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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 日本ポップカルチャー同好会 ⑤ 〜

〜 日本ポップカルチャー同好会 ⑤ 〜




 12月に入り街は一気に年末の雰囲気に包まれる。

 キリスト教徒が多いこの国ではクリスマスを家族や恋人と過ごす事はとても重要な行事の1つである。

 戦争すらクリスマスまでに終わらせようとするぐらいの国なである。


 当然、スタンフォード大学の学生達もそれは同じである。

 生徒は勿論の事、大学の職員達や教授達も同じである。

 よって、クリスマス・イブの2日前の12月22日から1ヶ月間の冬休みが始まるのである。

 2日もあれば帰る事ができるからでもある。


 そんなこんなで、僕も日本に帰る事になる。

 そのつもりで早めに飛行機のチケットをとってある。

 現地時間で12月23日早朝の便である、理由は平日の早朝便は運賃が格安なのである。


 メリッサからは日本時間12月28日の午後4時の便で成田空港に到着する予定とメールが届いている。

 東京で行われるイベントに合わせての来日である。


 メールの内容だと1週間くらい日本に滞在する予定で、僕にナビして欲しいそうである。

 東京近郊で行きたい場所のリストも送られてきているので無理のない予定を考えている。

 予定が決まればメールを送る予定である。


 後、島本さんにもメールを送ってあるが今のところ返信はない、絵梨香にもメールを送ってある。

 久しぶりに帰る我が家はどうなっているのか少し不安である。

 正直言うと、ゴミ屋敷になっていないか不安なのである。


 まぁ、僕としては日本に帰ったら日本の飯を食べまくる事が最大の楽しみであるのだが……



 そんな12月のある日の事……

 僕がいつものように1人で学食で昼飯を食べてのんびりとコーヒーを飲んでいるとソヒョンが声をかけてくる。


 「カネツグ、元気」

 ソヒョンはそう言うと僕の席の前に座る。

 「相変わらずボッチ飯してたの」

 ソヒョンは僕がいつもの1人で昼食を食べている事を知っている。

 因みに、ソヒョンもそうである。


 僕は、ボッチ飯を食べているのは僕だけではないので全く気にはしていない。

 寧ろ、ボッチ飯を食べている学生の方が多いからである。

 

 「そう言う、ソヒョンはどうなの……」

 僕が意地悪そうに尋ねるとソヒョンはニッと笑う。


 「私もボッチ飯よ」

 「韓国でもボッチ飯が多かったから……」

 ソヒョンはそう言うと少し寂しそうな表情になる。

 「韓国じゃボッチ飯してると友達がいないと思われるのよ」

 「最近じゃ、そんな事ないけど」

 「韓国の同級生達は、私が男子カネツグと一緒ご飯食べてるのを見たらビックリするでしょうね」

 そう言ってソヒョンは笑う、その笑顔には一片の曇りもなかったのであった。


 "ソヒョンも随分と変わったな……"

 僕はそんなソヒョンの笑顔を見て何故か嬉しく感じるのであった。



 「あっ、そう、カネツグって……」

 「誰か付き合っているおんななんかいないわよね」

 ソヒョンが思い出したかのように言う。


 「なんか質問の仕方が変じゃない」

 「普通は"いるの?"って聞かないかな?」

 「始めから"いない"事を知ってて聞いてない?」

 僕が不愉快そうに目を細めて言うとソヒョンは知らないフリをするかのように視線を逸らす。

 似たもの同士、相手の考えている事がわかると言うのは、ある意味で話をふりにくいのである。

 当然、僕もソヒョンもお互いにその事に気付いているので雰囲気が悪くなると言う事はない。


 「じゃ、言い方を変えるわね」

 「カネツグは"好きな人"いる?」

 ソヒョンの問いかけに僕は暫く呆然とする。


 「その表情だといなさそうね」

 僕の顔をマジマジと見てソヒョンはそう言うと少し困ったような表情になる。

 「じつは、カネツグの事を"紹介して欲しい"っている子がいて……」

 「2つ上の人なんだけど……」

 「どうかな……」

 僕はソヒョンの方をジッと見ていると何となく事情が判ってくる。


 "なるほど、先輩に頼まれて仕方なしか……"

 "まぁ、ソヒョンの顔を立てて会うだけならいいかな……"

 一瞬で事情を正確に把握する僕であったのだが……

 「会うだけなら、いいよ」

 僕はソヒョンに答えるとソヒョンは少し申し訳なさそうな表情になる。


 「そんな顔しなくていいから」

 僕は笑顔でそう言うとソヒョンの顔が少し引き攣るのがわかる。

 そして、その日の夕方、キャンパスの噴水の前で待ち合わせする事となるのであった。



 午後の授業を終えてから自室に戻った僕はそれなりの服装に着替えて髪の毛を整える。

 時間になると部屋を出てキャンパスの噴水へと向かうのであった。


 入学式の時に僕が飛び込もうとした噴水で待ち合わせの場所としては東京の某犬の銅像のような場所である。


 歩いていると噴水が見えてくる。

 誰もいない午後の噴水前に人の姿が2人……

 1人はソヒョンなのがわかる、そしてもう1人……

 "あれ、なんだか……"

