現在進行形?の記憶がない
『メモリー体は大丈夫なの!?あと……騒がれてるスキャンダルは本当なの?出来れば直接聞きたいけど私にそんな資格は……』
うん、テンパってるけどギリギリ間に合ったか?
過去のメッセージでは千花が『別れよう』と告げてきたが、今回僕が送った『今、意識が戻った』にすぐ返信がきた。
返事が来た時点で、浩一の脅しにまだ屈してないと確信する。
体の心配やら、スキャンダルの心配やら、浩一に押されて僕を突き落としたと思い気持ちが入り乱れているのは仕方のないこと。
そんな彼女に送ったメッセージは―――
『体は大丈夫。だけど……ちょっと記憶が……だから側にいて欲しい。とにかく僕を信じて』
この不思議な状況を、メッセージですべて伝えるのは困難だ。
だからこそ無駄に混乱させるよりもこの一言にかけた。
『いろいろ聞きたいけど……わかった』
これで納得してくれたかは正直わからない。
すべての事実をありのまま伝える事も出来たが、今はその時じゃないだろう。
スキャンダルで騒がれてる人間が、都合いいことばかり述べても信用されないからだ。
メッセージを送るのは簡単だし便利だと思う。
だけど大事な話はメッセージだけでは気持ちは伝わらない。
直接会って、顔を見て話し、初めて身の潔白を証明する権利が得られるのだ。
油断はできないが、これで少し時間が稼げた。
前回の失敗は、僕が千花に守られるだけだったこと。
とても対等な関係ではなかった。
僕も千花も大切に想いあっていても、なかなかお互いの本心を伝えることができなかった。
千花は僕を、僕は千花を疑ってしまった。
どんなに大切に想っていても、相手に伝わらなければ意味がない。
僕はそれをアイツに教えられた。
良し悪しはあれど、いつでもストレートに想いをぶつけてきた小悪魔。
彼女は純粋……かは怪しいけど、僕への好意を遠慮なくぶつけてきた。全力でぶつかる勇気を教えられた。
だから……僕は誰にも後悔して欲しくない。
もちろん僕自身も含めて。
次に僕はナツ姉へ連絡を入れた。
内容は千花へ送ったメッセージとまったく同じ、『意識が戻りました』と。
今頃ナツ姉は、スキャンダルの責任を感じ落ち込んでる頃だ。
前回は僕の担当をはずされ結果的に退職問題にまで発展し大変だった。
ナツ姉には今の編集部でこれからも担当をしてもらいたい。
しかし……千花とは違い既読がすぐにつかなかった。
「もしかして、編集長と話をしている真っ最中か?」
だとすれば―――
完全記憶能力で記録した過去の記憶を探っていく。
そして今の時点で本来知るはずのない電話番号を打ち込んだ。
記憶に残っているのであれば、いまいるここは現実か?
不安と疑問を胸に抱きつつ、とある人物へと連絡するのだった。
* * *
「めまいや頭痛が起きた際は、すぐに診察を受けてください」
「はい。お世話になりました」
前回入院した時よりも1日早く退院することができた。
いろいろと対策を練ったものの、やはり不安でいっぱいだったから。
ナツ姉からはその後連絡があり、色々と大変だったものの現在は落ち着いている。
記憶をたどり、小悪魔にも何度か連絡を入れたが繋がらず不安ばかりが大きくなっていた。
病院を出てすぐのこと―――
『プルルルル』
あたりにスマホの着信音が鳴り響く。
スマホが鳴ること自体、普通であるにもかかわらず僕は驚いた。
それはなぜか?
スマホの画面に映し出されたのは、登録すらしていないはずの『小悪魔』と書かれた人物からの電話だったから。
おそるおそる電話をとる。
『……もしもし』
『もしもし、突然電話をかけてごめんなさい!でも……助けてください!』
その声は弱々しいながらも、僕の頭に記憶されている紛れもない小悪魔本人の声だった。
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