ホームレスの俺がマムシ男から美女を助けたら
いきなりだが、自己紹介しよう。俺の名前は『九重ユウト』。ホームレスだ…。1か月前までは普通の会社員だった。普通?少し違うな…。俺は上司からパワハラを受けていた。上司のミスを俺にいつも押し付けてくることだった。上からしたら「九重のミスを上司がいつもフォローしている」ってことになっているが、本当は逆だ。言ったってどうせ信じやしない。そうこうしている間に俺は解雇されてしまった。さらには住んでいたアパートが火事となり、俺はその1日で仕事と家を失ってしまったのだ…。
ユウト:はぁ…。死にたい…。
俺は家を失ったことで服なんてないし、就職活動なんかできやしない。金もすぐに尽きてしまった。俺なんて…。俺は人生に諦めつつ公園のベンチで寝そべって目を瞑ろうとしていると…。
「ファイヤー!」
ユウト:?
奇妙な掛け声が聞こえて俺は目を開けると…。
女性:………。
「キャーを言わんかい!お前!それでも女か!?女なんかぁぁぁ!?」
意味がわからないし…。大柄な男が女性の前でマムシを披露している…。っていうか夜の公園で何をしてやがるんだ…。女性は冷静だった。いや…あまりのことに声が出ないのだろうか…。
男:キャーを言え!ワシはキャー!をキイロイコエが聞きたいんじゃぁぁぁ!
「キャー」が聞きたい?キイロイコエ?キイロイコエってあの拍手喝采のときのアレか?今は状況違うだろ…。驚かしてるだけだろ…。なんかめんどくさくなってきたな…。俺はベンチから身体を起こし。
ユウト:おい!お前!
男:何じゃ!?誰じゃ!?
俺は大声を出して男に近づいた。男は俺の存在に気づいて戸惑っている。男の顔を俺は知っていた…。男は『大牟田厚』。俺をホームレスへと追いやった元上司だ。大牟田の方は俺がわかっていないようだ。まあ、俺はホームレスとなり身なりはボロボロで汚い外見へと変わってしまっているからな。今更名乗りたくもないから名乗らない。
ユウト:ここは俺の寝床なんだよ。
大牟田:何じゃ!ワシのお楽しみの邪魔するんじゃない!
ユウト:邪魔したのはお前だよ!俺の眠りを妨げた!
大牟田:うるさい!汚い奴め!
大牟田が俺に殴りかかってくる。めんど…。
大牟田:あべし!
俺は大牟田の拳を軽くかわして片足で大牟田の足をかけて転ばせる。
大牟田:くそっ…!女の「キャー」がある限り大牟田厚は死なん!
大牟田はわけわからない捨て台詞を吐いて逃げ去った。
女性:あの。
大牟田の被害に遭った女性は俺に声を掛けた。
女性:助けてくれてありがとう。君は?
女性は俺に笑顔を向ける。眩しい…。女性は綺麗な顔している…。髪は茶髪で少しパーマがかかったロングヘア。眼鏡を掛けてスーツを着ている。まさにキャリアウーマン風だ。俺とは住む世界が違うな…。
女性:コーラー。名前を聞いているんだけど?
何なんだ…。この女は…。ホームレスで不潔な身なりの俺にやけに馴れ馴れしい…。めんど…。
ユウト:俺は九重ユウトっていいます。
女性:やっぱり九重君!?私よ!覚えてない?『水原聖子』!
思い出した…。女性の名前は『水原聖子』。前の会社にいた女性社員だ。彼女は会社のマドンナ。仕事が人生といった感じの人だ。俺は大して相手にしていなかった。大牟田のフォローで手一杯だったからだ。
ユウト:水原さん!?思い出した…。
聖子:九重君。会社クビになったのってさっきの大牟田さんが原因なの?
聖子は言う。会社をクビにされた俺を気にしていたってこと。そして、大牟田にさっきのようなセク●●の被害を受け続けており、今は会社を辞めて起業したことを。
ユウト:やっぱり…水原さんは凄いな…。俺なんて…。
俺は聖子に話した。大牟田のパワハラの連鎖で会社をクビになり、そのうえで家事で家を失いホームレスになってしまったことを…。
聖子:じゃあさ。ウチの会社来る?
ユウト:えっ!?
