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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

きる

作者: 白縫

『きる』


作:洒落しゃらく



【必要人数】

2:1:1 計4名



【登場人物】

狩場 健♂:26歳。ある日A署を訪ねてきた謎の男

佐藤 明(不問):33歳。A署の刑事。署内のエースと言われ人望が厚い

桐島 章吾♂:25歳。なにかを”切る”という感覚に異常な執着を持つサイコパス

谷口 倫子♀:27歳。日本一と言われるほどの美貌とスタイル、髪質を持つ女優兼モデル


【役表】

狩場♂:

佐藤(不問):

桐島♂:

倫子♀・後輩:



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



   午前10時、A署署内にて



狩場:......どこだろ


狩場:あの、すみません。指名手配犯についての情報があって、来たんですが...!


狩場:あ、あっちですか。ありがとうございます



   署内、刑事課



佐藤:はぁ...


後輩:文句一つ言わない署内のエースの先輩がため息つくなんて今日は槍でも降るんですか...?


佐藤:人間なんだから溜息ぐらいつくでしょ...


後輩:うっわすごいですねその書類の山


佐藤:いやほんと、気が狂いそうだよ


後輩:全部こないだのヤマの資料ですか


佐藤:そう...現場に出たくて仕方がないよもう!


後輩:私はデスクワークの方が向いてます...


佐藤:前の現場見て吐いてたもんね


後輩:その話はしないでください!前の現場は...うぇ思い出したら吐き気してきた 


佐藤:おいおいそんなんじゃこの仕事やってけないぞ〜?


後輩:ぐうの音も出ません...


佐藤:そのうち慣れるよ、気にすんな!


佐藤:はぁ...さっさとこの資料処理してスマイルリッパーについて調べないと


後輩:スマイルリッパーって確か一回捜査本部が建てられたあの殺人鬼ですか


佐藤:そう、服やアクセサリー類はざんばらに切られて被害者の遺体もその場にバラバラにされ綺麗に並べられて...まぁ、典型的なシリアルキラーだよ。一度建てられた捜査本部もあまりにも手掛かりがなさすぎてすぐに解体されたけどね、今は指名手配されてる


後輩:今となっては奴に関して躍起になって調べてる人はサトウさんぐらいですもんね...なにか私に出来る事があれば言ってくださいよ〜?


佐藤:ふふ、ありがとう


狩場:......あの


佐藤:ん、はい?


狩場:あの、突然申し訳ありません...!スマイルリッパーという指名手配犯について、情報があって来ました


後輩:え!?


佐藤:...!!それは、本当ですか



   取調室にて



佐藤:こちらにお座りください


狩場:はい


佐藤:え〜改めてなんですが、狩場さん。スマイルリッパーについて知ってる事があるというのは間違いないですか?


狩場:はい、間違いありません


佐藤:...驚いたな


狩場:はい?


佐藤:あぁいえ!奴に関わるはじめの事件があってから手掛かりが全くなかったものですから


狩場:あぁ、そうなんですね...


佐藤:えぇ。分析した結果奴に関する今ある情報は、"切るという行為に異常な執着を持つ残虐性の高い快楽殺人犯"これだけなので


狩場:...少しでも捜査の役に立てればなと思います


佐藤:ありがとうございます。狩場さん、取り調べ室に来るのは初めてでしょう?


狩場:え、はい


佐藤:緊張するとは思いますが、あくまで事情聴取です。貴方が何かをした訳ではないんですから、肩の力を抜いてください


狩場:あぁ...ありがとうございます


佐藤:では最初に、改めてお名前とここに来るに至るまでの経緯を教えて下さい


狩場:はい、狩場 健。谷口倫子のマネ...いや、元マネージャーです


佐藤:えっ...谷口倫子って 


狩場:ご存知ですか


佐藤:ご存知もなにも、この知らない人はいない程の大女優で...


狩場:(被せ気味)そして、奴に手をかけられた現状最後の被害者です


佐藤:......ここに来るまでの経緯というのは


狩場:僕が今持ってるこの情報は、事件当時彼女が繋いでいてくれた電話や僕自身も経験した事から得たものでして、事件当時から今までここにきて開示しなかったのは怖かったからなんです


佐藤:怖かった?


狩場:えぇ。やつは、スマイルリッパーは抜かりがない...もし情報を吐露して僕の存在がバレれば...


佐藤:口封じに殺されるんじゃないかと...?


狩場:はい、そう思って...!ただ暫く経って、彼女の無念を、他の被害者の方々の無念を晴らすきっかけになるのならと一歩踏み出しました


佐藤:その勇気でこれ以上の犠牲がなくなるかもしれません...!それに大丈夫、責任を持って狩場さんのプライバシーはお守りします


狩場:ありがとうございます...


