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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 年の瀬の街と人々 ③ 〜




〜 年の瀬の街と人々 ③ 〜



 僕のコスプレ騒動も落ち着いていよいよ日本に帰国する日が近付いてくる。

 街はクリスマス気分一色である。

 街のあらゆる所にイルミネーションが輝き今年も後少しで終わりである。


 しかし、僕には関係は無いのである。

 キリスト教徒でも無ければ一緒にクリスマスを過ごすような相手もいないからである。

 毎年の事なので今までは気にもしなかったのであるが……

 異国に1人で暮らしているためか何故か今年は独り身の寂しさを感じてしまうのであった。


 よくよく考えたら、ここは異的大陸・亜米利加合衆国……

 キリスト教徒の国でありクリスマスは一際華やかで活気があるのである。

 僕が暮らしていた日本の片田舎とは周りの雰囲気が全然違うのである事が原因ではないかと気付く僕であった。




 ところ変わって、ここは日本の東京都東⚪️山市……

 長澤由紀子の出身地であり実家もそこにある。

 東⚪️山市は電車での東京都内へのアクセスが非常に良く長澤さんは実家から会社へ通っていたのだった。


 年末も近いので職探しは来年からする事にして暫く実家でのんびりと過ごしているのだったのだが……


 「由紀子、会社辞めたんなら家業継ぐか?」

 「家でゴロゴロしてても仕方がないだろし」

 家でゴロゴロしている長澤さんの様子を見て父親が諭すように言うと長澤さんは外方を向く。


 長澤さんの実家は知っている人は知っている、東⚪️山市の特産品のサツマイモの農園を経営する農家である。

 それなりの規模と歴史があり地元では名の知れた豪農でもあり長澤さんはその1人娘でもあるのだ。

 父親としては婿でも取って後を継いでほしいのだが……

 当然、長澤さんにその気は全く無いのである。


 「嫌よ、私は農業なんて向いていないから」

 長澤さんはそう言うと父親は小さなため息を吐く。

 こんな所でも、農家の後継者問題は深刻なのである。


 そうしていると長澤さんの携帯電話からメールの着信音が流れる。

 長澤さんは携帯電話を手に取るとメールを確認する。




 "拝啓 ご無沙汰しております。"


 "その節は大変お世話になりました。"

 "12月24日の17時10分頃に成田に到着予定です。"

 "是非、お会いして直接お礼を言いたいので25〜27日間でご都合の良い日をお知らせください。"


   "和泉 兼次"




 メールを読んだ長澤さんの表情に精気が甦る。

 "私はいつでもOKよ"

 "なんせ、無職ですから……"

 長澤さんは心の中で自虐的に呟くのであった。

 しかし、自分から無職のニート状態である事は言わなかった。

 その事を言ってしまうと僕が気にすると思ったらである。


 長澤さんは時差を考慮して25日の午後、クリスマスの日に会う事をメールで送信するのであった。

 本当は24日のクリスマス・イブの夜が気分的にも良かったのだが……

 何にせよ、長澤さんにとっては"クリスマス・プレゼント"のような出来事であった。


 長澤さんからの返信のメールに目を通した僕は25日の予定を考える。

 街はクリスマス気分真っ盛りである。

 広場には大きなモミの木が据えられイルミネーションが輝き多くの人々が行き来している。


 1年で最も活気のある時期でもある……

 そんな中、僕は1人で寮にいた。

 "皆んな……楽しそうだな……"

 寮の窓の外を観ながら僕は1人虚しく呟く。

 窓の外では1組のカップルが楽しそうに話しをしている。

 そして、時より抱き合うとキスをしているのである。

 居た堪れずにふと視線を逸らすと木の枝に赤茶けた枯葉が一葉だけ落ちずに残っているのが目に入る。

 "お前もか……"