俺は驚きを隠せなかった。聖子はホームレスの俺を自社に雇いたいという。
聖子:人手が欲しくてね。それにさっきのあなた強かったし。
聖子が言うには起業した後に女性社員を何人か雇ったが、大牟田が嫌がらせを行っており、さっきの俺の強さを見て用心棒みたいなのが欲しいようだ。ちなみに俺は昔空手を習っていた。
ユウト:いいんですか!?俺なんかで…。
聖子:貴方だから欲しいのよ。
俺だから欲しい…。ヤバい!スッキー!聖子は美人だけでなく、社員達を思える優しさもある…。俺は聖子に落ちてしまい、誘いに乗ることにした。それから俺は聖子の会社で警備員をやることとなった。給料もそれなりにもらえ、時間もちゃんとしている。一番驚いたのは…俺は何故か聖子の家で同棲することに…。同棲する理由は…俺は汚い身なりを卒業するために聖子に家に上げてもらったのだが、第一印象はゴミ屋敷だった…。そのうえ、聖子は家事が壊滅的だった。なので俺は聖子の家政婦みたくなってしまったのだった。
聖子:いつもありがとね。ユウト君。
聖子は俺を「九重君」から「ユウト君」と呼ぶようになった。彼女は会社じゃ美人で社員達に優しく、理想の人間的な感じだが、家では家事できない、飲んだくれているといった感じだ。でも俺は得した気分になれた。だって俺しか知らない聖子があるのだから。
ユウト:社長は…。
俺は聖子を「社長」と呼んでいる。本人は今まで通りでいいと言ってくれているのだが、俺の恩人でもあるからそうさせてもらっているのだ。そんなある日…。
聖子は紙を見て真っ青になっていた。その紙はこの後の会議で相手会社の名簿だった。そこには大牟田の名前も書かれていた。
ユウト:大牟田…!
聖子の話では、この会社は前の会社と取引関係になっている。大牟田も来るらしい。聖子はあの公園や前の会社で大牟田からセク●●を受けていたトラウマで震えていたので…。
ユウト:その会議…俺にも出席させてくれませんか?
聖子:ユウト君…。
ユウト:俺はこの会社の…社長のガードマンですから!
聖子:ユウト君。それって…プロポーズ?
ユウト:えっと…。(しまった!つい本音が!)
聖子:(私のガードマン…。スッキー!公園のことといい…ユウト君ってこんなに頼りになるんだ…。)
聖子はいつも傍にいるユウトに落ちてしまっていたのは言うまでもなかった。
会議の時間。前の会社の上役と大牟田がやって来た。
聖子:この度は…。
聖子は大牟田に震えていると…。
ユウト:お久しぶりですね。大牟田さん。
大牟田:お前は九重!?なんでお前が!?
大牟田はユウトの存在に気づいて戸惑う。
ユウト:実は俺、この会社でガードマンやってましてね。それと公園で社長を襲ったことを覚えてませんか?
上役:へっ!?
大牟田:何の事じゃ!?
ユウト:無理もないですか。だってあのときの俺はホームレスでしたし。
大牟田:何!?まさか…あのときの!?
ユウト:ええ。俺は貴方のフォローばかりしていたおかげでクビになり、さらに住んでいた家が火事となって仕事と住む場所を一緒に失いましたので。今は社長に拾ってもらったので充実した生活を送れてはいますけど。
ユウトは上役の前で大牟田の悪事を堂々と言ってやった。
上役:大牟田君!どういうことだね!?
ユウト:これから会議ですよね?ご気分を害されてはならないので大牟田さんとはしっかり話をしてきますよ!失礼いたしました。
ユウトは大牟田を裏へと連れ出した。聖子と上役だけで会議が行われ、聖子はユウトの行動に打たれて大牟田のセク●●を打ち明け、取引を中止にしてやったとか。
会社裏。大牟田はユウトにボコされ、縄で縛られていた。
ユウト:おい!前の会社じゃ俺はお前の下だったから我慢してやってきたけどな!聞けばお前、会社の女の子達からキイロイコエ聞きたさに悪さしているらしいじゃねぇか!ああん!
大牟田:貴様…!ワシが世話してやった恩を忘れたのか!?
ユウト:ああ!お前には大変世話になりましたよ!だからそのお礼に忠告しておいてやる!次の就職はイカツイ男達の職場にしておくんだな!犯罪者になりたくなければな!
大牟田:イカツイ男…。イヤじゃ!イヤじゃぁぁぁ!キャー!イカツイ男のキャーなぞ聞きたくないんじゃぁぁぁ!
それから聖子との取引を切られた会社は怒り心頭。ユウトと聖子のことがSNSにもあがってそれに感化されたという社員達も大牟田を訴え、大牟田はクビとなった。2人は女性社員達から「キャー!九重さんかっこいい!」「キャー!さすが社長!」と大牟田の願望であるキイロイコエをかっさらってしまったのだとか。
ある日の昼休み。
社員:九重さん。お昼一緒に…。
大牟田の一件からユウトは女性社員達にモテモテに。そこへ。
聖子:ユウト君。ちょっと。
ユウトは聖子に社長室へと呼ばれた。その理由は…。
ユウト:あの…社長?
聖子:ここで社長は駄目…。恋人の名前くらいちゃんと言いなさいよね。
ユウト:悪い。聖子。
あの後、ユウトと聖子は付き合うこととなった。聖子の生活は相変わらず自堕落でユウトはそれのフォローをいつもする。大牟田のフォローはイヤだった。でも聖子のフォローはイヤじゃなかった。
聖子:ユウト君。これからは会社だけじゃなくて私のガードマンとしても頑張ってね。
ユウト:ああ。聖子のガードマンとしてキッチリ務めさせてもらいます!
やがてユウトと聖子は結婚することとなり、子供も出来ていつまでも幸せな家庭を築くのであった。
~ Fin 完 ~
GREEのコミュニティ『あなたは携帯小説を書きますか?』にも連載しています。