佐藤:では、話していただけますか


狩場:はい。もう三か月程前の話になります



   


倫子:こんにちは〜!


桐島:......



   桐島、奥でマネキンの髪を切っている



倫子:あの...!


桐島:あ、失礼致しました!ご予約いただいた谷口倫子様ですね!どうぞどうぞお座りください!


倫子:あ、は〜いありがとうございます


桐島:いやぁまさかまさかですよ。僕が天下の大女優、谷口倫子様の髪を切る事になろうとは...ここは誰にも見つからない穴場のような美容室なので...あ、名乗るのが遅れました!僕は桐島と言います


倫子:桐島さん!よろしくです〜、いえいえ!女優仲間の紹介で...どこよりも上手いって聞きましたよ〜!


桐島:任せてください...チョキンチョキンとご要望通りにお切りしますともえぇえぇ大丈夫です大丈夫ですこちらにおかけください


倫子:は、は〜い...!





狩場:奴は美容室のオーナーをしていて名は桐島というそうで、まぁ本当の名前かは分かりませんが...彼女のいう奴の第一印象は貼り付けたような笑顔の気味悪い男の人だったそうです


佐藤:ほう...美容室のオーナーね...


狩場:見た目は猫背で常に目はカッと開いていて...あ、眼鏡を掛けていたって言ってました


佐藤:なるほど...



   佐藤がメモに書き連ねる



佐藤:初めての見た目の情報だ...あぁちょっと失礼



   取り調べ室前にて



佐藤:聞いてたよね


後輩:はい、しっかり


佐藤:頼める?


後輩:任せてください





佐藤:......いやいや失礼。では、続きを


狩場:えぇ





桐島:......


倫子:......


桐島:五十嵐さんにはとてもよくして頂きました


倫子:え?


桐島:ご存知でしょうに!あのここを谷口様に紹介してくださった五十嵐さんですよ


倫子:え、あ、あぁガラっちゃんか!いやもうべた褒めでしたよ〜?ほんとにおすすめだよって!


桐島:ありがたい話ですねェいやぁありがたい。彼女もとてもとっても良い音をしていた


倫子:音...?


桐島:そうです音ですよ音。なにかが断たれる時のあの音、たまりませんよねェ


倫子:へ、へぇ〜...なにかを切ってる時の音とか意識した事なかったですよ〜!


桐島:それはまたまた勿体ないですね。本当に良い音なのに


倫子:は、はぁ...


桐島:では、とりかからせていただきますね


倫子:あ、はい、お願いします!





狩場:奴は髪をハサミで切った直後にこう言ったそうです


狩場:なんて





桐島:...なんて、良い音なんだ


倫子:へ...?


桐島:こんなに良い音初めてだ...なんだなんだなんだなんだこれは...!


倫子:ひっ...


桐島:この艶と質感が織り成す最高の響き、今までにないですよ前代未聞だ!!


桐島:噂通りだ...


倫子:あの!


桐島:たまらないたまらないたまらないな


倫子:あの、ちょっと!!


桐島:もっともっともっともっともっともっとですもっと切りたい


倫子:やめてください...!!


桐島:なんです?


倫子:もう事前に頼んでいた風になってるので!これ以上はやめてください!!


桐島:なんでですか?まだ僕は味わいきれてないですよ、この感覚を


倫子:......







狩場:そのあとカットが終わってすぐに帰宅して、電話で愚痴をぶちまけてくれました。それで、終わればよかったんですが


佐藤:...何があったんです?


狩場:倫子さんがその美容室に行った一週間後、僕に電話がかかってきまして





狩場:はいもしもし


倫子:怖い


狩場:え?ど、どうしたんですか


倫子:け、今朝、手紙が届いてて、五十嵐さんからで


狩場:あぁ五十嵐さん!手紙とはまた珍しいですね


倫子:珍しいどころじゃない。手紙は時代遅れとすら言ってた子だよ...


狩場:でも間違いなく五十嵐さんだったんでしょ?


倫子:字が


狩場:はい?


倫子:字が、ガラっちゃんの字じゃなかった


狩場:え、なんですかそれ


倫子:あの子SNSも...突然投稿が途絶えてて...


狩場:急すぎるな...一体なにが


倫子:最後の投稿がね...?


倫子:本当に良い音でした。って





   佐藤、資料を確認している



佐藤:...!本当だ、五十嵐 麗子。2ヶ月前に失踪して未だに消息不明


狩場:その件からです。ゆっくりと倫子さんに魔の手が迫ってきました





倫子:......


