柔らかい記憶がある
季節は本格的な冬を迎えて、より一層寒さが増してきた。
あの事件でブタこと大沢は、芋づる式に悪事がバレて少年院のお世話になっているようだ。
まさにブタのようにくさい飯を食べている事だろう。
もう一人の人物である浩一は、あの事件で大沢と一緒に警察に連行されて以降は連絡はないし、してもいない。
アイツとは友達でもないので、当たり前だけど。
学校の方は当然だけど退学処分になっている。
しかし大沢と違い少年院には送られず、代わりに僕とナツ姉のガセスキャンダル事件で被害を被った出版社から訴えられて多額の借金を負ったようだ。
僕の小説価値は相当に高かったらしく、一生働いても返せるか分からないような額である。
噂では昼間は土木作業をして働き夜は定時制の学校に通っていたものの、他の生徒と問題を起こして定時制高校からも姿を消したらしい。
……相変わらずダメな奴だ。
一生僕の前に現れる事はきっとないだろう。
「先輩!せっかくのデート中になにひとりでブツブツ言ってるんですか?隣にこんなカワイイ彼女がいるのに失礼ですよ」
「あ、ああ悪い。ちょっと軽く説明……いや昔の事を思い出していたんだよ」
僕の彼女である小悪魔が怒ったようなフリをして頬っぺたを膨らませている。
「わたしとデートしてる時は、わたしだけを見てください!」
大きく胸を張って僕の目を見つめてくる。
相変わらず……違うな、春よりも大きくなっている。
あのデカメロンが、もはやスイカになってるではないか!?
「先輩……そんなに胸ばかり見られたらさすがに恥ずかしいです。それとも……触ってみますか?」
「え?お、お前……なに言って……」
はい、触りたいです。僕も年頃の男の子ですから。
この言葉が言えたらどんなに楽だろう。
そして言ってしまったら、どんなダメ男になってしまうだろう。
「冗談に決まってるじゃないですか」
「いや触りたい。ぜひ触らせてくれ」
「え、ええ?せ、先輩?」
「もう我慢できない!」
……ん?
あれ?
なんだ夢か。
どうやら生徒会室で居眠りをしてしまったらしい。
みんなよりも早く着いてしまい、あまりにも室内が寒かったので暖房をつけていたらポカポカ暖かくて眠ってしまったのだ。
現在は記憶も戻ったことになっているので、昨晩は徹夜で執筆活動に追われていたのも原因のひとつだ。
しかし感触もリアルな夢だったな。
なんていうか、こう柔らかくて、そうそうこんな感じで……
「あ、あん……」
「へっ?」
右手の先に掴んでいたのは……
「白鳥さんごめん!!まさか隣に座ってるとは思っていなくて。じゃなくて胸を揉んで―――」
ガラガラ!
あ、ドアが開いた。
あはは、千花と小悪魔がこっちを睨んでる。
「あ、あのメモリーさま?そろそろ離していただかないと、わたくしお嫁に行けなくなってしまいます……責任とっていただけるのでしたら、続けていただいても構わないのですが……」
「す、すいません!ほんとすいません!」
般若と悪魔が近づいてくることよりも、さりげなく出てきた白鳥さんの言葉に戦慄を覚えたと同時に僕の両ほっぺにビンタが打たれていた。
それもこれもあの夢が原因だ。
夢の中でも小悪魔はやっぱりうざい。
「じゃあ全員集まったね。みんなの活躍もあっておかげさまで勉強会も相談室の方も評判はすごくいい。本当にありがとう。それで今日の相談内容なんだけど―――」
学校相談用SNSに投稿された内容をみんなに説明する。
なんと今回は偶然にも5つの書き込み内容全てが同じだったので、議題にあげたのだ。
『学校でクリスマス会をやって欲しい。そこで大好きな人に告白がしたい』といった内容である。
「うーん、なんでわざわざ他の人がいるクリスマス会で告白するんだろう?僕だったら恥ずかしがり屋だから放課後に一人の時にでも告白して欲しいよ」
「「「「えっ!?」」」」
「え?」
なにかまずいことでも言っただろうか?
女子にとってクリスマスは一大イベントだから、僕の感覚が間違えているのか……
「ごめん!クリスマス会は決定事項にするから日時や会場、あとは催し物を考えよう」
「そ、そうだねー」
「そ、そうですよねー」
「そ、そうですわね」
……みんな噛み過ぎでしょ。
こうしてクリスマス会が開催されることになった。
ポツポツゲリラ投稿するかもしれません。
面白くなかったら新作を読んでくださいw