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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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〜 2人目の異国の友 ① 〜


 〜 2人目の異国の友 ① 〜




 昼の食堂……

 僕は凄く緊張している。

 何故なら、自慢ではないが生まれて初めて僕一人だけで女性と会うのである。

 しかも、初対面の外国人の若い女性である。

 この世に生を受けて19年、初めて事であり僕にとっては極めて高いハードルを越える出来事(大イベント)である。



 "顔は隅々まで念入りに洗ったし……"

 "歯も念入りに磨いた、髪の毛もちゃんと整えたし……"

 "身なりもよしっ!"

 僕は心の中で自分自身をチェックする……

 今から考えれば、明らかにデートか何かと勘違いしている僕であった。



 指定された、食堂の入り口で待っていると彼女メリッサが僕を見つけると、こちらに早足で歩いてくるのがわかる。


 多くの生徒の中でどうして僕が彼女メリッサを簡単に見つけられたのか……


 ソヒョンに見せてもらった携帯電話の写真より遥かに華やかで凄い美人、おまけにスタイルも物凄く良い。

 ソヒョンの言っていた通りにファッション雑誌のモデルのような容姿もそうだが……


 格子柄の長袖シャツにやや草臥れたジーンズ姿で足元も茶色の革の短ブーツで如何にもcountry感が滲み出てカーボウイハットを被れば馬にそのまま乗れそうである。

 

 この場合は、countryは"田舎"と言った意味合いである。


 ファッションなどには全く疎い僕ですら、容姿と服装のギャップに少し戸惑ってしまうぐらいである。


 カジュアルな服装にスニーカー履きの周り生徒達から明らかに浮き立つ存在である。


 彼女の事を僕に話した時のソヒョンの言葉を思い出す"凄い田舎育ちなのよ……"

 僕も田舎育ちでファッションセンスなど無く服装もさほど気にはしないのだが、ここまでとは思わなかった。



 そんな、僕であったが直ぐに彼女メリッサに対する印象は非常に良くなる。

 「は・じ・め・ま・し・て・」

 「い・ず・み・か・ね・つ・ぐ・さん・ですか?」

 「メリッサ・ベルナールです」

 なんとメリッサは日本語で僕に話しかけてきたのである。

 ハッキリ言ってコレは驚いた。

 ここスタンフォード大学に来て以来、全く日本語を耳にする事も話す事もなかったからである。


 母国語を忘れてしまうのではないかと不安になっていた僕にとっては何故か異常なほどに嬉しく感動してしまう出来事であった。

 もう、服装の事などどうでもよくなる僕であった。

 


 「はい、そうです」

 「メリッサ・ベルナールさん、お会いできて嬉しいです」

 思わず僕にも日本語で答えていた。


 コレが絶対に忘れる事のない、彼女メリッサとの初めての会話で交わした言葉であった。


 一緒に食堂へ入り昼食を食べる。

 米国の大学の学食は大学によってその質に相当な開きがあると言うが我が大学は良い方だそうであるらしいのだが……

 そのはあくまでも米国の基準であり日本を基準に考えては絶対にいけないのである。


 実際に見てくれれは悪いが味はそんなに悪くはない。

 しかし、カロリーは明らかに高めである。


 メリッサはパンにスクランブルエッグ、厚切りベーコンにサラダにコーヒー。

 僕はアジア風のガバオライスのような物とアジアン・ティにした。


 

 2人向かい合って昼食を食べ始めるとメリッサが僕に話しかけてくる。

 フランスの首都であるパリの人とは違い、フランス訛りの英語だが充分に理解できる。

 偉そうにそんな事を言ってるが日本人の英語もかなり酷いのだ……それに比べれば遥かにマシである。

 発音方が基本的に違うので仕方のない事である。


 

 ソヒョンの話していた通りメリッサと話していると日本のポップカルチャーに大変興味がある事が伺える。

 それと、美食の国フランスの出身だけあり日本料理にもかなりの興味があるようだ。


 特にアニメでよく登場する、ラーメンやカレーなどは一度本場の味を体験してみたいと力説している。


 最近では海外に多くの日本料理店があるのではないかと聞いてみると……

 "そんなのパリなんかのような都会の話……"

 "私の故郷じゃ、実家の半径50キロ圏内にまともな日本料理店なんで無いのよ……"

 "牛なら食べ切れないほどあるんだけどね」

 メリッサは自虐ネタを言うと溜め息吐く。


 僕はそんなメリッサを見ていると何だか気の毒に思えてくる。

 僕は渡米する際に幾つかのレトルト食品を持ち込んでいる。

 当然、レトルトの王様のカレーも持ち込んでいるのである。

 "とっておきのをご馳走するしかないな……"

 "パックご飯も一袋5人分ぐらいなら残ってるし"

 僕は日本でも美味しいと有名なとっておきのご当地カレーをメリッサにご馳走する事を決心するのであった。

 今まで食してきたレトルトカレーの中ではピカイチであるが、値段が高いのが欠点である、



 「もしも、よかったらレトルトだけど日本のカレーとご飯があるから……」

 「今度、食べてみない……」

 ぼくがそう言うとメリッサは"えっ!ほんとうにっ!"と言う表情になり……

 「勿論よっ!食べてみたいわっ!」

 ものすごい勢いで僕に言う、周りの人達が"何事か?"とこちらに視線を向けるのが分かる。


 「メリッサっ!声が大きいよっ!」

 周りの視線を気にしながら僕がメリッサに言う

 「本当だよ、ここへ来る時に日本から持ち込んだから」

 僕がそう言うとメリッサは満遍の笑みを浮かべる。

 何だかそれだけで僕は嬉しくなってしまうのであった。



 因みに、米国へのレトルトカレーの持ち込みは肉のエキスが使用されていると持ち込み出来ないのですがきちんと処理対応した物で有れば持ち込み可能です。


 僕が持ち込んだ物は海外からの観光客にも販売できるように処理された物だ。

 ……ですが、ここだけの話、そんな事とは知らずに普通に送ったりトランクに入れて持ち込んでも発見されないと没収されないようです。

 麻薬などのように厳しくはないようです。


 お供の福神漬けは持ち込み可能ですしパックご飯も問題ありません。

 即席味噌汁やお茶漬けの素なんかも肉のエキスが使用されていなければ持ち込み可能です。



 かくして、僕は今週の土曜日にメリッサにカレーをご馳走する事になったのである。




 〜 2人目の異国の友 ① 〜



  終わり



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