〜 メリッサ来たる ① 〜
〜 メリッサ来たる ① 〜
12月28日、僕は成田空港の国際線ロビーでメリッサの乗った飛行機が到着するのを待っている。
外はあいにくの雨だがそんなに雨は降ってはいない。
天気予報では明日から天気は回復し晴れ流ようだ。
明日は冬コミの初日である。
今回は、一般参加なのであの気の遠くなるような行列にら並ばなければならない、寒空の下て雨に降られてはたまったものではないからである。
願わくば天気予報が当たる事を心から望む僕であった。
そうしていると、メリッサの乗った飛行機が到着した事を知らせるアナウンスが流れ、暫くすると乗客達がゾロゾロとゲートから出てくる。
僕は乗客達を目で追いメリッサの姿を探していると……
「カネツグ!」
聞き覚えのある懐かしい声が僕の名前を呼ぶのが聞こえる。
慌てて声のする方に視線を移すとメリッサが立っている。
赤のチェックの長袖シャツにジャケットを羽織りズボンはジーパン、背中にリュックを背負いキャスター付きの大きなトランクを引いきながら僕の方に早足で近付いてくる。
「メリッサ!よく来たね」
「長旅、疲れていないかい?」
僕が心配そうに尋ねるとメリッサは力無く笑う。
「疲れていない……って言うと嘘になるわね」
「でも、日本に来れた事の方と……」
「カネツグの顔見たらどっか行っちゃったわ」
メリッサはそう言うと僕にハグをする。
身長差があるので、ちょうど僕の顔がメリッサの胸の辺りになるのである。
僕はメリッサの柔らかい胸の谷間に顔を埋める事になるのであるがメリッサはそんな事など全く気にしてはいない。
他人が側から見れば出迎えに来た弟に姉がハグしているか……
下手をすれば母親が子供をハグしているように見えるのだが僕にはそんな事は知る由もないのである。
僕にハグし終えると今夜泊まる予定のホテルへと向かう。
メリッサからホテルの住所を聞いて僕は少し驚くのだが……
早めに予約をしたのにも関わらずアクセスの良い都内23区のホテルは既に満杯で少し離れた所のホテルにしか予約できなかったそうだ。
とは言え駅の近くにあるビジネスホテルで公共の交通機関へのアクセスは良い所を選んでいる。
複雑な日本の電車を乗り継いでホテルに到着した頃には5時過ぎになっているのであった。
「カネツグのナビが無ければ……」
「私、確実に迷子になってます」
複雑怪奇な日本の鉄道網と人の多さにメリッサは少し疲れ気味に言う。
ホテルにチェックインすると部屋へ荷物を置きに入る。
「なかなか、いい部屋だね」
部屋に入って僕がそう言うとメリッサも頷く。
最近できたばかりのビジネスマン向けホテルなので電子レンジやズボンのシワを伸ばすホットプレス、靴の乾燥機まで備えられている。
「日本のホテルは備品も揃ってデポジットもありません」
「フランスでは考えられないです」
メリッサが驚くのも無理はないのである。
海外のホテルは歯ブラシから始まってアメニティなどの備品はホテル代とは別に請求される所が普通です。
それにデポジットと言われる委託金を請求される事があります。
これがまた高額な事があり宿泊料金の10倍近い額を請求される事があります。
特にフランスのパリのホテル代の高さは世界でも群を抜いて高いので、それが普通のメリッサ達から見ると日本のホテルは激安で設備も良いと思って当然です、しかもチップも不要です。
「疲れただろう、今日はゆっくりと休むといいよ」
「明日から動き始めようか」
「お腹、空いてない?」
僕はそう言うとリュックの
中から空港に来る途中にコンビニで買っておいた"おにぎり"とペットボトルの"お茶"を取り出す。
「Wow!」
メリッサは驚きの声を上げる。
僕達からすればただのコンビニのおにぎりとペットボトルのお茶なのだがメリッサの目から見ればコレぞ日本を代表する食べ物の一つなのである。
種類の違うお茶のペットボトルが4本とおにぎりが8個、それに唐揚げ◯んが2つである。
コレを用意したのは、素泊まりのビジネスホテルだと事前にメリッサから知らされていたからである。
半分死んでいたメリッサの目に輝きが戻ってくるのがわかる。
「それじゃ、遠慮なく……」
メリッサはそう言うとおにぎりに手を伸ばすのだ……
「どれが……いいなか……」
どれにしようか悩んでいる。
"これは……salmon……これは……」
少しばかり悩むと塩おにぎりを手にする。
包装を開けるとおにぎりにかぶり付く。
「ん〜〜美味しいです」
「でも……中に何も入っていません……」
メリッサは何も具が入っていないのでガッカリしたようである。
あまりにもメリッサがガッカリしているので僕は"塩おにぎり"の事を説明する。
「Oh!そうなんですか」
「私、ハズレを引いたのかと思いました」
あまりに真剣なメリッサの表情に僕は思わず笑いそうになる。
「カネツグ……少し酷いです」
メリッサは少しむくれてしまうのであった。
その後、おにぎりを4個と唐揚げ◯ん、ペットボトルのお茶を飲み干しすと急に元気が無くなる。
どうやら眠くなってきたようである。
直行便とは言えフランスから日本まで14時間はかかる、時差も有り疲れていて当たり前なのである。
「暫く、横になるといいよ」