狩場:えぇと...次は...お、次のロケ倫子さんが楽しみにしてたハンバーグ店のレポですよ!


倫子:......


狩場:大丈夫ですか...?


倫子:え、あぁ大丈夫。ちょっと考え事してただけ


狩場:五十嵐さん、心配ですね


倫子:結構人の悪口も言ってたし正直嫌なやつだったけど


倫子:数少ない友達だったか......ら


倫子:......え、ねぇ


狩場:ん、どうしました?


倫子:よ、こ。車


狩場:...?車がどうかしたんですか?


倫子:あの美容師だった。こっち見てた


狩場:え、いや。そんな事って



   真横の車の窓から満面の笑みで桐島が見つめている



狩場:ひっ...!?


倫子:一体なんなの!?


狩場:大丈夫ですよ、人混みで手出しは出来ないだろうし...!





佐藤:そのロケでは特に何もなく?


狩場:えぇ。その時は奴の乗った車はいつの間にか走り去っていました


佐藤:その車のナンバーは見てないですか...!


狩場:見てないです...見れれば良かったんですが、あの時はそこまで頭が回らず...


佐藤:そうですよね...


狩場:申し訳ない


佐藤:いえいえ!いいんです。あ、少々お待ちを


狩場:はい



   取り調べ室のドアの前



佐藤:......どう?


後輩:しっかり調べておきましたよ〜?


後輩:あの人の言ってる事、本当っぽいですよ...谷口倫子さんのマネージャーの事を調べたんですが、狩場 健は実在していました。今は辞めてます


佐藤:そうか...良かった


後輩:それと、桐島という男の美容室もありました。口コミには気持ち悪い、貼り付けたような笑顔、店主の喋り方がヌメっとして不快...ただ揃いも揃って腕は確かと書いてました


佐藤:一致してるな...距離がそこまで遠くないなら行って桐島って男確かめてきてくれない?


後輩:え〜!


佐藤:今度焼肉奢るから


後輩:行ってきます!


佐藤:助かる





佐藤:お待たせ致しました!


狩場:いえいえ、全然大丈夫です


佐藤:続きを、お願いします


狩場:...魔の手は、ついに倫子さんの眼前までやってきました





倫子:はぁ...打ち上げ呑みすぎた...


倫子:今日は歩いて帰るか



   後方から微かにハサミの音



倫子:えっ(後ろを振り返る)


倫子:今のハサミの音...?





狩場:...はい、もしもし...この時間に電話なんて珍しい


倫子:近くにあいつがいるかも


狩場:は!?あいつって?


倫子:桐島...


狩場:っ!今どこですか!?


倫子:神社の敷地内に隠れてる...怖い...怖いよ


桐島:こんばんは〜!


倫子:ひっ...!?


桐島:倫子さん倫子さんり〜〜んこさん、会いに来ましたよ!逃げないでくださいよ頼みますよお願いしますよ僕はただ切らせてほしいだけなんです!


狩場:倫子さん大丈夫だから、落ち着いて隠れててください。どこの、神社にいるんですか


倫子:だめ...もうまにあわない...


桐島:やっぱり美容師になって良かったです...!だって貴女に出会えた!出会えたんです!なにかを切れる職ならなんでもなれた、でも今はっきりこの選択は間違えてなかったと心から思えます...


桐島:チョキンチョキンチョキンチョキンチョキンチョキンチョキンチョキンさせてください。その綺麗な髪も顔も身体も高いアクセサリーも何もかも、綺麗に切りますから


倫子:狩場...


狩場:倫子さん逃げて...!


桐島:見つけた


倫子:あ..................


狩場:倫子さん...?聞こえますか、倫子さん!!!





狩場:そして後日、倫子さんが遺体で見つかった


狩場:これが事の顛末です


佐藤:なるほど...辛かったでしょうに、本当に話してくれてありがとうございます。狩場さんのおかげで犯人の目星がつきました。次はこちらの仕事です...!もう二度と事件が起こらないように...ん?電話だ


後輩:うっ...ぇ...え...


佐藤:どうしたの、何があった!?


後輩:うぇ...美容室の、奥を探したら、死体が...


後輩:調べてみたら、五十嵐麗子と


後輩:狩場 健のものでした...!


佐藤:...は?


狩場:ここに、スタイルも髪質も良い成績優秀の刑事さんがいると噂で聞いたんです。見つけた時は歓喜した、喜びましたとても喜びました


佐藤:あんたまさか


狩場:佐藤さん



   男は、貼り付けたような笑顔で言い放った



狩場:とっても良い音、しそうですねェ






【END】




















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