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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 2人目の異国の友 ④ 〜

 〜 2人目の異国の友 ④ 〜



 メリッサが短期留学生で、後1週間程でフランスに帰国する事を知り、僕は少なからずショックを受けていた。


 なんと言ったらいいのかわからないが、不思議と何故かメリッサとは昔からの幼馴染のような気がするのである。

 家が隣同士で幼い頃から知っているような感じである。


 メリッサが帰った後、テーブルの上に残されたりんごジュースの空き瓶をボォ〜っと見ているとなんとも言えない喪失感に襲われる僕であった。



 暫くして、ふとSNSで見た僕のコスプレ写真の事が頭に浮かぶ。

 "あっ!すっかり忘れてた"

 "とりあえずは島本さんに問い合わせのメールでもしよう"

僕は心の中でそう呟くと携帯でメールを打ち始める。

 

 メールを送信し終えると再びSNSの閲覧をし始める。

 夏のコミケで売り子をしていた僕のコスプレ写真がアップされていたSNSのコメント欄に恐る恐る目を通す。


 SNSの書き込み件数は2000件に達している。



 "夏コミで売り子してた子です"

 "スッゲー可愛かったです"


 "私、この子から本買った"

 "毎回、あのサークルの本買ってるけど初めて見る子だよ"

 "失礼ながらあのサークルのコスプレで断トツで可愛かった"


 "とても腐女子には見えないし"

 "まだ、中学生ぐらいじゃないの"

 

 "でも、見かけは可愛い、でも中身は腐女子……"

 "どっかの名探偵みたい"


 "あの子、男の娘だよ"


 "うっそーーっ!!!"


 "マジかっ!"


 "誰か嘘だと言ってっ!"

 "女としての私の立場が無いっ"


 "全く違和感がない、女の子だと思ってた"


 "完璧やん!"


 "もはや神レベルの女の娘コスプレ"

 "これ、普通に道頓堀歩いてたらナンパされるで"


 "この子、本当に男の娘なんか?"

 "どう見ても女の子にしか見えない"


 "マジ可愛い、妹にしたい"

 "本当は女の子じゃないの?"


 "隣りにいた子も男の娘なんか?"

 "凄くプロポーションが良かった"


 "隣の子は正真正銘の女の子だよ"

 "5月の京都フェスで会って話して写真撮ったから間違いない"


 "あの男の娘、知ってる"

 "夏コミケでコスプレした時に男子更衣室で会った"

 "儂の周りに居た奴、全員が女の子だと思ってマジでビビってた"

 "かく言う儂もビビッて思わず股間を隠した(笑)"


 "俺も、あの男の娘は知ってる"

 "男子更衣室の前で係のスタッフに女の子と間違われて止められてたわ"


 "あのサークルの関係者なんかな?"

 "確か、あのサークルってわりと有名な腐女子向けの薄い本出してる所なんじゃないの"


 "そうそう、某ゲームの薄い本で有名やわ、壁サークルやわ"

 "実は、あのサークルの本持ってる"

 "毎回のコスプレ衣装のレベルが異常に高い事でも有名やわ"

 "既製品やなくて全て手作業で仕立ててるオーダーメイド品みたいやで"


 "私もコス自作するからわかるけどもはや職人芸だよ、サークルメンバーにアパレル関係の人がいるんじゃないのかな?"


 "この子、今年の冬コミにも参加するのかな"

 "一回、生で見てみたい"


 

 この調子で書き込みは徐々に盛り上がりながら延々と続いている。

 流石に全て読む気にはなれないので下の方に移動した。

 書き込みの日付けは1ヵ月後になっていた。



 "この子、コスプレmagazineの表紙になってる"

 "思わず買ってもうた"


 "実は私も買いました"


 "私も買った"


 "表紙に釣られて買いました"


 "自分も初めてコスプレ専門誌を買いました"


 "私も表紙だけで即買いました"


 "キモいかも知れんがハッキリ言う、この子の等身大ポスターがマジで欲しい"

 "今まで見た男の娘の中で最高の男の娘!"

 "写真集とから出たら絶対に買う"

 (共感のポチが500)


 "同感っ!"


 "上に同じ"


 "同意するっ!"


 "心の友よっ!"


 "我が同志達よっ!共感のポチに感謝っ!"


 "コスプレmagazineに掲載されてた他のフォトも凄くレベル高い"

 "撮影したカメラマンが自負するぐらいのレベル"

 "それに、よくあるデジタル補正は一切していないと編集者が断言している"


 "完全天然物っ!"

 "日本男の娘無形文化財に指定すべし"


 "同意する"


 "同感です"


 "同じく同感"


 このような調子で書き込みは延々と続いている。

 

 SNSを見て僕は呆然とする。

 "いつの間にこんな事に……"

 僕は"夏コミ 男の娘"のキーワードで検索をかけて見ると……

 幾つものページがヒットする。


 ヒットしたページの幾つかに目を通して見る。


 既に"ネット警察"が僕の身元の洗い出しかかっているのであった。

 "これは、マズいぞ……"

 "このままだと、確実に身バレしてしまうかも知れない"

 ネット警察の捜査力を知っている僕は背筋がゾッする。


 そうしていると携帯電話にメールの着信音がする。


 僕の予想通り島本さんからの返信だった。

 メールの内容はと言うと……


 夏コミの直後から僕のコスプレ姿がSNSなんかで徐々に話題になっていたのだがネットによくある一時的なものだと島本さんも思っていた。


 しかし、コスプレmagazineが発売されると一気に"謎の男の娘"として話題になってしまったそうである。


 サークルの方にもメールで多数の問い合わせがあり、企業からの真剣な内容の問い合わせも何件かあったのだそうだ。


 中にはCMに使いたいとか某アニメ雑誌からは特集を組みたいなど、イベント企画会社からはイベントの参加依頼というのもあったそうだ。

 本人が未成年であると言う事を理由に説明して全て丁重にお断りしているとの事である。


 サークル内のメンバーにも固く口止めしているので今の所は僕の身バレはしていないとの事であったが"ネット警察"の足音が少しずつ近づきつつあるとの事。

 

 そして厄介な事に、特に長澤さんは、今でも僕の事を諦めておらず、僕が日本に一時帰国するのを待ち構えているそうである。

 因みに、僕がスタンフォード大学に留学している事も何処からか聞いて知っているとの事である。


 年末に日本に一時帰国帰するなら事前に教えて欲しいとの事であった。

 僕は出国前に携帯電話を買い換え電話会社も変えたので携帯電話の番号とメルアド変わり長澤さんの方からは連絡ができないのである。


 最後に"こんな事になってしまってごめんさい"と謝罪の一文が添えられてたのだが……

 あたりまえだが、島本さんにはなんの非も無い。

 全て僕自身が自分で蒔いた種である。


 当然、"謝罪の必要など全く、寧ろ僕の代わりに対処してくれて感謝しているぐらいです"と返信した事は言うまでもない。



 「はぁ〜」

 僕は思わず大きなため息を吐くのであった。

 "これで、もう絵梨香の荷物持ちも出来なくなったな"

 嫌だったはずの絵梨香の荷物持ちになんだか未練を感じる僕であった。


 メリッサが帰国する1週間前の出来事である。


 


 〜 2人目の異国の友 ④ 〜


  終わり





 


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