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バレンタインイベントの記憶がない

「もう少し甘さを抑えた方がいいかな?」


「湯煎終わったら次は私の番だからね」


「学生に戻ったようで楽しいわ〜。隠し味にお酒たくさん入れちゃお」


「面白くないから1つだけハバネロ入れてみよー」


 バレンタインイベント前日になりキッチンが活気ずく。

 それ自体は問題ない。

 問題ないのだが…なぜうちのマンションのキッチンを使っているのか不思議でならない。


 それに夏姉と小悪魔のふたりの会話はおかしいだろ!?

 そもそも夏姉は生徒じゃないし関係なくねえ?


「あ、メモリー暇ならそこのココアパウダー取ってくれる?」


「……」


 千花に言われて無言で手渡すが、これは誰が誰にあげるチョコなのか本人は気付いているのだろうか?

 まともなのは白鳥さんくらい……


「って、そのウエディングケーキはいったい誰がそんなに食べるの?」


「メモリー様……」


 頬をピンク色に染めて上目遣いでこちらをチラチラと見てくる白鳥さん。

 

 僕は大食いの人じゃないから!?


 結局誰一人としてまともな子はいないらしい。

 そんな光景を楽しそうに見ている母さん。


 小声で「くのいちの血は途絶えさせない」だの「継承がどうの」だの僕の絶対音感の記憶能力で聞き取れる。


 憧れのスローライフとは程遠い。


 父さんはどうやら白鳥氏のところへ避難…出かけている。


「みんな自宅で作ればいいのに?この人数じゃ狭いでしょ」


「何言ってるんですか先輩は。一生懸命作ってるアピールしないでどうするんですか!」


 ……頼むから本人に言わないでくれ。

 

 まあ、僕にだけ作ってくれてるとは限らないけど。


 このままリビングに居ても落ち着かないし、みんなの邪魔になるので仕事場へ引きこもる。

 締め切り間近の執筆もないし何気なくパソコンの電源を入れてみた。


 すると画面に……


「この時代のことを出来るだけ国立図書館で記憶してくれ」


 ほんの数秒の事だったが、コンピュータウイルスに侵されているわけでもない。

 いったい誰のいたずらだろうか……

 

 この出来事が遠いのちに関係するなどこの時の僕には気付くはずもなかった。


 * * *



【バレンタインイベント当日】


「おっしゃー!みんな気合い入れるよ!」


「おー!!」


 女性陣の中でも元々カースト上位、そして生徒会役員の千花が授業終了と同時に掛け声をかける。

 それに応える女性陣だが……


 バレンタインってそんな体育会系イベントだっけ?

 


 深く考えても陰キャの僕にはよくわからないのでひとまず会場の体育館へ向かうことにした。


「あ、今日は女人禁制なので先輩は部外者です」


「使い方も意味も完全に間違えてるぞ」 


 小悪魔は男性立ち入り禁止を言いたいのだと思うが、なにやら必死の表情なので素直に一般生徒と同じフロアで待機する。

 今日は生徒会女子が進行役なのだ。

 放課後に開催される自主参加イベントにも関わらず、体育館の中は季節外れの熱気に包まれている。


「野郎ども!おなごども!覚悟はいいかー?チョコ貰えなかったらボッチだと思え!」


 うぉおおおおお!


 ……そんな煽り方あるかよ。

 

 巨大メロンを揺らしながらノリノリの小悪魔が進行を始める。


 今回はバレンタインイベント。


 チョコを渡す多くは女子から男子が大多数を占める。

 もちろん男子から男子だってオッケーだ。


「悔いのないバレンタインにしよう!」


 こうしてバレンタインイベントが開始された。


「ずっと好きでした。付き合ってください」


「俺なんかでよければ、よろしくお願いします」


 チョコレートを用意した生徒が、壇上から好きな相手の名前を呼び、告白しながらチョコレートを渡していく。

 驚くべきはカップル成立率が異様に高いところだろう。


 理由としてはかなりの生徒がクリスマス会で告白しようとしていたのに、事故で中止になってしまい消化不良に陥っていたからだと思う。


 別にイベント以外のところで告白すればいいのだが……


 そんな感じでイベントは順調に進んでいき、最後に告白した生徒もカップルとなって無事にイベントは終了した。


 ……え?


 ……僕は誰からも貰っていないんだが。


 自惚れではないけど、少なくても千花と小悪魔からチョコレートをもらえると思っていたのでかなり恥ずかしい。

 まあ、いろいろあったし今さら普通の恋愛をしろと言われても難しい。

 ほかの生徒も喜んでくれたしこのイベントは大成功だ。


 女子が企画したこのイベントだけど、片づけくらい手伝うとするか。


「そういえば、みんなはどこに行ったんだ?」


 イベントが終了し生徒の退出を誘導してたしかバックヤードに引っ込んでいたと思うんだが。


 物音ひとつしないバックヤードへと足を運んぶと……


「「「ハッピーバレンタイン!」」」


 パン!パン!パン


 クラッカーの音が鳴り響き、そこには笑顔の千花、小悪魔、白鳥さん、そして夏姉までもがいた。


「夏美さんは生徒じゃないし部外者だから。今から私たちのバレンタインイベントの始まりだよ!」


 こうして僕らの最後の闘い……もとい、最後の恋愛イベントが今始まる




読んでいただきありがとうございます。


続きが気になる方は「ブックマークと☆評価」をしてもらえると嬉しいです。


最近いろいろほかの作品を試してみましたが、やっぱりこの作品に思い入れがあるのでしっかり書いていきます。

新作も関連した……

今後もよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] あれ、前に感想書いたの、半年ほど前でした… 続けて拝見しています。 中ほどの伏線、は将来どうかかわってくるんでしょうね。
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