僕がそう言うとメリッサはフラッと立ち上がり素直にベッドの方へ移動する。
ベッドの前で急に立ち止まる。
すると、いきなり服を脱ぎ始める。
「えっ!」
「ちょっと!メリッサっ!」
僕が焦っている間にメリッサはシャツを脱ぎ、さらにジーパンも脱ぐとブラとパンツの下着姿になり、さっさとベッドに入ってしまった。
当然、本人は全く気にしてはいない……
僕は普段から絵梨香の醜態を見慣れているとはいえ、流石に焦ってしまうのであった。
メリッサは直ぐに寝てしまい、安らかな寝息を立てている。
ベッドの横の時計を見ると午後6時過ぎであった。
"今日は、このまま退散するかな……"
僕は気持ち良さそうに寝ているメリッサの寝顔を見るとベッド横のサイドチェストに備え付けられてるメモ用紙にボールペンで置き手紙を書きわかりやすくテーブルの上に置く。
おにぎりとペットボトルのお茶はそのままにして部屋の照明をナイトモードに切り替え、暖房の温度を確認し部屋をそっと出て行くのであった。
その後、目を覚ましたメリッサは薄暗い部屋の中で呆然としていた。
「あれ……私……」
「そうか……疲れて寝ちゃったんだ」
「カネツグは……」
ベッドから起き上がる、時計の針は午前4時過ぎをさしてる。
ふと自分が下着姿だと言う事に気付く。
「えっ!」
「私ってばいつもの癖で脱いじゃったんだ!」
「それも、カネツグの前で?」
「きっ!記憶が無いっ!」
「待って!落ち着くのよメリッサ・ベルナールっ!冷静になって……」
焦るメリッサは自分自身に落ち着くように言い聞かせると部屋の照明を点ける。
すると、テーブルの上に置かれた置き手紙に気付く。
ベッドの脇には綺麗に折り畳まれた自分の服が置かれている。
恐る恐るテーブルの手紙を手にすると目を通す。
"長旅お疲れでしょう"
"今日はこのまま帰ります"
"おにぎりとペットボトルは……"
"置いて行くのでご自由にどうぞ"
"明日の朝7時ぐらいに連絡します"
"ご存知だと思いますが……"
"明日のコミケは会場は……"
"凄く混雑して体力が必要です"
"明日に備えてゆっくりと休憩してください"
手紙を読んでメリッサは小さなため息を吐く。
「何も……(エッチな事)していないの……」
「私って……カネツグにとっては……」
「そんなに魅力の無い女なのかしら……」
絶望したように呟くメリッサであった。
フランス人女性からすればこの状況で何もしてくれないと言うことは女として魅力が無いと捉えてしまうのである。
メリッサにとっては1人の女としてかなりショッキングな事である。
コレも日本とフランスの恋愛観の違いである。
日本人の恋愛観では普通、日本の男女は知り合って数回デートしてキスしたりエッチな事をしたりする。
そして、結婚してから子供を作るのが一般的な道筋なである。
しかし、フランスは違っているのである。
知り合って気が合えば直ぐにキスしてエッチな事をする事が普通である。
やる事をやって自分に合うかどうかを見極めてから付き合い始めて良ければ同棲を初める。
そして、破綻せずに同棲が続き子供をが出来てようやく結婚しようかなと考え初めるのである。
フランスには一緒に暮らしていて子供が出来ていても法的に結婚していないカップルが沢山いるのです。
法的にも事実婚として扱われ各種社会保障も受けられます。
この手の事に関してフランスは日本とは比べ物にならないぐらいの先進国です。
要するに日本人とはかなり順序も考え方も違っているのである。
日本人の男女がフランス人と付き合う時は要注意である。
フランス人はエッチな事したからと言って、合わないと思えばそれで終わりです。
フランス人にとってはスキンシップは凄く重要な事なのです。
夫婦でベッドが別々だなんて考えられないのです。
それは、離婚を禁ずるカトリック教徒が多い国である事も関係しています。
国民の約9割がカトリック教徒なので離婚が難しいのです。
双方同意の円満離婚でも手続きに早くて半年、1年以上かかる事も普通です。
その間に何回も裁判所に出向いたりしなければならず大変なのです。
なので、どうしても結婚にはとても慎重になってしまいます。
付き合うまで、結婚するまでの"お試し"が当たり前なのです。
一方で同じキリスト教でも米国はカトリック教徒は2割ちょっとです。
半数はプロテスタントで離婚を禁じていませんから比較的簡単に離婚ができますが……あの国は慰謝料がとんでもない額になります。
お金持ちが結婚して離婚の時に莫大な額の慰謝料を支払うのは当たり前です。
米国には離婚成金ってのも沢山いますから。
大富豪の1人娘のリンダがそう言った財産目当ての男に騙されないようボリスが監視しているのもコレが一番の理由です。
「まぁ……カネツグは日本人だから……」
「こんなものなのかもしれないわね」
「カネツグって思った以上に手強いかも」
メリッサは小さな声で呟くとテーブルの上のペットボトルのお茶を一気に飲み干すのであった。
日本の恋愛観にはそれなりの知識があるメリッサであった。
その頃、僕は自宅で熟睡しているのであった。
如何なる状況でも僕の、高野山の修行僧の如きライフサイクルは微動だにしていないのである。
〜 メリッサ来たる ① 〜
終わり