 寒風に吹かれ小刻みに揺れる枯葉に何故か親近感を持つ僕である。

 暫く、ボォ〜っと風に吹かれる枯葉を見ていた僕であったのだが……

 最後まで頑張っていた枯葉はすぐに風に飛ばされてしまうのであった。

 何故か涙が出そうになる。


 僕の窓の外でイチャイチャしていたカップルであるが……


 「ねぇねぇ、あの……」

 「凄く可愛いわね」

 「たまに学食見かけるけど……」

 「あの様子だと、彼氏とかいなさそうね」

 彼女が窓辺で佇む僕の姿を見て言う。


 「ああ〜あ……あの子……」

 「……男だよ……」

 「カネツグ・イズミって言う日本人だってさ」

 彼氏が少し困ったように僕の事を女の子だと勘違いしている彼女に伝えると"えっ"と言う表情になる。

 「僕も始めは女の子だと思ってたよ」

 「女の子だと思って告りかけた奴がいるぐらいだから」

 「結構な有名人だよ、本人は全く気付いていないみたいだけど……」

 彼氏はそう言って少し笑うのだが……


 「嘘っ!本当にっ!」

 「どう見ても女の子にしか見えないんですけど……」

 彼女は信じられないと言う表情で僕の方をジッ見る。



 元々、欧米人の目には東洋人は実年齢よりも遥かに若く幼く見える事が多々ある。

 身長が160センチに満たず、髭も全く生えていないうえに日本人から見ても女の子顔の僕は欧米人の目には何処から見ても女の子にしか見えないのである。


 「カネツグ・イズミ……日本人……」

 彼女は何か心当たりがあるように考えている。

 「あっ!もしかして噂のリンダの想い人って……」

 「あの子なのかしら」

 彼女がそう言うと彼氏が少し驚いた表情になる。


 「リンダって、リンダ・ロレンソのことかい?」

 彼氏はリンダの事を知っているようである。

  

 「そうよ、あのリンダ・ロレンソよ」

 彼女がそう言うと彼氏は何かに感心したように頷き窓の方に視線をやる。


 彼氏が驚き何かに感心したのには理由がある。

 リンダはテキサスの石油で財を成した1族の1人娘である。

 その総資産は100億ドル(1兆5千億円)に達する米国でも屈指の大富豪なのである。

 つまり、"逆玉の輿"になり得ると言う事であるからであるが……

 ボリスが言っていた"危惧"とは財産目当てでリンダに近寄る者達の事である。


 僕、はそんな事は全く知らないのであるのだが、他の生徒達からすればそうでもないのであった。




 日が傾き、何事も無く1日が終わろうとしている。

 明日から冬休みに入る、明後日には僕は日本へと帰国する事になる。


 4ヶ月ぶり日本、そして我が家……

 懐かしい人達……

 僕は日本の事を想いながら眠りに就くのであった。


 そして、今年最後の授業を終えて僕は寮へと向かっていると

 「カネツグ」

 背後からぼくを呼び止める声がする。

 振り向くとそこにはソヒョンが立っていた。

 「今日で授業は終わりね」

 「いろいろあったけど来年もよろしくね」

 ソヒョンはそう言うとニッコリと笑う。

 僕も同じように年末の挨拶をする。

 「ところで、カネツグはいつ日本に帰るの?」

 ソヒョンの問いかけに僕は明日の早朝の便で帰る事を伝える。

 「そう、明日の早朝か……」

 ソヒョンはそう言うと何が言いたそうにしている。


 「何かあるの、言いなよ」

 僕がそう言うとソヒョンは僕のすぐ真横に来る。

 そして、言いにくそうに小さな声で耳元で囁く。


 「この前はごめんなさい……」

 僕はこの前のボリスさんとの件の事が脳裏をよぎる。


 「……」

 僕は目を細めてながらも何も言わずにソヒョンの表情を伺う。


 「もう、いいよ」

 僕が少し笑って言うとソヒョンは安心したような表情になる。

 「で……ボリスさんとはどう……」

 僕が問いかけるとソヒョンは僕から視線を逸らした。


 僕は、そんなソヒョンの表情と様子を伺うっていると1人の女生徒が僕に声をかけて来る。


 「カネツグ・イズミくん……」

 僕とソヒョンは慌てて声のした方に視線を移す。

 声をかけてきた女生徒は、以前に食堂で会議をしていた共同プロジェクトのメンバーの1人であるマギーだった。




〜 年の瀬の街と人々 ③ 〜


 

 

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