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ツッコミの記憶がある

 学校に着くとすでに消火活動は終わっており、現場検証が行われているようだった。


「ね、ねえ…あの焼け焦げてる辺りってひょっとして」


「……ああ第3学習室だな」


 ここまで来る間に、もしやとは思っていたけど……


 僕が念入りに調べていた第3学習室を中心に、真っ黒に焼け焦げているようだ。

 現在も現場検証中なので近くに行くことは出来ない。

 念の為にスマホで写真を撮ってはあるけど、証拠写真としての実証が難しくなってしまった。


 大沢が浩一に……正確には()()()()()()()()()()()()()に関する証拠といった方がいいだろう。


 僕の調べでは第3学習室にはカメラが設置されていた。

 勉強をする為の部屋に、ましてや通常使用される事のない第3学習室に防犯用のカメラを設置する必要はない。

 十中八九、設置したのは大沢だろう。

 自分のいない間に侵入者がいないかチェックする為であり、()()()()()()()()()として設置されていた可能性もある。


 隠しカメラは室内の上部に飾られた額縁の裏にセットされており、小さな穴から撮影できるようになっていた。

 ではなぜ僕がそれに気付いたか?


 入学して間もない頃に編集者から連絡があり小説の原稿データが一部破損してしまい、どうしても早急に学校で作業して欲しいと依頼された際に、未発表の作品が外に漏れないよう第3学習室をたった1度だけ利用させてもらった事があるのだ。


 入学当時の第3学習室の記憶と、先日調べた記憶を比べて不自然に変化していた点を間違い探しの要領で確認していたところ、何点か怪しいものを発見していたのだけれど……

 今は全て文字通り灰になってしまった。


 よく見ると消防隊員だけではなく、警察関係者が混じって調査をしている。


 ……やっぱり放火か?


 僕が隠しカメラに気付いた事で、証拠隠滅を企んだのだろう。


「メモリさま、あそこに大沢がいます」


 メモリー……さま?

 白鳥さんから小声で合図を送られたので、聞き間違いかもしれない。


 それよりもやっと大沢とご対面か。


 刑事ドラマなどで放火の犯人は現場に戻るとよく言うが、現実でもそうらしい。

 大沢も指紋や証拠が残ってないかギャラリーに混じって確認しに来たのだろう。


「あの……ブタが見あたらないけど」


「ブタ……ですか?それはブヒーと鳴くあれですか?」


 リアルお嬢様である白鳥さんに、ブヒーとジェスチャーも交えてされると不思議な感覚でかわいい生き物に見えてしまう。


「大沢はそんなイメージだと聞いていたから。千花も顔を見てるようなんだ」


「それは弟の方ですね。あそこにいるのは3年生の()()()です。大沢の者とは、パーティーなどで顔を合わせていたので見間違いはないはずです」


 白鳥グループも大沢財閥も日本でも有数の巨大企業なので、パーティーに招かれているのだろう。

 僕も出版社主催のパーティーによく招待されてるけど出席した事はない。


「先輩!あの人ちょー怪しいです!」


「!?」


 この小悪魔ーーーーー!

 大沢(兄)を指差し大きな声を出してしまった。


 火災現場に目を向けている人は気付かなくても、ギャラリーに注目していれば怪しむの当然だ。

 なぜなら不安な顔や涙を浮かべる野次馬の中で彼はただ一人だけ、薄気味悪い笑みを浮かべていたのだから。


 小悪魔の声に反応してこちらへゆっくりと近づいてくる。

 その容姿は弟のブタとはとても似つかないほどイケメン顔だが、目だけは冷たい印象を受ける。


「白鳥さんこんばんは。ご機嫌いかかですか?」


 薄っぺらい笑顔を張り付けたまま、白鳥さんに声をかけてきた。


「こんばんは。こんな状況で機嫌が良くなるとしたらあなたぐらいだと思いますが」


「これは手厳しい。おっと、そちらにいるのは次期生徒会長さんだね。大沢彗(おおさわけい)と申します。()()()()()()()()()()()()()


「……氷河目守です。よろしくお願いします」


 ……なるほど。

 向こうは僕をハッキリ認識しているわけか。


 弟と面識すらない僕への挨拶が何よりの証拠だ。


「あそこも火事になってしまったし、特進クラス用の部屋にちょうどいい場所が出来たようだね」


「特進クラス……ですか?」


「まだ聞かされていないようだね。いずれ耳に入るだろうし、今日はここで失礼させてもらうよ」


 火事で崩れた場所を満足そうに眺めながら立ち去って行く。

 今回の火事騒動で指示を出しているかもしれない人物は、兄か弟か……それともまったく関係ないのかは分からない。


 ただ兄の方は、危険人物と体が感じている。

 冷酷な雰囲気に寒気がするほどに……

 

 そんな状況だというのに、僕の心がざわついていた。

 新たな敵かもしれない大沢兄弟。


「メモリー大丈夫?わたしちょっと怖い…」


「千花、心配するな。みんなの事は、絶対に僕が守ってみせる。燃えてきた」


「先輩、火事の現場で不謹慎です」


「……」


 グハッ!?

 まさかの小悪魔に思いっきり突っ込まれてしまった。

 

 シャレにならんぞこれは。

 

 

 ……僕は2度と小悪魔に突っ込まれないようにと心に誓った。

読んで頂きありがとうございます。


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