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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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 僕は……第二章  〜 女帝・我が母 〜

僕は……第二章

 〜 女帝・我が母 〜



 僕の母のハンナは義理の母であるが僕を自分の子のように可愛がり育ててくれた。

 その事には心から感謝している。


 母の本名はハンナ・フォン・クリューゲルと言う。


 この和泉家の大黒柱であり、稼ぎ頭である母のおかげで我が和泉家は今の生活ができるのである。


 金髪に青い瞳の生粋のゲルマン人である。

 年齢○△歳、身長180㎝で筋骨逞しいその風貌はさながらファンタジーゲームに出て来る中世ゲルマンの女騎士である。

(歳を伏せるのは後が怖いからである)


 出身地はドイツのブレーメン。

 正真正銘の帝国騎士の家系であり中世から続くドイツ騎士団の末裔と言う由緒正しい家柄である。


 父はルフトハンザ航空の国際線のパイロットで母は看護師である。

 4人姉弟の長女で下の3人は全員が男である。


 母のハンナは完全に自立した女性であり、1人でも悠々と生きていけるだけのキャリアと経済力を待った第一線でバリバリ働く女性である。


 もしも、父と離婚するような事があれば、僕は何の躊躇いもなく妹の絵梨香と一緒に母について行くつもりである。


 お国柄もあり日本人の女性に対する感覚から相当に外れた僕の母は好き嫌いが非常ハッキリとしていて物事の考え方は私情を挟まず無慈悲なまでに合理的である。


 そんな母が何故、父のような甲斐性無しの異国人と結婚して遠い異国の日本に嫁いできたのがよく理解出来ない。


 小さい頃に母に"どうして、父の結婚したの"と尋ねた事がある。

 その問いに母は"貴方も大きくなれば分かるわよ"と言って笑って答えたのを覚えているが、この歳になっても未だに僕には全くもって理解できない。


 母は教育熱心であるが度を超える事は無い、教育を子供への投資と考えていてそのコスト効果を合理的に判断し見合わないと判断すれば何も言わない。

 ただし、良いと判断すれば有無を言わせ無いところがあり僕や絵梨香が"女帝"と言う理由がそこにある。


 僕と絵梨香が日本語の他にも英語とドイツ語の2カ国語が難なく話せるのも幼い頃からの母の教育のおかげである。


 だが、そんな母にも弱点がある。

 自分の欲望に素直過ぎるのである。

 その一つが家にある日本刀の山である。

 父の所有する、ほんの数振りを除き全て母の欲望と衝動買いの塊である。

 高額で偽物を掴まされる事もあり、流石の父も職業柄、見過ごせず母が勝手に日本刀を購入しないかを神経を尖らせて監視している。


 結果、購入の際には必ず父が付き添うのが恒例となっている。

 高値で売りたい売り手の業者からすれば無監査刀匠の父は考えうる最悪の付き添いである。

 その甲斐あって、父が付き添うようになってからは偽物を掴まされる事は無く言い値より遥かに安く購入できている。

 売り手も父の事を知っている場合が多く適正価格での売却を余儀なくされるのである。


 近頃は、近場の業者間のブラック・リストにその名が載ったらしくかなり警戒されているようである。

 なので、大規模な骨董市に出向き掘り出し物を漁るようになっているのだがそれが2人にとっていいコミニュケーションの場となっている。


 それともう一つ、母には困ったことがある。

 それは、桁外れの呑兵衛だと言う事だ、その燃費の悪さは60年代V8エンジンのアメ車以上である。

 

 カーゴの整備や運用スケジュールで年に数回の一週間ほどの休暇があるのだがその時のビールの消費量は居酒屋並みで缶ビールでは追いつかないのでビール・サーバーを置いているぐらいである。


 子供の頃は、休暇で真昼間から呑んだくれている母を見ると無性に嫌だったが今ではその気持ちが理解できるようになっている。

 僕に出来るのは料理を作ってあげるぐらいのなので、母のために料理をしているうちに料理の腕が上がってしまった。

 おかげで家を出て1人暮らしになっても食に関しては困らない自信はある。


 コップ一杯のビールで顔が真っ赤になる父とは次元が違う。

 僕の心配は妹の絵梨香もその血を引いていないかで、その答えは絵梨香が20歳になった時に出る。


 以上が僕の母である。



 僕は……第二章

 〜 女帝・我が母 〜


  終わり

 

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