奴の記憶がある
「お、お話ってなんでしょうか?貴方の気分を害することをしたなら謝ります」
誰にも媚びず、いつだって自信に満ち溢れたお嬢様……の面影すら感じない少女が僕の前に立っている。
「これがあの白鳥さんなんだよな?」
「正真正銘の白鳥先輩です」
「……」
以前のようなオーダーメイドの制服は着てないが、素の作りがいいので美少女に間違いない。
そうなのだが……あまりに質素で落ち着いてるというか、その風貌とオドオドした態度から白鳥家特有の凄みを感じなかった。
さらにはいつも従えてた後輩たちの姿も見当たらない。
「急に呼び出してすまない。聞きたいのはあなたが生徒会に入らなかった理由だ」
「生徒会!?も、もしやあの人達の手先ですか!これ以上なにをお望みですか?降参でもすれば満足していただけますか!」
先ほどまでと態度が一変し、キッと睨みつけてくるこの表情は間違いなく僕の知る白鳥さんだ。というか普通に怖い。
何気ない質問をしただけなのに、ここまで鬼気迫る態度に変わるとはいったいなにがそうさせるのか。
「エリカ落ち着いてくれ」
「エ、エリカーーー!?」
無意識に、つい口から出てしまったが時すでに遅し。
今回は、これが初対面なのに名前呼び、しかも馴れ馴れしく呼び捨てしてしまった。
「お、落ち着いてます!ええ、落ち着いてますとも!殿方からエリカと呼ばれたくらいで、ど、動揺するわたしくしではございません!」
今にも頭から『ボンッ!』と音が鳴りそうなくらい真っ赤な顔をしている白鳥さん。
「なあ?これって」
「ええ間違いありません。先輩の無自覚ハーレム野郎大作戦にハマってます」
コイツに聞いたのが間違いだった。
過去に戻ってもやっぱりウザイな。
「なっ!?そ、そんなことありません!ましてやエリカだなんて……失礼ですわ!わたしをエリカと呼んで許されるのは尊敬するあのお方だけです!」
「やっぱりそうきましたか。ほら、ハーレム・メモリー先生の出番ですよー」
「人を外国人のように呼ぶな」
「あなた達、何をごちゃごちゃ……あ、あれ?メモリーっていま言いました?言いましたよね?」
なんで二度言ったか分からないが、目を細めジト目で品定めするように見つめてきた。
最初は他人行儀で別人のように思えたけど、少しだけ距離を縮められたか?
そう、距離を―――
「……ってなんで俺の手を握ってるんだよ?」
「ストップ!ストップ!これ以上はわたしが許しません!」
自分から煽ったくせに、小悪魔がすごい勢いで僕と白鳥さんの間に、胸を……もとい、体を割り込ませてきた。自分勝手な奴だ。
まあ、こんな感じでようやく白鳥さんとゆっくり話ができるようになった。
* * *
「なぜメモリー様がわたしに声をかけたか理解できました。しかし、本当にそのようなことが現実に起こりえるのでしょうか?」
「いきなり現れて、すべてを信じろとは言わない。だけどこれが現実なんだ。白鳥グループになにがあったか教えて欲しい」
場所を白鳥家に移して話を聞くことになった。
そこは豪華なお屋敷などではなく煤だらけ。
とても僕の知っている白鳥家とは程遠いものだった。
「わたしが高校へ入学した頃から会社の経営が悪化しました」
「でも、ちょっとやそっとじゃ白鳥グループが揺らぐはずないだろ?」
「ええ……普通であれば。だけど……新規事業の大プロジェクトにことごとく失敗し大きな負債を抱えてしまったのです」
そんなことが現実問題としてあり得るのだろううか?
いや、ここは先入観を捨てて考えるべきだ。
「なにが原因だろう、心当たりは?」
「はい。競合相手の大沢財閥が常にうちの会社よりも先に同じプロジェクトを立ち上げていたそうです」
「そうか……」
なんだこの胸騒ぎは?
過去を鮮明に覚えている僕は、次回のために対策を考えられた。次に起こる未来を予測して。
以前助けてもらい知ってるが、あれほど優秀で統率のとれていた白鳥グループの情報が漏れていたとは思えない。
だとしたら……
大沢財閥に『未来を知っている』もしくは『過去を知っている』人物がいるのかもしれない。
「生徒会に入らなかった理由は?」
「入らなかったわけではありません。入れなかったのです」
「自分の意思ではなく入れなかったと?」
「はい。あの人から反対されました」
唇を強く噛み締め、俯く彼女の顔を見て嫌な予感が頭をよぎる。
「白鳥さんの自由にしたら良かったじゃないか。あの人っていったい誰なんだ?」
「今のわたしはあの人に逆らうことが出来ません。婚約者である【大沢 彗】に……」
もっとも嫌な予感が当たってしまった。
おそらく最大の敵になるであろう人物。
その名を聞いて、僕の怒りは最高潮に達していた。
なぜなら―――
奴こそ小悪魔と僕を階段から落とした張本人なのだから。
いつもありがとうございます!
なかなか定期的に更新できてませんが引き続きよろしくお願いいたします。




