな表情である。


 それよりも、35万円もするギターを即決で買うメリッサに僕はかなり驚いた。

 それに、メリッサがあんなにギターが上手いなんて全く知らなかった。

 未だに、僕にはメリッサがエレキギターを掻き鳴らしていた事の方が信じられない。

 と言うより、あまりのギャップに戸惑っているのだと思う。

 因みに、フランス人は皆が皆、"ケチ"ではないと実感する僕であった。


 

 店を出ると辺りは薄暗くなっている。

 店先の電工掲示板には午後5時12分と表示されている。


 電車に乗ってメリッサのホテルの最寄り駅で降りる。

 

 「何か食べる?」

 僕がメリッサに問いかけるとメリッサは頷く。


 「昼飯はラーメンとチャーハンだったから……」

 「夜はヘルシーな物がいいです」

 メリッサはカロリーの事を気にしているようである。

 後々に知った事ではあのるがメリッサは太りやすい体質なのだそうである。

 「それと、リーズナブルな物がいいです」

 「少しお金使い過ぎました……」

 メリッサは少し後悔しているよう口調で言う。


 「だったら……」

 「アレがいいかな」

 僕はそう言うと一軒の店を指差す。


 僕が指差した店は某蕎麦店である。

 メリッサと"蕎麦とおにぎり"のセットメニューを食べる。

 「Japanese soup pasta ?」

 どうやらメリッサは"蕎麦"を知らなかったらしいのだが……

 「とても身体が温まります」

 そう言うとフォークとスプーンで美味しそう食べる。

 因みに、メリッサの食べているのは僕と同じ"天麩羅蕎麦"である。

 リーズナブルな価格にも満足したようである。


 こうして、この日の予定を終えたのであった。

 


  〜 メリッサ来たる  ④ 〜


   終わり

 

 

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