 "凄く大きな人だな、絵梨香といい勝負だ"

 遠くから見た時はそう思っていたのだが……

 "なんだか随分と体格のいい女の人だな"

 僕はそう思いながら近付いていく。

 "あれ……男の人……"

 僕は某映画のターミネーターのような男性である事に気付いて頭の中が真っ白になる。

 その男性の少し離れた後ろに視線を逸らすとソヒョンが両手を合わせて"ごめん"のポーズをとっている。


 一瞬で体中から血の気が引いていくのがわかる。

 僕はソヒョンの方にもう一度視線を移す。

 僕の視線に居た堪れなくなったのかソヒョンは何度も何度も手を合わせて頭を下げている。


 "これ、どう言う事……"

 僕の脳みそは完全に混乱状態である。

 完全に固まっている僕に男性が話しかけてくる。


 「私は"ボリス・グレイマンだ、よろしく」

 男性は名乗ると握手を求めてくる。

 僕は無意識に手を出し握手を交わす。


 「失礼だが、君は男性なのか?」

 ボリスの突拍子もない質問に僕は唖然とする。


 「はい……男性ですけど……」

 僕は呆気に取られながらもボリスの問いかけに答える。


 「そうか……本当に男なんだな……」

 ボリスは信じられないと言う表情をしながら僕を頭のてっぺんからつま先までを見る。

 「君は"リンダ・ロレンソ"と言う女性を知っているか?」

 ボリスの問いかけに僕は首を横にふる。

 「そうか……知らないんだな」

 今度は僕が首を縦に振るとボリスは安心したからような表情になる。

 「……と言う事は……そう言う事か……」

 ボリスは独り言を言うと何か納得したようだった。


 僕はボリスのそんな素振りを気にしながらもふと視線をボリスの直ぐ後ろに移すとソヒョンが笑いを堪えるのに必死になっている様子が見える。


 "ソヒョンーーっ!"

 僕は心の中で恨みを込めてソヒョンの名を叫ぶ。


 「忙しい中、急に呼び出してすまなかった」

 「それに、君は私が危惧するような人物ではなさそうだ」

 ボリスはそう言うと深々と頭を下げると訳を話し始める。


 ボリスの話だと、リンダはボリスの従妹になるそうだ。

 リンダはテキサスの石油で財をなしたお金持ちの1人娘のお嬢様でリンダの両親から世間知らずの1人娘の事を頼むと懇願されているのだそうだ。


 今回、そのリンダに好きな人、(親父が特に気にしている事)ができたと聞いてどんな男かと思いきや外見が女だったので別の意味で少し慌ててしまったそうである。


 僕もボリスさんと同じように別の意味で焦った事は言わないでおいた。


 またまた、僕と親しいソヒョンと少し面識があったので訳を話し頼んで今回の僕に直接会う場を設けてもらったとの事である。


 一通りの事情を僕に話すとボリスはお礼を言って何事もなかったかのように去っていくのであった。


 後には僕とソヒョンが残される事となる。

 「ソヒョン〜っ!!!」

 僕の恨みの籠った声にソヒョンの顔が引き攣る。


 「ごめんなさいっ!」

 「お世話になっている先輩だし、仕方なかったのよっ!」

 ソヒョンはそう言うと両手を合わせてごめんなさいをする。


 「まぁ……事情も分かったし……」

 「気にしてないけど……」

 僕はそう言いながらも何か違和感を感じる。

 

 "こんな面倒な事しなくてもソヒョンなら僕が男だと知っているはずなのに……"

 そして、ある事に気付くのである。

 "もしかして……ソヒョンの……奴"

 僕は心の中で意地悪そうに呟く。


 「もしかして、ソヒョンって……」

 「ボリスさんのような男が好きなの?」

 僕の問いかけにソヒョンの顔が真っ赤になり引き攣る。

 以前に自分から好きな男性のタイプを言っていたからである。

 "背が高くて体格の良い男性が好きかな……"

 ボリスさんはソヒョンの好きなタイプの男性にピッタリと当て嵌まるからである。


 「何、何言ってんの?」

 必死で誤魔化そうとしているが心の中は丸見えであった。

 

 「なるほどねぇ〜」

 上手く僕を利用したって事だね。

 僕の正確な読みにソヒョンは諦めたような表情になる。


 「明日のランチ奢るからそれで許してよ」

 ソヒョンはそう言うと再び両手を合わせて今度はお願いのポーズをする。


 「コーヒーも付けてね」

 僕の一言にソヒョンは諦めたように首を縦に振るのであった。


 その次の日の僕のランチは普段よりも数段豪華なランチとなったのであった。


 それにしても、どうしても僕は身長も伸びなければ顎髭がすら生えないのだろう……

 毎日飲む牛乳とサプリメントをもう止めようと本気で思う僕であった。


 因みに、僕に顎髭が生えたら絶対に嫌だと絵梨香も母のハンナも言っていた事がある。

 ソヒョンに同じ事を聞いてみると……

 「カネツグに顎髭は絶対にダメっ!」

 絵梨香や母のハンナと全く同じ答えが返ってくるのであった。


 


〜 日本ポップカルチャー同好会 ⑤ 〜



  終わり

 

 


 

 



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