〜 2人目の異国の友 ⑤ 〜
投稿し忘れていました。
〜 2人目の異国の友 ⑤ 〜
渡米して数ヶ月が過ぎた。
ホームシックに悩まされてながらも、なんとかコレを克服し友達も出来て順調に大学生生活を過ごしていた……のだが……
"このままだと大変な事になるのでは……"
いつの間にか母国日本でのコスプレ写真がSNSで話題になっていた事に悩んでいる僕であった。
"幸いにもここは米国……"
"日本語の分かる米国人は少ないし"
"流石にコスプレmagazineは売ってないだろうし話題になる事はないだろう"
僕はたかを括って安心していたのだったが……
後に、現代の高度情報ネットワークを甘く見過ぎていた事を思い知らされる事になるのである。
その後も、メリッサとは昼食を一緒に食べたりと仲良くやっている。
その際に、メリッサに日本語の質問を受ける事がよくある。
いわゆる、4文字熟語のような漢字に関する質問が殆どである。
外国人にとっては漢字は鬼門であり、日本語を学ぶ殆ど外国人は漢字で一度は挫折する事になる。
世界的に見ても日本語の文章のように記述に平仮名、片仮名、漢字という3種類の文字を使い分ける言語は珍しい。
更に漢字はその複雑なスペルと音読み、訓読みの2種類の発音が存在し単体で意味を持つと言う象形文字なのである。
コレはアルファベット表記のみの欧米人からすればとんでもなく厄介な文字で構成された文章なのである。
更に、日本語はほとんどのヨーロッパ言語とはかけ離れた文法構造をしていると言うオマケ付きなのである。
ネットなどの普及により文字としてであれば検索と翻訳である程度の意味を知り得るようなのだが、これがアニメキャラの話す音声となると皆目検討が付かなくなるようである。
そんなこんなで1週間などあっという間に過ぎ去り、メリッサの帰国する日となった。
大きなリュクサックを担いだカントリールックスのメリッサの姿は、まるでヒッチハイクでもして帰るかのように見える。
僕がメリッサの側に近付いて行くとソヒョンと何かを話している。
僕が直ぐ側に来るとメリッサは僕の方を見てニッコリと笑う。
「ありがとう、カネツグ……」
「カレー美味しかったよ」
メリッサはそう言うと何か言いたそうにしている。
僕が不思議そうにしているとソヒョンがメリッサに耳元で何か言っているのが分かる。
「あの……カネツグ……」
「今年の年末、日本に帰りますか?」
メリッサの問いかけに僕はコクリと頷く。
そして、少し緊張したような表情になる……
「私、今年の年末に日本へ行きます」
「東京のコミケ・イベント行きたいです」
「私、1人だけ不安です」
「カネツグ、エスコートしてくれますか?」
日本語でのメリッサの突然の申し出に僕は少し戸惑うが……
「いいよ、年末に日本で会いましょう」
僕がそう言うとメリッサの表情が明るくなるのが分かる。
「Je suis heureuse……」
メリッサは小さな声でそう言うと僕を優しくハグするのであった。
"Je suis heureuse"はフランス語で"嬉しい"と言う意味です。
そんな僕とメリッサの様子をソヒョンは目を細めて顔を逸らし見ないフリして横目でシッカリと見ているのであった。
僕はメリッサとメールアドレスの交換をしテストメールが着信するかを確認する。
念の為に自宅のパソコンのメールアドレスと電話番号も交換するのであった。
「それでは、年末に日本でっ!」
メリッサは嬉しいそうに言うと足早に去って行くのであった。
僕はメリッサの姿が完全に見えなくなるまでずっと見送るのであった。
「カネツグ……」
「メリッサが居なくなって寂しいの」
ソヒョンが少し冷やかすような口調で僕に問いかけてくる。
「そうだね……寂しかな……」
そんなソヒョンの問いかけに僕は躊躇う事なく答える。
「ちっ!なんか面白くないわね」
ソヒョンは僕が正直に自分の気持ちを言った事が気に入らなかったのか小さな声で舌打ちするように言うのであった。
メリッサの姿が完全に見えなくなり僕は少し肩を落としトボトボと歩き出す。
「元気出しなさいよ」
「年末には、また日本で会えるんだから」
ソヒョンはそう言うと僕の背中をポンと軽く叩いた。
僕は、そんなソヒョンの心遣いに感謝するのであった。
「で……カネツグはメリッサの事……」
「どう思っているのかな?」
「好きなんでしょう」
「美人だしスタイルいいし……」
ソヒョンは興味津々な眼をして僕に問いかけてくる。
「そうだね、好きだよ」
僕は正直に答えるとソヒョンの顔が少し紅くなる。
「そっ、そう……」
僕があまりにも自分の気持ちを正直に言ったのでソヒョンは少し戸惑っているように見える。
「だったら……いい事、教えてあげる」
「本当は内緒なんだけど……」
「メリッサもアンタの事……好きみたいよ」
少し躊躇いながらもソヒョンはメリッサとの内緒話を僕に話してくれた。
「この事はメリッサには絶対に言わないでよ」
「いい、絶対にメリッサには言っちゃ駄目よ」
ソヒョンは何度も何度も執念く僕に念を押すのであった。
ただ、僕にはソヒョンは少し勘違いをしているのが分かる。
僕は確かにメリッサが好きだからそれは気の合う女の子だと言うだけで……
ソヒョンが思っていような"愛や恋"ではないのである。
そう言う意味では僕はソヒョンも好きなのである。
何となく、メリッサも僕と同じだと思うのであった。
12月の初めの出来事であった。
この時、僕は完全にSNSのコスプレ写真の事を忘れていたのであった。
そして、着実にネット警察の捜査の手が直ぐそこまで迫っているとは知る由もないのであった。
〜 2人目の異国の友 ⑤ 〜
終わり
今頃になって投稿し忘れている事に気付きました。
遅ればせながら投稿します。




