〜 日本ポップカルチャー同好会 ② 〜
〜 日本ポップカルチャー同好会 ② 〜
サミュエルとの会話が終わると僕は急いで自室へと戻りパソコンを起動する。
サミュエルが僕に見せたコスプレ写真の事が気になって仕方がないからである。
"とりあえず、ネット上を検索してみないと"
僕は心の中で不安そうに呟きながら検索エンジンにキーワードを打ち込み検索条件を設定すると画像検索をかける。
"そんなーーっ!!!"
ノート型パソコンの画面に表示された夥しい僕のコスプレ写真のサムネイルがタイル細工のよう表示されるのを見て僕は心の中で悲鳴を上げる。
"何故、こんな事になっているんだ!?"
"確かに、英語圏の限定の検索設定したはずなのに……"
焦って僕は設定に間違いがあるのではないかと思いもう一度再検索をかけるが結果は同じであった。
「恐るべし、インターネット……」
インターネットの拡散力の凄まじさに僕は思わず独り言を呟いてしまうのであった。
僕は、暫く放心状態だったが我に返ると再びパソコンに向かい僕のコスプレ写真の拡散状況を調べ始める。
元々、米国ではハロウィンの仮装行列と言うコスプレ文化があるのでコスプレ衣装の専門店も存在する。
その多くは、スーパーマンやキャプテンアメリカなどのアメリカンコミックのヒーローコスプレやスターウォーズなどの映画の衣装を販売している。
最近では、日本のアニメ・漫画のコスプレ衣装も扱うようである。
更に米国版のコスプレ専門雑誌も存在するのである……そして……
「こっ!コレはっーーっ!!!」
「まさか、そんな事がっ!!!」
コスプレmagazineの英語圏向けのdownload版が○mazonでリリースされている事を知って僕は驚きの声を上げる。
しかも、コスプレ雑誌の売り上げ上位にランキングされているのであった。
「そんな……よりにもよって○mazonだなんて……」
「既に世界レベルの拡散じゃないか……」
「しかも、"○mazonのお勧め"付きとは……」
僕は絶望したように呟くのであった。
ノート型パソコンの4K液晶画面に表示されたコスプレmagazineの見本の表紙には僕のコスプレ姿が鮮明に映し出されているのであった。
その、画面の中の自分自身の作り笑顔に世の中の無情をヒシヒシと感じる僕であった。
因みに、download版のコスプレmagazineの価格は10ドル(1500円)であった。
しかも既に、12万部がdownloadされているのである。
因みに、僕もその12万人の中の1人である。
コスプレmagazineのdownloadが終わると僕は恐る恐る画面にできたコスプレmagazineのアイコンをクリックすると高解像度の表紙が表示される。
雑誌の記事は全て英文に訳されており、僕のコスプレ写真のページには……"Uncensored"(無修正)の文字が太文字で記入されている。
他にもたくさんのレイヤーさんのコスプレ写真があるのだが、どのページにも"Uncensored"の文字は見られない。
僕のページにだけ、強調するかのようにわざわざ太文字で記入されているのである。
"何だか……誰かの意図的なものを感じるな……"
僕は心の中で不安そうに呟く、その誰かは容易に検討が付いたが僕は考えない事にするのであった。
「はぁ〜」
僕は疲れたように溜め息を吐くと○mazonの評価のページを開く……
"星、4.0ぐらいか……"
僕は星の数を見て呟くと評価投稿者のコメントを閲覧する。
当然、全て海外の人のコメントである。
「Oh, My Gad!」
「it's amazing!」
「It's really cute!!」
○mazonの評価コメントはサミュエルのそれとほぼ同じであった。
それと僕が一番気になったのは……
コメントを投稿したほぼ全員が僕の事を13〜14歳ぐらいの中学生だと思っている事である。
もっとも、それが僕の身バレを遅らせている最大の防壁となっていたのであるが……
僕はノート型パソコンの電源を落とすと溜め息を吐く。
"年末にメリッサと行く予定のコミケ……"
"何事も無ければいいんだけど……"
僕は少し不安になってくるのであった。
そんな年末の事を心配するよりも差し迫った事態が迫っている事を今の僕はまだ知らないのであった。
コスプレmagazineの海外版のdownload件数は12万を超えている。
その中に、スタンフォード大学の学生がいても何らおかしくないのであるが、それが同じ同好会内の顔見知りとなれば話は別である。
スタンフォード大学の工学部3年生、シェリル・ノートン……
3人いる日本ポップカルチャー同好会の女子会員の1人である。
イタリア系、ブラウンのショートヘアに身長165センチ、やや凹凸に欠ける痩せ型の眼鏡女子である。
「この子……何処となくカネツグに似ている……」
「まさか……でも……」
シェリルは小さな声で呟くとコスプレmagazineの表紙の僕の写真の顔の部分だけを切り出し保存する。
そして、別のアプリを起動するとツールを使って髪型、まつ毛、肌の色を加工し始める。
「間違いない……この表紙の子……」
「カネツグだわ……」
工学部でコンピュータサイエンスを専攻するシェリルにとっては動作もない事であった。
写真が完全な無修正であった事もありアプリを使って修正された僕の顔がそのままシェリルのパソコンの画面に表示されているのであった。
「カネツグも……同志だったのね」
小さな声で嬉しそうに呟くとシェリルの口元に笑みが浮かぶ。
そう、シェリルは日本のアニメとマンガをこよなく愛するコスプレマニアなのである。
これがきっかけでシェリルの僕に対する親近感は一気に近くなったのである。
因みに、シェリルはメリッサが僕に気のある事を全く知らない……
当然、僕とメリッサが年末に日本の某有名コミケに参加する事も知らないのである。
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