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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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 〜 和泉家の日常  ① 〜

 〜 和泉家の日常  ① 〜




 12月26日、朝から我が和泉家は大掃除であるのだが……

 何故か僕1人だけしかいない。


 母はともかく父と絵梨香の2人は何やかんやと理由を付けて早々にトンズラしたのである。

 母のハンナは仕事柄しかたがないのだが、父と絵梨香は明らかにトンズラである。


 ……と言う訳で僕は1人で黙々と大掃除に精を出している。

 よくよく考えてみれば、今までずっと僕が1人で炊事に洗濯諸々の家事全般から家計もしていたのである。


 "はあ〜"

 思わず溜め息が漏れる僕であった。

 "はて?何か気がかりな事があったような……"

 僕は何か大事な事を忘れているような気がする。

 "あっ!思い出したっ!!"

 "我が家の家計だっ!!!"

 僅か4ヶ月で家がこの有様である。

 家計のことを思い出して顔から血の気が引いて行くのを感じる。


 手にしていた雑巾をそのままにして和室へ直行する。

 押し入れの中から手提げ金庫を取り出すと恐る恐る金庫を開けて中を確認する。

 意外にも金庫は全くの手付かずであった。

 通帳の記帳記録は4か月前で止まったままである。

 家を出る前に各封筒に振り分けておいた生活費などのお金もそのまま残っている。

 あの2人、今までの4か月間をどうやって生きてきたのか僕には不思議で仕方がない。


 母のハンナは週末に寝に帰ってくるだけのようなものだからわからなくはないのだが、父と絵梨香はそうではない。

 "G"と張り合える生存能力の高さに僕は唖然とするだけであった。


 確かに父は刀匠として駆け出しの若い頃は超ド貧乏だったようなのでわからなくはないのだが、絵梨香は違う大飯食らいの上に生活力皆無であるからだ。


 後に2人に事情を聞くと……

父は銃刀法に触れないカスタム・ナイフなどを打って知り合いの業者に卸して現金を得て、絵梨香はと言うとテニスの試合で何度か入賞した際の賞金と景品として貰った物を換金していたそうである。

 母のハンナは初めからお金持ちであるから何の問題もない。


 この2人は生活力は無いが生存能力と稼ぐ力はあるのだとつくづく思う僕であった。

 僕がいなくてもこの2人は生きていくという事に関しては大丈夫だと確信できたのだが、同時に短期間でゴミ屋敷を錬成するのはそれ以上に大問題である。


 4か月で溜め込んだゴミは袋に26個分である。

 幸いにも一般ゴミで処分出来るものでリサイクルに回さなければならないような粗大ゴミは殆ど無かったのが救いである。


 丸一日がかりで何とか床を覆い尽くしていたゴミの処分は終わった、明日はゴミで燻み"G"が這い回った床を磨きワックスがけをするつもりである。

 今度こそは父と絵梨香を動員するつもりである……などと考えていると玄関戸の開く音がする。


 どうやら、父が絵梨香のどちらかが帰ってきたようである。


 リビングに入って来たのは絵梨香だった。

 通学用のショルダーバッグを背負い手にはテニスラケットを持っている。

 「うわ、綺麗になってる」

 リビングが綺麗になっているの見て感動したようである。

 「あっ……にっ兄さん……」

 僕の顔を見て絵梨香が少し焦っているのが分かる。


 「明日は何か用事とかある?」

 「無いならゴミ出し手伝って欲しいんだけど……」

 僕が絵梨香に明日の予定を尋ねる。


 「明日は……えっと……」

 必死で何か用事が無いかと考えている。

 余程、掃除するのが嫌らしいのが手に取るようにわかる。


 「絵〜梨〜香〜」

 僕はニッコリと笑って絵梨香の名前を呼ぶ。


 「はい……ゴミ出し手伝わせていただきます」

 絵梨香は観念したかのように言うのであった。

 同じようにして父にも掃除を手伝ってもらう事になる。


 この日の夜は久しぶりに僕が料理をする。

 メニューはすき焼きである。

 食材も買い足したので、ようやくまともな物が食べれるようになったのであった。


 これで27日をもって我が和泉家はようやくゴミ屋敷ではなくなる算段がついたのである。


 その日の夜、すき焼きを美味しそうに食べる父と絵梨香の様子が今でも僕の記憶に残っている。


 

 

 

 


 〜 和泉家の日常  ① 〜


  終わり


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